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「日本社会のしくみ」を読んで

日本は学歴社会。ただ重視されているのは学校名であって何を学んだかは重視されていないー。なぜこうなるのか?確かに!と共感する事がある。この本は、日本の歴史を振り返りながら、いつどのようにして日本社会のしくみが作られ、そして生活に根付いたのかを解き明かしていく話。とにかく過去の文献や論文のレビューが豊富で、圧倒される。だけど、読みやすくて面白かった。好奇心を刺激してくれる。ボリュームが多いので、本の総括というよりは気になる内容を備忘録としてメモ。

その昔、キャリア官僚は今と比較できないほどキラキラと羨望の眼差しで見られる存在だった事。東大生の官僚離れが進んでいる、という記事を読んでいて、確かに、そうなるよなと思ったので、かつてそんな時代があったことを知ると面白い。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/18633?layout=b 明治時代、東京の山の手にある大きな住宅街は、大抵役人のものだったという。民間企業が台頭する大正期には変わってくるけど、明治時代においては、役人の威信は大きいものだったよう。それと、勤務時間も非常にホワイトだった。そもそも勤務時間が設けられていなかったようだけど、めちゃ短い。10時に登庁して14時に退庁。明治2年の話。そして夏季の勤務は午前中まで。その慣習は昭和期まで続いた。官等が高いほど、勤務時間が短く、給料が高い。信じられないー。「官尊民卑」の傾向が強くて、官庁は尊敬の的。渋沢栄一ですら、役人を呼んで銀行集会所で宴会をすると、手を膝の下まで下げてお辞儀をすると話をしていたことがあったらしい。150年前の日本のリアル。だから三井などの民間企業は、会社設立当時、人材採用をする際に官庁の給与基準とキャリアモデルを模倣したという。それはまず、役人と同程度の高い基準にする。(いまも変わらないなと思う。)そして職種に限らず、勤続年数によって昇進して給料が上がるというモデル。長く働くことに重きを置かれていた時代。この明治期に作られた官庁モデルがベースとなって、約150年をかけて伝わり今にまで続いている。

生産人口が減るなか、ひとりひとりの生産性を高めよう!となっているなかで、これからの働き方、考え方を変えていく際、実は当たり前だと思われていた今までの働き方や時間の使い方、幸せの指標などを立ちかえったり、昔の人たちの働き方が出来た経緯や当時の様子を知ることは何かのヒントになるなと思った。(明治期の官僚の働き方は今と遥かに違うし、当時求められていたものも違うはず)なにが言いたいという主張は特にない。ないけど、日本の社会の歴史やしくみを知っておくことは、これからの未来を考えて行動していくうえでもきっと大切なプロセス。好きな本。


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