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観戦記~アスフレvs仙台~

不安。困惑。後悔。我慢。決意。挑戦。歓喜。

あの日、あの場所には、若手の剥き出しな感情で紡がれた物語があった。その物語は強烈で、僕に忘れかけていた何かを思い起こさせてくれた。

これは、若手の物語と、観客の一人だった僕の物語が交錯した話。

1.逃げようとした僕の物語

今シーズン、アスフレはチームを長年支えていた中堅選手が一気にいなくなり、若手とベテランの二極化が進んでいる。

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二極化の中で、若手は事ある毎にベテランと比較され、ミスの多さを指摘されていた。

「若手のミスが・・・」

オープンな場で、東頭HCの口から何度聞いたことか…。比較され、怒られ、勝てなくて、自信をなくした若手はプレーのスケールがどんどん小さくなり、消極的になっていた。

僕はそんな若手を見るのが辛かった。負けることよりも、負けた責任を背負って下を向く若手を見る方が嫌だった。だから、甘いと言われるかもしれないけど、心の中では以下のように叫んでいた。

「若手のミスってそんなに責められなきゃいけないのかな」

「ベテランの悪いプレーや自分の采配は庇うのに、どうして若手のミスはオープンな場で指摘するんだよ」

「ろくな育成環境を用意せず、ミスが多い若手を使わざるを得ないロスターにしたフロントを責めろよ」

「成長とかいうけど、チームはただ重荷を背負わせているだけじゃん」

もうね、僕の心の中は、若手を庇う気持ちに関連した感情でぐっちゃぐちゃ。心のキャパをオーバーして、いつ暴走してもおかしくない状態だった。それで、色々と悩んだ結果、

「今季の観戦はこれで最後にしよう」

アスフレから距離を置く決意を秘め、あの日の会場に向かった。

2.立ち向かった若手の物語

今節はベテランがDNP。ただでさえ強い仙台に対して、ミスが多いと言われ続けてきた若手主体で戦うことになった。苦戦、そして敗戦も十分予想できる状況の中、コートに出てきた若手にはいつもと違う雰囲気があった。

「俺たちはできる」

若手のプレーにはそんな剥き出しの感情がありありと出ていた。

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髙木は、エースとしてスタメン出場。今シーズンはショットセレクションを大事にしていた髙木だったが、この試合は強引にシュートを放っていた。外れても外れてもチャレンジする姿勢には、エースとしてオフェンスを動かそうとする気概を感じた。

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翔は、アスフレNo.1DFプレーヤーとして笹倉をマークした。Game1は好きなようにやられてしまったが、Gama2では「1歩」間合いを詰めて抑え込んだ。その1歩に、DFプレーヤーとしてのプライドと気迫を感じた。

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翼は、気合が空回りしてディフェンスのミスが増えてしまった。それでも、ミスを引きずらず、オフェンスではペイントアタックを続けた。Gama1でヒーロー賞に選ばれた時、「負け試合の時だけ選ばれる」と嘆いていたが、その攻め続ける姿勢にチームもファンも救われたんだ。

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イシュは、Game2で36分出場。美談にするつもりはないが、痛みを抱えながらもベンチに下がろうとしなかった。試合終了後、寡黙なハードワーカーが雄たけびを上げている姿に、この試合にかけた覚悟を感じた。

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ケインは、ゾーンDFのトップでプレー。持ち前の身体能力と積極的にスティールを狙う姿勢は確実に相手の脅威になっていた。スタッツに残るような働きはできなかったが、12分出場したことで他の選手を休ませることができた。Good Job!

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そして、最後に久岡。この試合の活躍は本当に素晴らしかった。

Game1~Game2の前半、久岡は一歩下がった位置でチームのバランスをとることに奔走していた。Paceの管理、スペーシング、攻守のバランス、ミスした選手への声かけ等々、キャプテンらしい仕事ぶりだった。

Game2の後半、両チームの足が止まり始めると、一歩下がった立ち位置から一転し、チームの先頭で強烈に旗を振るようになった。ボールを前へ、前へプッシュし、チーム全体にペイントアタックを促すようなプレーだった。第4Q残り34秒、相手をボールプッシュで振り切って決めたレイアップは会場全体が震えていた。

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ベテランとか、若手とか関係なく、Game2は完全に久岡のチームだった。彼の気迫が、彼の執念が、彼の覚悟が、チームを勝利に導いた。

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決して完璧な勝利とは言えない。若手はディフェンスのミスも、オフェンスのミスもたくさんあった。それでも、自分や仲間を鼓舞し、歯を食いしばりながら立ち向かっていた。

そして、その姿勢は、現実から目をそらすために距離を置こうとした僕とは、まるで正反対だった。

3.逃げようとした僕と立ち向かった若手

「僕は何を恐れていたんだろうか」

「僕は何を見ていたんだろうか」

結局、僕は高い位置から見下ろして、若手を可哀想と思っていただけだった。彼らのことを本気では考えていなかった。心配していた彼らは逞しく、困難に真正面から立ち向かい、見事に乗り越えていた。

「もっと良いところに目を向けるべきだった」
そんな少しの後悔と共に、
「彼らの良いところをもっと見たい」
という欲求が生まれた。

0か1で考える必要はないんだ。誰にだって、良いところと悪いところがある。その揺らぎにドラマがあって、魅力があるんだ。そう思うと、くすんでいた心が一気に晴れた気がした。

「見届けよう、彼らの戦いを。」

僕は新たな決意を胸に秘め、帰途についた。

4.最後に

会場を出て、国道15号沿いの道をゆっくり歩く。すると、無機質で見慣れた風景のはずなのに、何もかも新鮮で瑞々しかった。

これは、久しく味わってなかった勝利の余韻なのだろうか。それとも、決意を新たにした影響なのだろうか。まぁ、どっちでもいいか。

では、ここから巻き返せることを願って。
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