【小説】東京ヒートウォール 第5話:主役、脇役
(第1話はこちら)
憑き物が落ちたように笑みを浮かべる一真につられ、夕子も街を眺める。ヒートウォールの方角から吹く高温の空気が、肌をなでていく。
この距離でこのくらいなのだから、あそこにいる人たちはどれほどの熱波を浴びて――
いや、と夕子は想像を止めた。
灼熱の気流にのまれた人たちがどうなったかを、知っていたから。
「当時の東京も、ヒートアイランド現象に相当参っていたんだ。なんとかしろって声も、担当者を相当苦しめた」
「だったらなんで、わざわざビルを増やして悪化させるよ