【映画】蜜蜂と遠雷 感想
監督・脚本・編集:石川慶さん
原作未読です。
松岡茉優さん演じる栄伝亜夜という元天才ピアニストが、再起をかけて出場した国際コンクールで出会ったピアニスト達に刺激を受け、自分の音楽を取り戻していく。というあらすじ。
亜夜は母親の死後に出たコンクールから逃げた過去があり、それ以来表舞台から遠ざかっていたが、映画を見た印象では恐らく過去の失敗を乗り越えるところに重きは置いていないんだと思う。
音楽の楽しさを思い出すことができたって感じに思えた。
最後の亜夜の演奏は迫力。
小さい頃の母親と連弾している回想シーンが本当に美しい。自然の音を受けとめ、身体に共鳴した音をピアノから生み出していく。
「世界が鳴っている」と小さい彼女が言っていた言葉は、コンクールに出場していたもう一人の天才である風間塵も、鳴り響く遠雷を見ながら口にしていた。
クラシックではないのだけど、YUKIの『歓びの種』の一節を思い出した。
この作品における天才って、世界から降り注がれる情報を誰よりも多くキャッチできる能力がある人のことかも、と思わせる。
亜夜と塵のふたり。ふたりの天才は互いを響かせる。
二人の月夜の連弾のシーン。予選での明石の演奏を聞き、湧きあがった衝動のままにピアノを求めて、感動を分かち合うように音を鳴らす。
明石の曲が原動力になってるところがすごく良い。彼の曲は春と修羅の一節を妻と子供が歌ったメロディをもとに作られている。
天から降り注ぐ歓びを受け止められるのが天才なら、人間の口から天に向かって放つ言葉は祈りだろう。
舞い上がった祈りもまた天才のもとへ降りてくる。
賢治の詩をモチーフにした曲なのが本当にぴったりだった。
ここからは余談。
タイトルがちょっと薄いような気がする…遠雷はあったけど、蜜蜂は?これは原作を読んだほうがいいのかな。
音の出ない鍵盤を使って塵が練習するシーンがあるのだけど、塵って音が出なきゃテンションあがんなくてピアノ弾かないタイプに見えるんだけどどーなんだ。
明石がスゲー人間できててびっくりしたんだけど、他三人の才能への嫉妬で悶絶する場面とかあってもいいのでは…。それができるの明石しかいないし、もったいないなあとか思ってしまった。
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