村上春樹さんの旅行記です。「ウイスキー」をテーマにしてアイルランドとスコットランドのアイラ島の旅を記録した作品です。村上春樹さんは文化人類学者ではありませんが、この作品では日常生活の中の些細な出来事や風景を詳しく描写します。これはエスノグラフィーにおける日常の観察と共通しています。
いきなりウイスキー造りのレシピを人生に例える所が村上春樹さんらしいです。
"ジム"はボウモア(スコッチウィスキーの銘柄)のブレンダーとして登場します。現地でウィスキーに関わる仕事をしている人たちの人生哲学を文学的に描写しています。
この表現はとても素敵ですが、潮風が家畜の肉の味に影響するというのは理屈では関係していないかもしれません。しかし、アイラ島の牛や羊は潮の引いた海辺で海藻を好んで食べる様です。
同じアイラ島の蒸留所でも伝統継承の考え方が異なります。ボウモア蒸留所は古典的な方法で製造されるらしいですが、ラフロイグは近代的でコンピューター制御されています。その理由をラフロイグ蒸溜所のマネージャーへインタビューした回答がこちらです。
最後に、私がこの旅行記がエスノグラフィーだと感じた表現です。ボウモア蒸留所のジム・マッキュエン氏へインタビューしたアイラ的哲学です。
「神妙な巫女みたいに。」エスノグラファーとして大切な考え方だと思います。
この本には写真が多く掲載されており、現地の風景や人々の様子を視覚的にも知る事が出来ます。ウィスキー好きな方や旅行が好きな方でも気軽に読める良書です。