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直也
2020年2月4日 06:48
身近な美から離れた。泡立つ時、浴衣を着ている彼女がいる。見ているだけでここには届かない。音と共に伸び上がった暖色火が何かを捕らえるみたいに広がり確実に捕らえられなかった風の哀愁を漂わせ消える。「花火ってなんだか射精みたい」と呟いたのは、昨日射精したからだろう。「私のオーガズムもあんな感じだよ」横顔に照らされた光を精液をかけられた風に見る。「花は咲いてる時間ずっとあんな気持ち良さなのかな」
2020年2月24日 14:11
ピアノな横断歩道を私と似た形をした動物が行き交い、斑点状の月月を目にして見下ろしてくる塔の群れ群れに囲まれたこの空間を切実な靴音で満たしている。電車が私を置いて過ぎ去る、規則正しい音が背後から帯状に広がる。信号を待っている車のエンジン音が物と物の間を縫い進み、糸みたいに絡まり徒労と受精する。通り過ぎる会話から意味が儚くなりいずれ音になる。私の感覚の奥で幾つも渦巻いたり波打ったりしている不安が重なり