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【読書日記】竹中半兵衛と黒田官兵衛

嶋津義忠/PHP文庫

<あらすじ>

タイトル通り。
半兵衛が稲葉山城を占拠するところから、官兵衛が没するまで。

<勉強になったところ>

キャラクターの造形がとてもうまい。
特に官兵衛の、聡くて色んなことに気づくんだけどそれは黙っておいた方がいいようなことまで言っちゃう癖。
黒田官兵衛が頭がいいキャラなのはすでに共通観念的になっている。
その共通観念の上にもう一つ乗っけてきてるところがうまいと思った。
半兵衛は頭がいいキャラの上に、「なんでもわかるしできるから何にも執着しない」のが乗っかってる。

二人の主人公が周囲の人間を馬鹿にしないのもよかった。
秀吉ならこれくらいわかっているだろう、家康は織り込み済みでいるだろう、と周りのキャラを下げない。
時代小説では大切なことかもしれない。
秀吉好きが読むかもしれないしね。

地味に母里太兵衛もいいキャラクターだった。
周囲にいるキャラクターもみんないい人。
悪役の存在しない小説だった。
なんだか予定調和すぎる気はしたけど、正義の反対は正義なわけだから、それでいいのかもしれない。

描写がきれい。
シンプルなんだけど、するっと伝わる上に想像がつく。
修飾語の選択がとてもいいんだと思う。
幅広の磨かれた廊下、公家風の品のある面長の顔……等々。
ただ、これは静止している情景の描写であって、戦闘シーンになるとあんまり勢いは感じられない。
あえてそう書いているのか、不得手なのかはわからないけども。

<反面教師>

時系列の行き来って、読んでる側として本当につらいのがよくわかった。
急に「二年前のことだ」とか入ってこられると、浸ってた気持ちが取り上げられる気がする。
私はなるべくやめようと思った。

PHPに限らず文庫本一冊で戦国武将一人分の小説って、どうして後を絶たないんだろう?
文庫一冊で人間の一生が収まるわけはない。
どうしてもかいつまんで書くことになるし、大きな合戦は避けられないとなると、誰が書いても似たり寄ったりになってしまう。
駆け足だし、薄っぺらい印象になる。
他の作家との差異化のために、楓や幻蔵みたいな架空のオリジナルキャラクターを作ったのかな?
キャラクターの造形も差異化の一環かもしれない。
もっとじっくり紙面を割いて半生くらいの長さで書いてほしいけど、そういうのは売れないんだろうか。
この手の小説って書かれては消え、また誰かが書いては消えしていて、同じものがくり返し出たり消えたりして、なんというか、官能小説と同じくくりに見える。

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