主がいなくなる家

2週間くらい前、愛猫を撫でていたら背中の皮膚がぱっくり割れていて、中の肉が見えてしまう状態になっていた。すぐに病院に行ったら、幸いにも菌の感染はまだなかった。ただ、少しでも感染してしまうと結構大変なことになるらしく、毎日患部を水で洗い、薬を塗っていた。この頃から足もおぼつかなくなり、体重も激減し、寝たままおしっこをしてしまったりしていた。

寂しいけどそろそろお別れの時が近づいている覚悟をしていた。先日、奥さんが仕事に行き、子供達が学校に行った後、愛猫の腫瘍を洗おうと準備をしていた時、猫が痙攣をし始めた。その日は猫を抱いて、チューブで水をやって、リビングで仕事をした。時々発作のように痙攣が起き、その度に猫の名前を呼び、抱き抱えた。みんなが帰ってくるまで、なんとか持って欲しいなと思っていた。

子供たちが帰ってきて、妻も帰ってきた。みんなで猫に声をかけて、必死に反応してくれていた。誰かの声が聞こえたら、必死に何かを語りかけるように口元が動く。今日はみんなで寝よう。寝室に猫を連れて行き、子供達は先にすやすやと眠った。妻と2人で様子を見ながら過ごした。それから2時間くらい、2人とも寝落ちしてしまって目が覚めて猫を見ると、安らかに息を引き取っていた。まだ体は温かく、きっと静まり返った寝室で安心したんだろうなと思った。安らかな最期だった。

今まで自分はほとんど自宅で仕事をしていて「1人で仕事するの楽勝」って思っていたけど、それは愛猫が家にいてくれたからなんだなと静まり返った家で1人思った。お腹が減るとニャーニャー言って仕事部屋にやってくる。ご飯をあげる。トイレの掃除をする。ソファーで寝てるとお腹に乗ってくる。現場から帰ると玄関の前まで来てくれる。そんな日常がもうないのかと思うと、心底辛すぎる。近くにいてくれたその長すぎる月日を、これからは乗り越えていかないといけない。たくさんのことを与えてくれたから、感謝の気持ちでいっぱいだ。

チボー



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