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サトシ:10月26日

金沢21世紀美術館で始まった展覧会のため、市外から来た人が滞在するために美術館が借りている一軒家に滞在している。ここには寮母さん的立ち位置の人(仮にAさんとしておく)も長く住んでいるのだけど、どうも僕がここに泊まり始めてからゴキブリが多数出没している。一週間で三匹のペース。しかも全てなかなかみられない巨大サイズで、特に最後にやっつけたやつはほとんど爬虫類と見紛うような代物だった。僕もやっつけるのにためらいを感じた。僕がくる前は1年に1匹でるかでないか、というペースだったのに僕が来た途端にこの有様なのでなんだか、虫にも人にも申し訳ない。「ゴキブリも連れてきた」「先祖は虫だったんじゃないか」と言われても仕方がない(しかし僕に限らず、人がくるとなぜか彼らはそれを嗅ぎつけて出没するらしい)。Aさんは虫がものすごく苦手で、彼らが出没するたびに僕がやっつけるというのを何度も繰り返している(そしてそのお礼として、おいしいご飯やお菓子を作ってくれる。Aさんは天才的な料理上手なのである。人生でこれほど料理が得意な人には出会ったことがない)。

先日も展覧会の設営を一緒にやってくれている人たちと数人で飲んでいたところAさんから「部屋にゴキブリ出現!明日のタイカレーと引き換えに撃退よろしくお願いします〜」というラインが入った。家に帰るとAさんが部屋の襖を開け、「部屋のどこかにいるはずだ」と言う。僕たちが買ってきたゴキジェットをとりあえずAさんに渡そうとしたその時、終電を逃してこの家に泊まることになったので一緒に帰ってきた展覧会設営チームの人(Bさんとする)が突然

「あ!」

と声をあげた。明らかに何かを見つけた声色だった。

「え?なに?いた?どこどこ?」

とAさんが言う。するとBさんは

「驚かないでください」

と言った。ものすごく近くにいるのか?どこに?僕はAさんの部屋の襖の敷居に立っていたのだけど、怖くなってゆっくりと後退りした。他の3人も全員後退りしていた。Bさんはみんながパニックにならないよう、「そいつがいる方」を見ないようにしていたのだけど、この状況でいるとしたら「上」しかない。僕はゆっくりと上を見上げた。すると襖の鴨居の溝のところに、ちょっと黒いものがはみ出しているのが見えた。

あとはゴキジェットを噴射して一件落着だったのだけど、「部屋のどこかにいるはずだ」という会話をしていた僕たちのすぐ頭上に潜んでいたなんて、スパイか何かなのか?ミッションインポッシブルのトムクルーズを思わずにはいられない。

そんな日々を過ごしております。わたしは元気です。

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