怪談に美談や政治思想を混ぜるのは興ざめの極み

私は創作系や実話風の怪談話が好きで本や掲示板を漁っていますが、その中には2種類の興ざめしてしまう怪談があります。
それは何か良い話にしてまとめる美談風の怪談と語り手の露骨な政治思想が盛り込まれた怪談です。

それらのどんな所が嫌なのかを以下に説明したいと思います

オウム事件以降に急増した美談系怪談

今も昔もテレビなどでは頻繁にオカルト特集が組まれていますが、20年前にそれが突如として消滅した一時期がありました。
その理由はオウム真理教が起こしたテロ事件です。

当時のオカルト番組やバラエティー番組は、麻原彰晃をゲストに呼んだり、オカルトや新宗教を視聴率を稼げる面白コンテンツとして扱いました。
テレビでオカルトに興味を持って、オウムなどのカルト宗教に接触する人も多くいました。
それがテロ事件後に激しい批判を浴び、テレビでのオカルト番組や怪談特集番組だけではなく、オカルトや怪談話を扱う本や記事も消えました。

個人的には、市民の科学リテラシーやマスコミの報道倫理の問題を解決せずに、怪談話に罪をなすりつけても無意味だと思っており、怪談話はスケープゴートにされたと感じます。

そして、その頃から旧来のオドロオドロしい怪談話ではなく、美談風の怪談が増え始めました。
例えば「危ない目に遭いそうになったら死んだお姉ちゃんの声が聞こえて助けてくれた。天国のお姉ちゃん、ありがとう」みたいな怪談話です。
要するに、美談というカテゴリーに入れておけば、メディアで怪談話をしても許されたわけです。

怪談話が消えしまう危機において、創意工夫を凝らして怪談話の伝統を守ったことには意義がありました。
その一方で、まるで小学生向けの道徳の教材のような怪談話が量産されて、私は辟易してしまいました。

「おじいさんの重い荷物を持ってあげたら、お礼にお守りをくれた。金縛りにあった時、お化けがお守りを見て逃げ出した。年寄りを大事にしたおかげで助かった。君もお年寄りには親切にしよう!」
こんな話ばかりでした。

ですが、この流れは長くは続きませんでした。
リングなどのJホラーブームを迎えてガチ怖系の怪談が脚光を浴び、ネットの普及によりメディアの自粛を無視して怪談が語られるようになると、この手の毒にも薬にもならぬ美談風の怪談はいつの間にかほとんど見なくなりました。

思想が強い上に風評被害をもたらす怪談

ネット発の怪談には多くの名作がありますが、商業出版では見られないような駄作を目にする機会も格段に増えました。

中でも私が一番嫌いなのは、語り手の政治思想がもろに表に出てくる怪談です。
これは私がその思想に反対しているからという理由で嫌いなのではありません。
年寄りに親切にすべきという主張には賛同しても、怪談話の中でその主張を聞かされるのが嫌なように、例えその政治思想に賛同できても、怪談話を利用してそれを語るのを見るとしらけてしまうということです。

例えば「悪霊に襲われた時に、日本兵の格好をした幽霊が助けてくれた。英霊の皆さん、死後も日本人を守ってくれてありがとう。僕は明日にお礼を言う為に靖国神社で参拝します」みたいな怪談を聞かされても、(私の親族も靖国神社に祀られており、私も毎年靖国神社へ参拝していますが)「ケッ!バカらしい」と吐き捨て、無駄な話を聞いて損をした気分になります。

まぁ、思想系の怪談が毒にも薬にもならぬ美談に収まっている内は、目くじらを立てて批判するのも大人げないことかもしれません。
ですが、民族差別や風評被害を広げるタイプの思想系怪談は激しく批判すべきと私は考えます

以下のような怪談がその手の最低最悪な怪談の一例です。

日本から韓国人が次々と仏像を盗んでいる。
奴らは呪いの仏像も韓国に持ち出しており、今の韓国は呪いによる病気が蔓延している。
韓国人と縁を持つと、それらの呪いが自分にも伝染するから、韓国人とはなるべく関わらないようにし、奴らが日本に来れないように妨害しよう。

  • 特定の民族を犯罪者集団として扱う

  • 特定の民族が伝染病の原因という風評をバラ撒く

  • 特定の民族の排斥を主張する

  • 特定の民族に対する加害を扇動する

幾つものしてはいけないことをやらかしています。

私も韓国人の言動を批判することはありますが、飽くまでも事実を根拠にした上で、民族全体に対してではなく、問題行動を起こした当事者だけを対象に批判するようにしています。
(例えば私は、レーダー照射事件への韓国政府の対応、旭日旗に対して侮辱的な扱いをする一部の韓国人、福島の処理水へのデマを広げる韓国野党を強く批判しています)

それに対して、怪談話という自由な創作が許される世界で、事実にもとづかないデマを創作して特定の民族への憎悪を煽り、風評被害を広げるのは怪談話を悪用した行為です。
怪談好きとして、このような悪質で低レベルな怪談を聞かされるのは不愉快の極みであります