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歩行能力・代謝の低下とサルコペニア

高齢者におけるサルコペニアは日常生活活動の能力低下も引き起こす。なかでも歩行能力の低下はその代表例としてよく知られている。

高齢者における歩行動作の特徴としては「ストライド(歩幅)が小さい」、「歩行速度が遅い」、「歩行がすり足の傾向がある」などがあげられ、これらは下肢の筋量や筋力の低下によるところが大きい。

また歩行がすり足になることで路面の起伏に対してつまずきやすくなり、結果的に転倒のリスクが増える。さらに外乱刺激に対する姿勢制御能力の減退や加齢に伴う骨密度の低下が併発し、転倒に伴う骨折のリスクを大きく増加させる。骨折は身体活動量を低下させ、さらにサルコペニアを進行させるといった負のスパイラルが生じる。

サルコペニアは代謝面にも負の影響をもたらす。骨格筋は体内での糖(グルコース)の取り込みの約80%〜90%程度を占める重要な組織である。そのため、筋量の低下はインスリン抵抗性や糖尿病に代表される耐糖能異常のリスクを増加させる。サルコペニア予防は糖尿病などの代謝異常の予防の観点からも重要な意味を持つ。

筋力や筋パワー以外の体力要因も加齢に伴い大きく低下する。一般的に全身持久力の指標としては最大酸素摂取量が有名であり、最大酸素摂取量は生活習慣に関連した各種疾患の発症率や死亡率と関連する(最大酸素摂取量が高いと各種疾患の発症リスクや総死亡率が低下する)。加齢に伴う最大酸素摂取量の低下の程度は個々の体力レベルや身体活動量に応じて異なるが、概ね10年間で約10%低下すると考えられている。

閉眼片脚立ちなどの調整力に関わる体力要素全般も加齢と共に低下する。調整力の指標として用いられる閉眼片脚立ちは30歳を境に急激に低下し、20歳時を100とした相対値で表すと70歳時における値は20%を下回る。これは握力や脚の筋力の低下と比較しても大きい。

しかし筋力や全身持久力と同様に継続的なトレーニングにより調整力は改善する。


医療従事者向けオンラインコミュニティ「KIUZKI」共同代表 『将来、「自分事」として働いていけるようにするために、現状の課題を知り、学び、互いに高め合っていく仲間を募集中』 https://xpert.link/community/1412