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「私のこと好き?」

「私のこと好き?」って訊く時って「好き」って言ってもらいたいものなのです。
好きだから一緒にいてくれると信じていたいじゃないですか?
その頃付き合っていた相手は結構気が多く、しかも正直者で、自分と他の相手と同時進行の時は「今、他にも付き合っている子がいるんだ」なんて言ってくる。そんな相手と7年付き合った自分もなかなかだな…と後になって思うが、当時はそういう相手に「私のこと好き?」なんて怖くて訊けなかった。
「お前が俺を好いているのだろう?」
そんなこと言われたくないじゃないですか。

が、そんな「私のこと好き?」をまさか3歳児に訊くことになるとは思ってもいなかった。

当時3歳の友人のお息子くん=ヤスくん。
ヤスくんの両親とも友達で、パパが高校卒業した年にヤスくんは誕生。
まるで自分たちの甥っ子か何かのように仲間連中はヤスくんを可愛がった。
ただ、こちらも若いもので所謂「赤ちゃん言葉」で接する…なんてことはしなかった。
だから2歳半にしてパパの好きな長渕剛の歌(激愛)なんぞを口ずさむような子になった。
両親と同じくらい自分にも懐いてくれて、お互い名前呼びで、ふたりだけで留守番したり、どこかに出掛けたりするのも全然平気だった。
が、残念ながらパパとママが喧嘩して、ママが家を出て行ってしまった。
落ち着くまで3ヶ月くらい、ヤスくんには会うことがなかった。
それまでは週2〜3で会っていたのに…。
パパが「ちょっと預かっていてくれる?」と言って出掛けた。
久しぶりに会ったヤスくんに、それまでよりも少し距離を感じた。
ちょっと切なくなって、思わず「私のこと今でも好き?」と訊いたら、ヤスくんは、じっとこちらを見上げて言った。

「今でも好き。明後日も好き」

その瞬間、彼を振ってヤスくんに鞍替えしたくなりましたよ。年の差17歳!
「今でも好き」だけでも十分に嬉しいのに「明後日も好き」の一言にまさに落ちてしまいました。
明日じゃなくて明後日という言葉のチョイス。
3歳児には意味がないかもしれません。
でもこちらは(勝手に)夢を見ちゃうんですよ。
明日を通り越しての明後日。
よくないですか?
思わずギュッと抱きしめたら、ヤスくんも私の服をギュッと握ってくれて、嬉しかったなぁ。

人生において「私のこと好き?」と訊ねたのはこの一回きり。
そもそも「甘い会話」っていうのが苦手なんです。
照れちゃうし、キャラじゃないし。
でも、まぁ、最高の答えをヤスくんからもらったので、「私のこと好き?」部門では勝ち組だと思っています。

p.s.
ヤスくんとは、パパが転勤で地元を去ってからはそれっきりなんですけどね。
でも最近そのパパから連絡があって、元気でいることがわかってホッとしています。



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