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今季8敗目も白熱した試合

スラムダンクど真ん中世代というかスラムダンクを見てバスケを始めた私にとってやはりスラムダンクという作品はとても特別な存在でバスケを語る上でなくてはならないものとなっている。そんな自分のボキャブラリーのなさに絶望している状況とは裏腹に琉球vs島根の試合は今後に希望を持たせるものとなった。

「ち・・お前ら・・・オレのいないとこでNO.1争いするなよな」

スラムダンクの登場人物、強豪湘陽高校の主将・藤真健司が敗戦後に決勝リーグで牧vs仙道のどちらがゲームを支配するかという争いを観てる最中に口にした台詞である。
ふと俯瞰で見ると広島や名古屋Dが
この琉球vs島根の試合を見たらきっと

「俺らのいない所でNO.1争いするなよな」

と、藤真健司と同じ様なことを言うんじゃないだろうかとそんな事を思ってしまう。そのくらいハイレベルでお互い一歩も譲らない白熱した試合だった。

昨季キングスはレギュラーシーズン7敗。今季は折り返しですでに8敗を喫している。
8敗のうちの7敗は停滞感のある自滅かそれに近い敗戦だったが今節の敗戦はエナジーを出して、出来ることとやりたい事をやって敗戦したので整理する作業がしやすい。今まで難しかった所が通用していた部分もあり、改善の手ごたえを感じる。
強い言葉を使ってしまうと不甲斐ない試合をしたこれまでの7敗とは違うという感じだ。後半戦に向けて希望を持てるいわゆる良い敗戦となったのではないだろうか。


■1Q 琉球のうちなータイム

キングスは見慣れなたスロースタート「うちなータイム」を発動していた。早々に安藤誓哉の時間を作られ2-10のネガティブラン。開始2分でタイムアウトを取り一旦流れを切る。しかし内容は悪かったわけではない。ビューフォードのPnRに対するディフェンスはクーリーがペイントエリアに残る事でドライブへの睨みを利かせていたし、安藤誓哉には厳しく行けていた。オフェンス面でもシンプルにやれていたしコート全体使えていた。島根の外角が好調だった事もあり1Qは17-28とリードを許したが、点差程の差は見られなかった。シュートが入った島根とシュートが少し落ちたキングスくらいの差だった様に思う。

■2Qの怒涛の14-0のビッグラン

11点ビハンイドで始まった2Qは松脇のラテラルステップからのスリーポイントが反撃の狼煙となった。島根は安藤にボールを持たせるお馴染みのスタッガードスクリーンからスイッチを誘発しニカvsコーのミスマッチを作るがコーのファイトと両コーナーの牧・松脇のヘルプの圧力が影響しニカにボールを入れられずタフなスリーを試投。この際リバウンドに参加する松脇が津山を捨ててニカを飛ばせないように-松脇-ニカ-コー-とサンドイッチしに行ったのもファインプレーだった。松脇の意図通りニカを飛ばさせずダンカンが拾ったリバウンドからの速攻で+2点。流れを生むには十分な5点でありその間わずか66秒。島根はたまらずタイムアウトを陽キゆ。1Q開始早々の展開をそっくりそのままやり返した形だ。
ATO(アフタータイムアウト)は2-2-1(or2-1-2)のオールコートで島根にプレッシャーをかけコーが日本人エース安藤からTOVを誘発、こぼれ球を拾った牧の弾丸チェストパスがコーに通り+2点。ニカのムービングピックがオフェンスファウルとなり松脇とダンカンのPnRからダンカンがスコア+2点。
コーがニックケイのTOVを誘発し牧のノールックパスからダンカンがスコア+2点で遂に同点。さらにダーラムのスリーポイントが決まり14-0のビッグランで逆転。その間わずか3分20秒。キングスはセカンドユニットで6回の攻撃をすべて得点に繋げ逆転に成功した。島根はここから安藤のスリーと中間距離のジャンプショットでなんとか繋いで行くがキングスも田代のスリーで応戦。互いに譲らず同点44-44で前半を折り返す。

ちなみにニック・ケイのトラベリングっぽく見えて会場がザワついたシーンはありがちなトラベリングっぽく見えるムーブなだけでトラベリングではない。

2Qの怒涛の3分20秒のその中心にいたのはコー、松脇、そして牧。日本人選手の働きが大きかったし基礎的な動きを集中力を高く保って遂行できたのはホントに素晴らしかった。

