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【小説】太陽のヴェーダ

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どう見ても異常があるのに「異常なし」しか言わない医者たちに失望した美咲。悪化した美咲に手を差し伸べたのは、こうさか医院の若き院長、高坂雪洋。雪洋の提案は、一緒に暮らすことだった。…
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#指輪

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(36:最終回)

(第1話/あらすじ) 花火の打ち上げはとうに始まっている。 華やかな音と彩りに急かされながら丘を登り、頂上が見えたところで美咲は足を止めた。 万が一雪洋が誰かと来ていたら、そっと帰ろうと思っていた。 花火の明るさを頼りに目を凝らす。 だがそこには「誰か」のみならず、人影はひとつもなかった。 「いない……か、やっぱ……。そりゃ、そうだよ……ね……」 雪洋と約束したわけではない。 あちらに行けと言われたくらいなのだから、ここに雪洋がいる保証など、はなからなかった。 来る

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(35)

(第1話/あらすじ)   ●螺旋の指輪 約束の日。 美咲は出勤日ではないが、沢村は仕事をしている。花火大会は十九時からの開催。図書館を閉館してから落ち合う手筈だ。 「俺のことは待たせていいから、ゆっくりおいで」と言われていたが、美咲は早めに身支度を整え、家を出た。 沢村が指定した場所には植え込みがたくさんあり、ふちに腰かけて待つことができた。待っている間も体に負担がかからないようにと、気を利かせてくれたに違いない。 「本当に沢村さんとなら、上手くやっていける……」

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(30)

(第1話/あらすじ) 高坂総合病院、皮膚科診察室。 「さて、問診をしようか」 瀬名がメガネを指で押し上げた。 レンズ越しに美咲を眺める様は、間違いなく楽しんでいる。 「あの付き添いの男性は?」 「……職場の方です」 「一昨日、昼に喫茶店で一緒だった人?」 「……そうですけど」 「プライベートの付き合いは?」 「瀬名先生、それって問診ですか?」 「大事な問診だけど?」 はあ、そうですか、とあきらめる。 「……付き合ってほしいと言われました」 「いつ?」 「……さっき」

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(14)

(第1話/あらすじ) 「ばかですね。本当ばかですね」 これで何回目だろう。 運転席の雪洋はまだ不機嫌そうな顔をしている。 「そうだ美咲、杖は持ってきましたか?」 先日、雪洋が杖をくれた。 折り畳み式の杖で、一度だけ試しに使ってみたら、これが思いの外良かった。 とても楽に歩ける。でも―― 「持ってくるわけないじゃないですか」 「どうして?」 「杖だけは嫌です!」 美咲にとって杖というのは老人の象徴であり、二十七歳の自分にはどうしても抵抗があり、絶対に人前では使いたくな

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(13)

(第1話/あらすじ)   ●過去の指輪 肩まで短くなった髪の毛を揺らしながら、美咲は部屋の片付けをしていた。 髪は雪洋が切ってくれた。 予想はしていたが、手先の器用な雪洋は髪を切らせても上手かった。 鏡に自分の顔が映ると、まじまじと見つめて顔がほころんでしまう。自分で言うのも何だが、若々しくなって、かわいくなった――と思う。 「先生さすがだなあ……」 髪に触れては笑みがこぼれる。 気持ちが明るくなると、体も調子がいい。 今日は部屋の片付けをする。 この体が過ごしや