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2022.03.21〜モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語〜

「イタリアの山奥に、本の行商が主産業の村があるらしい」

本が好きな人なら、そんな言葉を聞いたらわくわくしちゃうはずだ。筆者の内田さんもそう。

旅の始まりはヴェネツィアの古本屋。
「そんな村があるの?」という筆者の疑問から始まり、石で守られた村モンテレッジォやその周辺、そして関連書籍の海を旅しながら、何をきっかけにその村の人達が本を担ぎ、どんな理由で市民生活のなくてはならない存在となっていったのか、その謎が少しずつ少しずつ解き明かされていく。

今現在も尚、本は「人から人へと受け継がれていく」という性質を備えている。書店も図書館も、数字だけで棚が作られているわけではない。「いまこそ、これを」と、本を愛する誰かが差し出してくれた本を受け取れる場所なのだ。

その原点たるが、このモンテレッジォだ。
村人が本を手にとった時代は、ちょうどフランス革命前後。民族同士の争いが絶えず、国としてのまとまりがなされていなかったイタリア半島は、稲妻のように現れたナポレオンを通して、自分たちで国を作り日々を守るという考え方に触れた。
そうした人々が真っ先に求めたのは知識。そうして本の購買層は民衆へと一気に広がっていく。

山奥にあったモンテレッジォは、一八一六年に異常気象に遭い、生活の軸としていたで農業を失ってしまった。そんな苦しい中、希望を見出したのが「本を売る生活」だったそうだ。

本の行商人たちはイタリアじゅうを旅し、彼らの声に耳を傾け、いま求められる本を揃えていった。一般の書店では流通されなかった時勢に抗う本、いわゆる禁書なども、彼らの手からなら、得ることができた。「モンテレッジォの行商人から買う本なら間違いない」当時はそんな言葉が行き交っていたのだろう。こうして、国のすみずみにまで、文化という血が行き渡るようになった。

本を通じて、文化が醸成されていく。それは現代も全く同じだ。モンテレッジォの歴史を楽しんだ読後は、自分が受け継いできた一冊を、きっと誰かに伝えたくなるはず。



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