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大学院入試に合格しました

臨床統計家育成コースに合格しました

はじめまして、あまると申します。
2022年度入試の京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(通称SPH)臨床統計家育成コース(通称CBC)に合格しました。自分の代が5期生になります。まだ出来て間もないコースということもあり、情報量が少なく自分自身も苦労しました。自分の持っている情報をシェアしてこのnoteを読む皆さんの意思決定や院試対策の役に立てればなという面と、自戒の念もこめて発信しようと思うに至りました。

どんな分野なの?

医療の分野は薬剤の効果を調べる時など、統計学に大きく依拠していると言えます。臨床試験での不正などが近年問題視されており、その背景には医学と統計学の橋渡しをする「臨床統計家」という人材が日本には不足していると言われてきました。その人材育成に特化したコースを作ろうねって取り組みから、京大SPHに臨床統計家育成コースが、東大学際に生物統計情報学コースが設立されました、という流れです。
入学後は主に統計学、医療、公衆衛生などを学び、病院で実地研修をする予定です。

どんな対策を?どのくらい?

人により学力や知識のバックグラウンドが異なるので、どのような勉強をすれば合格できるかどうかは一概には言えません。参考程度にご笑覧ください。

自分が院試にあたり勉強してきたことは
①統計学
②疫学、医療統計学系
③英語(TOEIC)
④その他(文章の書き方、志望理由書の書き方、面接対策など)
に大きく分けられます。

自分のバックグラウンドとして、学部は理学部数学科に相当するところで、主に測度論的確率論について学んでいました。そのため、統計学で最低限必要な(数Ⅲ程度の)微積分の計算はできる、統計学の基本的な知識(期待値分散、確率分布など)は大学の授業で少し学んでいました。一方、昔から英語嫌いでTOEICは受けたこともなく、社会健康医学に関してはまっったく知識はありませんでした。当然、感度、特異度、ランダム化比較試験なんて用語は知らないってところからスタートしました。

(1)3年生11月〜12月

私が院試への勉強を始めようと思ったのは大学3年の11月頃でした。しかし、何の勉強をどう対策すれば良いか全く分かりません。そこでとりあえず、CBCの公式サイトから①面談したい②過去問ほしいというメッセージを送りました。数日後過去問は郵送してくださりました。12月上旬に担当の先生がzoomで面談の都合をつけてくださり、そこで色んな質問をしました。オススメの参考書や勉強の仕方を教えてくれたので本当に貴重な機会でした。この機会なくして合格はなかったと思いますので、CBC進学を考えている人は恐れず早めに面談を申し込んだ方が良いと思います。優しい先生方がアドバイスしてくださると思います。

臨床統計家育成コースの筆記試験は、統計学の問題(必答)と社会健康医学の問題を6問中2問を選んで答えます。当時過去問を見た感想は「統計学はいけそう。でも社会健康医学はさっぱり」といった感じでした。
当時はとりあえず
・TOEIC800
・筆記7割
を目標に勉強するか〜と考えていました。筆記7割の内訳としては、統計学は満点近く、社会健康医学の問題は芯食った解答さえすれば半分以上はくれるだろう。それら合わせて7割くらいかなって雑な計算です。詳しい配点は知らないのでこの数字はアテにしないでください。

社会健康医学の出題範囲は非常に幅広く、全ての分野を対策するのは不可能と言えます。従って、分野を予め絞って対策するのが王道だと思います。自分の中では①医療統計や計算系の問題②疫学系③健康情報学?(バイアスを指摘させる系の問題)の3分野(②と③は分野としてかなり近いですが)を対策して臨もうと決めました。

(2)3年生12月〜3月

この時期はTOEIC6割、統計学2割、社会健康医学2割くらいの割合で勉強しました。TOEICは7月の願書提出のときに原本を提出とあったので「院試受ける前に唯一得点が決まる項目か〜そこそこ良い点取ってないとメンタルに響きそう」って思って、とりあえず800点を目指しました。
英語は大学受験以来何もやっておらず、英語嫌いだったためブランクなど、とても苦労しました。結果1月680、2月落選、3月790、4月785となり、自分は790点で最終的に原本を提出しました。TOEICの対策方法は多くの場所でシェアされていると思うので他所に譲ります。
また、4月からの本格的な筆記対策に向けて、この時期は統計学と社会健康医学の基礎的な部分を補強しておこうと思い、以下の参考書をやりました。

はじめて学ぶやさしい疫学(改訂第3版): 日本疫学会標準テキスト

宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー 114)

疫学 -医学的研究と実践のサイエンス-

スバラシク実力がつくと評判の統計学キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!

