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【怪談】マンホール

完全に見逃しちゃったんですけど、なんかこの前「世にも」やってたらしいですね。直前に「西野ン会議」がバージョンアップしたらしい、という情報だけは入ってたんですけど、全くもって忘れてました。幸い、うちのレコーダーはほぼ全録してくれているので、後で見返せるんですけど。

最近そんなに観なくなったんですよね。正直、「おもしろくなさそう」っていうのが本音で。リメイク版の「ズンドコベロンチョ」とか「ハイヌーン」とか、結構おもしろいのはたまにあるし、話だけ聞いたことがある「ファナモ」とかも、観てはないけどおもしろそうだな〜、と思うわけですよ。でもいつからでしょうね。「創作だ」ってわかってからなのかもしれないんですけど、全然「怖いな〜」と純粋に思えなくなっちゃったんですよ。

でも、子供の頃に体験した怖い話とかって、今でも結構覚えてたりするし、「怖い」っていうよりは、「あれってなんだったんだろうな」ってよく思ったりしますよ。

私って幼稚園に通ってる頃から水泳習ってて、中学入った直後ぐらいまでやめないでずっと続けてたんですよ。あそこまで続いた習いごとって他になかったんじゃないかな。泳ぎはクロールからバタフライまでひと通りできるにはできたんですけど、まあ、スピードは最後の最後までめちゃくちゃ遅かったんですけどね。

まあそれはいいんです。小学生から通ってた水泳教室は割と近かったんで自転車で行ってたんですけど、小学生の高学年になるくらいまでは、冬の夜道とか暗くて危ないし、あと水泳教室でできた友達とそのお母さんも来てるから、私の母親自身も話したかったんでしょうね、「帰りは迎えにいく」って言って毎回来てくれてたんです。屋内のベンチみたいなところに座って、友達のお母さんが持って来てくれた雪の宿とかぱりんことか食って、友達と一緒にカセキホリダーとかマリオとかやったりして。

で、さすがに6時半くらいになると、だいぶ暗くなっちゃうので帰ろうムードになるんです。もっとゲームしてたいし、友達とも遊んでたいですけど、向こうも色々予定あるだろうし、ご飯作ってないかもしれないし、まあ仕方ないですよね。

そこからなんですけど、他の習いごとでも、近いからという理由でいつも通る道があって、いつもその道を通って帰ってたんです。というのも、その道が墓地の真横なんですよね。それも、ボロボロのトタンだけで仕切られてるんで、墓地自体はそんなに大きくはないんですけど、自転車で走ってる間、左側を見るとトタンの穴が空いてるところから中が見えちゃうんですよ。暗いから、本当にもう不気味で。行く時は明るいからなんともないんですけど、夜になると本当に怖いんですよね。いくらひいおじいちゃんのお墓、中学生の時に亡くなったおばあちゃんも将来的に入ることになったお墓がある墓地だ、といっても、墓地なのに変わりはないし、怖いのは怖いし。

でも、別に墓地の中では特に変なことは起きなかったんです。ひいおじいちゃんは私が生まれる前に亡くなったので、見たこともないんですけど、どこからか護ってくれてたんでしょうね。

問題は、墓地の外なんです。ちょうど水泳教室がある方向から家に向かって行って、車もあまり通らない道を一本渡ると墓地とその入り口があって、右手の方に道があるんです。その入り口と横の道の間、墓地の外周の壁の外側部分に、お地蔵さんが数体ざっと並んでる小屋というか、祠みたいな、屋根のついてる小さめの建物みたいなのがあるんです。たまにおばあさんが線香あげてたりするし、お地蔵さんというくらいだからその土地を守ってくれてるんですけど、当時はそんなことも知らないし、ただただ怖かったんですよ。それも夜になるとろうそくの火で顔が下から照らされて、怪談を話すときに懐中電灯でよくやるみたいなやつを、ナチュラルにやられてたんです。まあ、とにかく子供心にすごく怖かったわけですよ。

で、これもわかってくれる人多いと思うんですけど、マンホールとか、側溝とかって、周りのタイルがゆるいこととかがあって、自転車で上を通るとちょっとカタカタってなって楽しいから、ついつい上を通っちゃう、みたいなのがあると思うんですけど、ちょうどそのお地蔵さんの前にもマンホールがあって、怖いんですけど、タイルがカタカタ鳴るのが楽しいから、そこだけは通っちゃうんですよね。別に誰に迷惑かけてるわけでもないし、これくらいは許してほしいです。って、みんなもやってたんじゃないんですか?ええ?私だけかなあ。

