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【小説】ゆれるかご

5
商社に勤める中村亜希子は、恋人の田畑聡とその娘小梅と、シェアハウスに暮らす同居人のような気負わない暮らしをしていた。 ある日、亜希子は会社の人事部から突然呼び出されあらぬ疑いをか…
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#完結

【小説】ゆれるかご・1

 商社に勤める中村亜希子は、恋人の田畑聡とその娘小梅と、シェアハウスに暮らす同居人のような気負わない暮らしをしていた。  ある日、亜希子は会社の人事部から突然呼び出されあらぬ疑いをかけられる。 *全5話です。毎週火曜日の夜に更新予定* 1 「中村さん、ちょっと……」  出社早々、中村亜希子は所属課の小松課長に呼ばれた。淹れたばかりのコーヒーの香りが鼻孔をくすぐり、思わず「5分後でもいいですか?」と言いたくなった。  亜希子の勤める友井物産で数年前に導入されたコーヒー

【小説】ゆれるかご・5

商社に勤める中村亜希子は、恋人の田畑聡とその娘小梅と、シェアハウスに暮らす同居人のような気負わない暮らしをしていた。  ある日、亜希子は会社の人事部から突然呼び出されあらぬ疑いをかけられる。 *こちらは全5話の最終話です* 4話はこちら 5 「お待ち合わせでしょうか?」  入口で店内の様子を伺う亜希子に店員は尋ねた。指定された銀座の喫茶店へ予定の5分前に入店したが、目的の人物、高倉賢治氏はまだ姿が見えない。  事前に社内報で顔写真を確認してきた。白