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Yellowjackets / Mint Jam

今回はYellowjacketsのライブ2枚組CD、Mint Jamを取り上げてみましょう。2001年7月24日、25日Los Angels、The Mintにて録音。Heads Up Label
[Disc 1]1.Les Is Mo 2.Boomtown 3.Motet 4.Mofongo 5.Blues For KJ 6.Runforyerlife [Disc 2]1.Song For Carla 2.Tortoise And The Hare 3.Mosaic 4.New Jig 5.Statue Of Liberty 6.Evening News
ts,EWI)Bob Mintzer key)Russell Ferrante b)Jimmy Haslip ds)Marcus Baylor
全曲メンバーによるオリジナルで構成されています。

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大変素晴らしいクオリティのライブレコーディング、2日間に渡りライブが行われているので演奏テイクを厳選しているかも知れませんが、バンドの一体感、グルーヴが気持ち良いです。それにしても楽曲上の間違いや曖昧な点が全12曲中ライブにも関わらず殆ど感じられないのは驚異的です。また後からPro Toolsを使って編集作業が行われ、小さなミスは修正されているとは思いますが、徹底的にリハーサルを重ねて演目を確実に自分たちのものにしよう、パーマネント・バンドとしての自負、プライドを持ちつつ自分達の音楽を作り上げていこうと言う事を、文章の行間を読むように演奏の奥、向こう側から垣間見る事が出来ますし、彼等がライブ演奏中一切譜面を見ずに曲をメモリーして演奏している点からも感じ取る事が出来ます。Weather Reportも同様に暗譜して演奏していました。

Yellowjackets(アメリカ本国ではJacketsと略して呼ばれています)は自分たちの楽曲の譜面を販売しています。「Music From Yellowjackets Mint Jam」by Russell Ferrante

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このCD収録曲の全ての楽曲スコアが完璧に掲載されており、この譜面を元に演奏することが可能です。実際僕もこのスコアにはお世話になり、自分のバンドでも演奏した事が有ります。このスコアを見ながらCD演奏を聴けば曲の構造とメロディ、リズムの関係、コード進行との絡み具合が一目瞭然です。少し音楽を突っ込んで、楽理的にいささかマニアックな聴き方をして見たい方にオススメです。
このように昨今はCDでオリジナルを演奏し、その譜面をJacketsのように曲集として販売したり、HP等で一曲づつダウンロード販売するのが当たり前になっています。楽器を演奏する人が増えているからこそですが、ジャズの楽しみ方として生演奏を聴きに行くよりも自分たちで演奏して楽しむ方に比重が傾いていると思います。ライブへのお客様の足が遠のくのも頷けますが、30年以上前の例えば新宿、六本木、銀座、青山辺りのジャズクラブでは夜な夜な「ジャズを聴きたいぞ!」「聴かせてくれ!」と言うお客様が行列をなして待っていたほどでしたが。

JacketsはピアニストRussell Ferrante、Jimmy Haslipを中心にギタリストRobben Fordの1978年発表のアルバムThe Inside Storyで伴奏を勤めたのがきっかけで結成されました。
初期にはアルト奏者Mark RussoやドラマーRicky Lawsonが参加し、いわゆる西海岸系のブライトでメロウなサウンドを聴かせていましたが、90年からテナー奏者Bob MintzerがMark Russoの代わりに参加した事でぐっとジャズ度が上がりました。ドラマーにもPeter Erskineが一時参加した事が有ります。その時の演奏を収録した海賊盤が「Erskine’s Tape」です。99年5月24日Sweden Lundにてライブ録音。

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Weather ReportやSteps Aheadのドラマーとして名を馳せただけあって、このライブ盤でも素晴らしい演奏を聴かせています。グルーヴ感、楽曲のカラーリング、サウンド付け、フィルインの巧みさ、ソロイストに対する寄り添い方の繊細さ、大胆さ、ドラムソロの色気、僕としてはここでのメンバーts)Bob Mintzer key)Russell Ferrante b)Jimmy Haslip ds)Peter ErskineがJackets史上最強だと思いますが、Erskineは多忙さから加入を断念したようです。
実は僕も一度Erskineと共演の機会を持つことが出来ましたが、彼のミュージシャンシップには感銘を受けました。Erskine「やあ、こんにちは。君の名前は?僕は君のことを何と呼べば良いかな?」「Tatsuya Satoと言います、今日は宜しくお願いします。」Erskine「オッケーTatsuya、宜しくね。今日は皆んなで演奏を楽しもうじゃないか」スーパードラマーに対等に接して貰えて、僕自身もリラックスして演奏に臨むことが出来たのを覚えています。
Jacketsの曲は口ずさめるメロディアスなナンバーから、複雑で幾何学模様的な構造の曲、澄み切った青空のような美しいバラードまで、幅広いカラーのサウンドを聴かせてくれますが個人的にはMintzerのナンバーに心惹かれます。現在まで20枚以上の作品をリリースしていますが、Mintzerが参加し彼のオリジナルを演奏したアルバムはどれも優れたバランス感を保っています。西海岸と東海岸のサウンドの融合と言うべきか、ジャズ寄りのポップフュージョン、さらにそれを超えたJackets Musicと言えるかも知れません。

Jacketsでクリスマスソングを特集した作品があります。「Peace Round: A Christmas Celebration」2003年リリース

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Jacketsのふくよかで優しく、上品なサウンド表現とアメリカ人がクリスマスに馳せる思いとが融合して他のクリスマスソング集にはないゴージャスさを感じさせます。最後に収録されているIn A Silent Night、Joe Zawinull作曲でMiles Davisのアルバムタイトルにもなっている「In A Silent Way」とクリスマスソングの代表曲Silent Nightの融合!早い話In A Silent Wayの曲想でSilent Nightを演奏しているのですが、やはりアメリカ人もダジャレ好きなのですね(笑)

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一度Jacketsの生演奏を聴きに横浜のライブハウスに行ったのは、同じく03年リリースTime SquaredのCD発売記念ツアーでした。こちらも素晴らしい内容で前作Mint Jamを凌駕する出来映えです。

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その日はちょうど自分の所属するビッグバンドのコンサートが同じく横浜であり、夕方のギグを終えてからすぐそばのライブハウスに赴く事にしていました。昼間そのビッグバンドの本番前のリハーサルも順調に進み休憩時間にメンバーと近所のユニクロを覗きに行きました。別に何を買うと言うわけでもなかったのですが、ユニクロ店内に外人が何人かいる事に気付きました。「どこかで見たことのある外人だけど…あっJimmy Haslipじゃないか!」と言う訳で彼のそばにはRussell Ferrante、Marcus Baylor、そしてBob Mintzer、Jacketsのメンバー全員を発見!Mintzerには面識が無かったのですが「Hello Bob, 僕はTatsuya Satoです。僕もテナーサックスを演奏していて、今夜Jacketsのライブを聴きに行く事にしています」「Tatsuya, nice to meet you. 今夜の演奏を楽しみにしていて下さい」とやり取りをする事が出来ました。ところでJacketsメンバー全員何をしていたかと言うと、1枚¥1,000のTシャツを物色していたのですが、案の定当夜のライブでは全員ユニクロの黒いTシャツをユニフォームのように着用していました。アメリカの超一流バンドでも現地調達でステージ衣装を格安購入する事に親近感を覚え、とても嬉しくなりました。

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