■クーリーの存在感と島根のファウル管理

クーリーのインサイドの優位性はなお強力で得点とリバウンドも然ることながら、ディフェンス時のゴール下の存在感は確実にビューフォードの1on1の判断に影響を与えていた。クーリーがゴール下にどっしりいる場合はアタックしないと約束があったのかもしれない。オフェンスではゴール下一辺倒ではなく時にはゆっくりダイブしてFT付近でもらってみたりエルボーで受けてみたりファジー(あいまい)なダイブの仕方は島根のインサイドのディフェンスに混乱を与えた。加えてペイントエリアに3人引き付けてからの外角今村への対角パスでスリーポイントをお膳立て。インサイドに強力な引力をもつクーリーにあのパスを出されると島根はできる事が無くなるし今村の復調連続スリーを演出するきっかけになった重要な1本だったとも言える。
第3Qはチームとしては強固なディフェンスを中心にリズムを掴んでいく琉球スタイル。ダーラムのスーパーブロックもあり派手に感じた時間もあるが基本的な事を集中して遂行していく姿は強いチーム特有のそれであり、リバウンド取ったら走る、ブロックアウトを怠らない、しっかりカバーに入る等の能力や調子に関わらない部分をやり続けられた意味は現在のチーム状況を考えると非常に大きかったのではないだろうか。
3Q、あえて贅沢を言うなら島根のインサイド陣のファウルをもっと誘発出来ていれば…と思うが島根からすればvs琉球戦は必ずファウルトラブルに陥っていたのでファウルに対するリスク管理はかなり敏感になっていたように感じた。
特にニカのファウル管理がしっかりされていたのは4Qに効いてくることになる。

■互いのプライド懸けたラスト10分

島根エース・ビューフォードをクーリーがブロックして始まったファイナルクォーター。牧の芸術的なアシストからクーリーのAND1があったと思えば、島根は阿部、ケイの外角で応戦。今村の外角とダーラムのオフェンスリバウンドからのスコアがあったかと思えば島根もニカのオフェンスリバウンドからのAND1。まさに一進一退。

キングスはディフェンスの強度を高めながらチームのグルーガイ牧を投入し、島根は土壇場でボールの預け先を安藤、ビューフォードから変えてきた。

しかしここで島根ニカがファウルトラブルを起こさずにコートに立っていることの意味が効いてくる。
ディフェンス、オフェンス共にリバウンドに絡み、ボールへの預け先にも関わりキングスからファウルも奪うことにも貢献する。キングスはニカがいる事でインサイドの優位性を保てず早い時間帯でチームファウルがかさんでボーナスフリースローを与えてしまい状況が徐々に島根に傾いていく。

それでもキングスは今村の個人技とインサイドアタックでなんとか食らいつく。スコアは79ー81。
島根のラストポゼッション。残り15秒で放たれたスリーポイントは岸本の鋭いチェックの影響で万全の体勢ではなくリングにはじかれ攻守交替。リバウンド後岸本は速攻をキャンセルしダーラムのポストプレーに託すも残り5.3秒で島根ケイのクレバーなファウルに止められる。
琉球タイムアウト後、エンドラインからのスローインにキングスが選択したのはシューター今村をおとりにした岸本→クーリーのセットプレーだったがここでもケイのクレバーファウルに遭う。
残り3.2秒。2本決めることが出来れば同点、1本でも落とせば敗戦濃厚のプレッシャーのかかるフリースローになる。
シューターはクーリーでフリースロー80%弱の確率を誇るがここを2本揃えることが出来ず。2本目落ちたところでファウルゲームとなり試合終了。

お互いのプライドをかけた戦いは80-81で島根の勝利となった。

■負けはしたがチーム状況と未来は明るい

敗戦となったが下を向く必要はない。これは決して強がってるわけではなく、確実にチームの状態は向上しているからだ。
セカンドユニットが実力を示し渋滞気味のインサイドでもエルボー付近を上手く使い始めた。
チームディフェンスもお互いコミュニケーションを取れてるし復帰組の牧と田代のコンディションも戻ってきた。
特にハンドラー牧の影響は増していてこの日はチーム最多の5アシスト。チームのプレータイム構成を大きく支えている。

更に復帰間近の渡辺飛勇。
フィリピンのホープ、カールタマヨの獲得。

そして特別指定選手制度を利用してまさかの開志国際高等学校の平良宗龍(元キングスユース)
ユース育成特別枠の須藤春輝を選手登録と明るい材料がこれでもかと揃っている。

そんな状態でキングスは最高の戦いを見せた。使えるカードが日々研鑽され鋭く強固になって行く感覚もある。
現在西地区3位ではあるが全てが出揃った中で迎える4月の13連戦は総合力を発揮するいい機会になる。

島根も新加入エペとロールプレイヤーの白濱が不出場ではあったが4月の島根との対戦は今回と違った結果になるだろう。
全てが噛み合っていく状況と素晴らしい試合内容がそう思わせてくれた。

あくまで目標はBリーグのキングになる事。
その為の代償はそろそろ払い終わっただろう。


スラムダンクの仙道彰の「さぁ、いこーか」
今のキングスにはこのセリフがピッタリだ。

たつまる

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