世界一可哀想(らしい)私の妹は本当にすごい
私には2つ下の弟と、6つ下の妹がいる。
今の私というのは、なかなか精神的に苦しい状況が続いている。だから他愛のない会話に飢えていて、毎日のように母に電話をかけてしまう。
とはいえ、常日頃から報告できるような楽しいことがあるわけでもない。「早く仕事を辞めたい」だの、いつもの弱音をこぼして母を困らせていたときに、通話の後ろで、6つ下の妹のやたら明るい声が響いてきた。
「あー、私って世界で一番可哀想!」
(うるさいので)理由を聞けば、なんでも職場のレジ作業で1000円の差分を出してしまったらしい。
妹は、アパレルで販売員をしている。どうやら今日はお釣りを返し忘れてしまったらしく、レジ締め作業をした職場の人がそれを指摘。先輩に「また店の余剰金が増えたね」と言われたそうだ。
何がすごいって、まとめてしまえば上の2行で終わる内容を、ひたすら明るく(何度も同じことを)話し続けることである。
「あー、私って世界一可哀想」「わたし明日からニートになるね」
落ち込んでいるとは思えない元気さだ。
しまいに母は「可哀想なのは、(1000円受け取り損ねた)お客さんでしょうが!」と妹に怒り始めたが
「そんなことないもん!だってお客さんは1000円失くしただけじゃん!私はこのあとずっと、『あの子はミスの多い子だなぁ』って職場の人に思われ続けるんだよ?私の方が可哀想じゃん!」
と開き直っていた。
それから、話題が妹の職場の話に移っていった。
店長が検品しそこねて先輩に怒られてたとか、過去あった最大のレジミスはわたし(妹)がやったんじゃないと思うとか、レジの余剰金で1000円もするお店の備品を買ったとか。
(カレンダーで1000円もするとかやばくない?超高級品じゃない?余剰金で高級カレンダー買っちゃった。やっぱ1000円もするから超見やすいわー)
マシンガンのように話し続ける妹の話を聞き続けていたら、いつの間にか1時間以上経っていて、私の気持ちもだいぶ明るくなっていた。
私はその妹の態度に、感銘を受けてしまった。
まず、私は自分の失敗をあそこまで明るく(大声で)話せない。いくら親だとはいえ、自分の失敗を知られることは恥ずかしい。
そもそも過失でいったら100%自分が悪いので、開き直ることもできない。あとは、そもそも同じ話を何度も(無理やり会話に)差し込むこともできない。
もし私が同じ話を母にするとしたら、こんな話し方になるだろう。
妹の場合はこうだ。
友達になりたいのは、明らかに後者だろう。前者はくよくよ思い悩んでいるだけで何も問題解決せず、ただ母を巻き込んで憂鬱にさせるだけだ。
後者は、文面に起こすと自分勝手に聞こえるが、みんな思い思いのことを話しているし、楽しく会話できている。
書き起こしているときも、昨日の会話を思い出して、少し楽しい気持ちになってきた。私より遥かに有意義な時間だろう。
妹は本当にすごい。
どうしたら、妹のように底抜けに明るく振る舞えるのだろう。というか、なぜ姉妹なのに、ここまで性格が違うんだろう。
電話を切って、「私って世界一可哀想」と妹の真似をしてみた。恥ずかしくってうまく声がでなかった。
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