まあそれはいいんですけど、その日もいつも通り母親が迎えに来てくれて、いつも通りお地蔵さんの前を通って帰ってたんです。

で、今日もカタンカタンってなるとこ通ろう、と思ってついて行ってたら、墓地の前の道を渡ろうとしたとき、マンホールと墓地の横の道の間のところで急に母親が止まったんです。なんか忘れ物したのかな、それか買い物するためにどっか寄り道してから帰るのかな、とか色々思ったんですけど、私が「どうしたん?」と訊いたら、どっちも違ってたんです。

「今、マンホールから声せえへんかった?」

私は「えっ」とつい声を出してしまいました。後からついていってたのでマンホールの手前までも来てなかったし、よく考えたら聞こえるはずない距離なんですよね。もちろん、聞こえなかったですし。

母親によると「キャー」という声が聞こえたような気がしたから慌てて止まったけど、声がこもっていたからマンホールの中から叫んでいる声だと思った、とのことでした。結局、その場では「水道工事をしている人が、作業中に発した声を聞き誤った」という結論を出して、とりあえず帰ったんです。

帰ったら、もう暗いし、多分冬だったからかなり冷え込んでたと思います。そうそう、シチューでした。その頃から、両親ともシチューでご飯を食べられないからご飯を食べる用のふりかけを用意して、私だけがふりかけを使わずシチューでご飯を食べてました。懐かしい、だんだん思い出して来ました。

父親は残業がちだったのでその頃平日に一緒に食べることは少なく、帰ったら先に母親と2人でご飯を食べていることがほとんどだったんです。たまに、私たちも帰るのが遅くなっちゃった時は待ったりもしたんですけど、その日も2人で食べてましたね。

まあそれで普通にシチュー食ってたら、突然母親があっ、って声をあげたんですね。なんか買い物で買い忘れたものでも思い出したのかな、と思ったので、その時はびっくりしつつも「どしたん?」って尋ねたんですね。そしたら、目玉ひん剥いてすごく怖い顔をしながら、続きを話してくれたんです。

「さっきのマンホールで聞こえた声、そういえば女の人の声やったなって思い出してん」

急に言われたので、流石に私もぎょっとはしましたね。霊的な何かの声だったのか、と思うとやっぱり怖かったですし。

でも、その場では、作業員の中にも女の人がいるかもしれない、という結論に至って、女性と男性の仕事の差とかあっちゃダメだよね、とかそういう話の方向になってしまったんです。

今思うとあれ、母親が私を怖がらせようとしてわざと後で付け足したのかな〜、とか思ったんですよね。まあ、今訊いたとしても多分覚えてないと思うんで、どうしようもないですけどね。


それで、高校生になってからかな。しばらくはそんなことがあったという話とかももうすっかり忘れてたし、中学生になってどんどん習い事やめて行って習い事なくなっちゃったんで、そっちの道も全然通ったりしなかったんです。で、買い物かなんかでたまたま墓地の前の道を通る時があって、その時に「あ、そういえばここであんなことあったよな」とか、やっと思い出したんです。で、まあマンホールのところがとにかく気になるので見に行ってみたんです。

歩道の部分がレンガみたいなタイルになってて、公園が近いからか、墓地の前だからかはわかんないんですけど、当時からめちゃくちゃ砂かぶってて、タイル自体は綺麗なんですけど、砂のせいで古びて見えちゃうんですよね。まあそれはいいんですけど、とりあえずマンホールを見ようと思って、お地蔵さんの前に行って。

で、そこまで行って気づいたんですよね。マンホール、無いんですよ。「無くなった」とか「撤去した」とかなら、なんか継ぎ目とか、全体的にタイルが貼り替えられてるとかあると思うんですけど、タイルも当時のままだし、継ぎ目みたいのも見当たらないんですよ。砂も満遍なくかぶってるし。私としたら納得全然いかないんで、周りにマンホールとか無いか探したんですけど、墓地の入り口の方まで行ってやっと側溝があるくらいで、それ以外何にも無いんです。

あれは夢だったのかな、とか思うんですけど、なかなかここまで鮮明に覚えてる夢も少ないし、多分夢だったら夢として記憶してると思うんですよ。だから、なんとかタイルが貼り替えられたということにして、結局腑に落ちないままで家帰ったんですけどね。未だにあれってなんだったんだろうな、って思ったりしますね。

あとやっぱりこういう実話って、オチがない話って多いなって思ったりはしますよね。



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