統計学演習(培風館)

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)

特に統計学演習は名著なのでオススメです。欠点として昔の本なので誤植が多いのと、推定検定らへんの文字の定義がイマイチ分からないところですかね。
統計学入門は辞書代わりに使っていました。
疫学-医学的研究と実践のサイエンス-もオススメです。分厚い本で最初は圧倒されるかもしれせんが、読んでみると図やイラストも多く平易な言葉で書かれているのでスラスラ読めます。

(3)4年4月〜院試まで

TOEICを一段落させたので統計学と社会健康医学の対策をひたすら積みました。統計学4割、社会健康医学6割の比くらいで勉強していたと思います。この時期に最もやった勉強は京大SPHの過去問です。過去問はどこへ行くときにも常に持ち運び、パラパラ眺めては「この年自分が受験していたらどの2問を選んだだろう?」「この問題のテーマ、出題者の意図は何だろう?」「統計学のこの問題に別解はないかな?」などをずっと考えたり、文字に起こしたりしていました。
(追記:2022/1/28)今振り返ると有効だった勉強法は連想ゲームです。例えば、過去問や参考書を眺めていて、因果の逆転とランダム化比較試験というワードを見つけたとします。そのとき以下のようなことを連想しては、考えたり調べたりしながら文字に起こす練習をしました。知識の定着にも繋がりますし、思わぬ疑問にぶつかり調べるうちに、知識に厚みが増したような気がします。

因果の逆転
→いつ起こり得るか?
→そもそもなぜ起こるのか?

ランダム化比較試験
→なぜコントロール群が必要なの?
→コントロール群にプラセボを用いるのは倫理的か?

当時、自分がずっと意識していたことは「その時に考えたことを目に見える形で残しておく」ということです。自分はワードやノートに自分で作った過去問の答案を日付と共に残しておきました。そうすることで、後々振り返ったときに思考の手助けになることもありますし、何より「2ヶ月前の自分はこの程度の答案しか書けなかったのか。今はもっと他の考えを答案に盛り込めるし自分は成長している」と考えることができるのがとても大きかったです。ある意味自己対照研究のようなことを自分でやっていました。
この時期は以下のような教材を使っていました。

わかりやすいEBNと栄養疫学

佐々木敏の栄養データはこう読む!

放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド

わかりやすいEBNと栄養疫学もオススメです。疫学-医学的研究と実践のサイエンス-には載っていない、因果の逆転や平均への回帰などが解説されており疫学用語の補完の相性が良いと思いました。
佐々木先生の栄養データはこう読むと、CBCの田中先生らが書かれた放射線のデータの読み方の本で、データから情報を正しく受け取る練習もしました。
自分は文章を書く練習をしてきたことがありませんでした。そこで答案を書くにあたって、下の2冊でパラグラフライティングの練習をしました。「こういう質問のされ方に対しては、このような構成で文章を書けば良い」と頭の中で整理されたので文章の構成に関して迷いが減りました。

以下のものはYouTubeで見られます。CBCの先生が説明してくださっているので信用できるものだと思います。

アウトプットする機会を増やすために東大SPHの過去問10年分(統計学、疫学、医療統計、予防医学、公衆衛生調査方法論のところだけですが)や東大学際の生物統計情報学コースの過去問を解いたりもしました。そこまでする必要があったかは不明です。しかし自分は就活もせずCBCしか受けていなかったので、院試に必要と思われる要素は全て潰してから臨もうと決めていました。採点をしてくれる人や模試もなかったので、自分は合格圏内なのか、自分の答案が合っているのか、その他諸々も全く分からない状態でしたので精神的な負担はかなり大きかったです。
いてもたってもいられなくなり、実際にCBCに通っている先輩に連絡したときもありました。「過去問解いたのですが、この答案どうですか?」「志望理由書の添削をして欲しいです」とか見てもらうことはありました。先輩らは本当に優しく、時間をかけて返答してくださり頭が上がりません。
6月頃にはcbtで統計検定2級を受けました。82点くらいで合格してたと思います。意外と間違えてしまっていてショックだったので、その後統計学演習を何周もしていました。

まとめ

院試対策としては、自分は基本的にずっと過去問とにらめっこをしていました。「過去問のこの問題が分からない」と思う度に書店へ行ってはその範囲が載ってそうな書籍を読み漁りました。

冗長になってしまったのでまとめます。
(1)とりあえず早い段階で先生と面談をして良かった。京大SPHのオープンキャンパスでは、在学生や先生に質問や相談をする時間もあるので気になっている方は是非
(2)院試対策は過去問ベースで進める。足らない知識を書籍などで補う
(3)常に合格に足る学力と現実のギャップを認識して勉強する

自分がされてきたように、質問や相談などあれば少しでも力添えできればなと思います。1人でも多くの人がCBCや生物統計に興味を持ってくれれば嬉しいですね。長文失礼致しました!

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