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カタール政府とアルジャジーラに警戒せよ

タリバンがアフガニスタンの首都カブールを陥落させてから、中東のカタールが影響力を増大させている。カタール政府がタリバンとの交渉の窓口になったため、欧米諸国や日本はカタールと取引せざるを得ない状況に至っている。では、カタールとはいったいどのような国なのか。中東と世界全体の安定を脅かすカタールの歩みを振り返りながら、カタール政府に対する警戒の念を呼び起こしたい。

2017年6月、当時のトランプ大統領はサウジアラビア、エジプト、UAEなどのスンニ派諸国がカタールとの外交を断絶することを支持するという声明を出した。キャロライン・グリックはその直後に、エルサレム・ポストの論説の中でトランプ大統領の声明の背景を説明していた。当時のグリックの論説に基づいて、カタール政府とアルジャジーラについて以下に述べてみたい。

1995年の初め、パルス・ガス田が発見され、急速に世界で最も裕福な国になったカタールの政権は、アラブ世界のスンニ派の国々の体制やそれらの同盟国である米国に対するプロパガンダ戦争を行うことによって、さらにはテロリズムへの多額の資金提供によって、アラブのスンニ派を密かに傷つけ始めた。

1996年、カタールの政権はアルジャジーラを設立した。

カタールの政権はアルジャジーラの情報発信を厳重に支配し続けている。カタールの政権によって支配された情報発信はネットワークの設立以来、変わっていない。アルジャジーラのパン・アラブ放送局は何億世帯に情報を送り届けている。アルジャジーラは合衆国の同盟国であるスンニ派のアラブ世界の国々に反対している。それはまた、ムスリム同胞団とムスリム同胞団によって生み出されたテロ組織を支持している。アルジャジーラはイランとヒズボラを支持している。

アルジャジーラは明らかに反イスラエル、反ユダヤ主義である。

プロパガンダ兵器としてのアルジャジーラは、米国、イスラエル、欧州その他の西洋の標的を攻撃するアルカイダ、ヒズボラ、ハマス、イスラム聖戦などのテロ組織に仕えている。

アルジャジーラは、2011年にはエジプトのムバラク大統領に敵対する煽動や、2012年にはリビアの指導者カダフィに敵対する煽動において、プロパガンダ戦争の最前線に位置していた。ムバラクやカダフィの体制は打倒され、代わりにムスリム同胞団やその他のジハード主義組織によって支配された体制に置き換えられた。

カタールはアルカイダやハマスの資金源であるだけではない。イラクやシリアでISIS に味方する武装集団にも資金提供している。ウィキリークスによると、2009年に合衆国の外交官はカタールを世界最大のテロリズムの資金源と呼んでいる。

カタールがテロリズムへの資金提供や煽動によって中東や世界全体を不安定にしていることを考慮に入れる時、トランプ大統領がカタールに反対するスンニ派を支持するという声明を出したことは極めて合理的であった。

スンニ派諸国はカタールがイランとの戦略的同盟を断つことを求めている。スンニ派諸国はカタールがテロ組織への資金提供を終わらせることを求めている。それからカタールがテロリストたちをカタールの領土から追い払うことを求めている。

不幸にも状況は複雑である。

2016年の合衆国の選挙に先立ってウィキリークスが公開した記録によると、カタールの首長は65歳の誕生日のプレゼントとしてビル・クリントンに現金100万ドルをクリントン財団のために寄贈した。ヒラリー・クリントンが国務長官だった時には、カタールは600万ドルをクリントン財団に寄付していたと伝えられている。

クリントンだけではない。1990年代以降、カタールは何億ドルもの資金を合衆国の複数の大学に投資している。6つの米国の主要な大学はドーハにキャンパスを保有している。

それからブルッキングズ・インスティテュートは、オバマ政権やクリントン政権の重要なシンクタンクであった。

ニューヨーク・タイムズが2014年に伝えたところによると、ブルッキングズ・インスティテュートは2002年、ドーハに支部を開設し、カタールから何百万ドルの寄付を受けていた。2013年だけでも、カタールの政権は1,480万ドルをブルッキングズ・インスティテュートに寄付していた。

ブルッキングズ・インスティテュートの学者たちがムバラクの打倒を支持したことや、ムスリム同胞団の政権を支持したことは、驚くには及ばない。ブルッキングズの学者たちは、軍がムスリム同胞団を2013年に打倒した後、オバマ政権がエジプトへの軍事的支援を断ち切ることを促した。

ブルッキングズの学者たちはカタールによる人権侵害を無視し、カタールの同盟国トルコのエルドアン政権を称賛した。

さらに不幸なことに、カタールから利益を得ているのは、クリントン財団、ブルッキングズ、合衆国の諸大学だけではない。

ペンタゴン、国防総省もカタールから資金提供を受けていた。

1990年代、カタールはドーハの郊外のアル・ウデイド空軍基地を建設するために10億ドル以上を費やした。

それは中東で最も高度な空軍基地である。2003年以降、イラクやアフガニスタンやシリアにおける米国のすべての作戦はこの基地から指揮されている。

トランプ大統領のツイッターの投稿の後、国防総省はアル・ウデイド基地の作戦がカタールとその近隣諸国との危機によって影響を受けたことは今までなかったとすばやく語った。国防総省の報道官はカタールがテロリズムを支援しているかどうかを語ることを拒絶した。

2017年6月、トルコの議会はカタールの政権を守るためにカタールに軍隊を配置する権限をエルドアン大統領に与えることを投票で決めた。

もしエジプトとサウジアラビアが、米国の支持の有無にかかわらず、カタールを侵略もしくは攻撃した場合、米国はアラブの同盟国がNATOと同盟を結ぶトルコと戦争するという事態に直面することになる。

その状況の下で、2017年5月のブリュッセルでの演説の中で、トランプ大統領がNATO条約第5条を支持することを拒絶したことは、賢明であり熟慮されていたと思われる。

第5条は、ひとつのNATO加盟国への攻撃がNATO同盟諸国全体への攻撃であることを示すと述べている。

その状況の下で、米国にとって最善の選択肢は、カタールの中東での影響力を弱めることであり、カタールからイランやイランのテロリストやイランの代理機関への資金提供を減少させることであった。

ところが、タリバンによってカブールが陥落した今、カタールは中東における影響力を増大させている。世界全体と中東にとって、それは極めて不幸な状況なのだ。

資料:https://carolineglick.com/qatar-trump-and-the-art-of-the-double-deal/

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