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『姉』といういきもの

よく長女(というか長姉)というものは「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と我慢を強いられるものだと聞く。
『小説家になろう』でも「欲しがりの妹と奪われる姉」はテンプレ物語のひとつになっている。

わたしは長女である。長子でもある。
1歳半下の弟と5歳下の妹がいる。
が、わたしは幸運にも「お姉ちゃんなんだから」の呪いを全く(いや多少はあったのかもしれないが、ぱっと思い出せない程度には)受けずに育った。
これはひとえに『長女』であった母が、娘には自分と同じ『お姉ちゃん』の呪いを与えないよう気をつけて育ててくれたからであった。
母には感謝しかない。全然恩を返せぬ娘で情けないが、それは今回の話では横に置いておく。

妹は末っ子ではあるが、わたしのおさがりばかりかといえばそういうわけでもなく。
少なくとも服に関しては、親戚のお下がりを多くもらっていたわたしよりも妹のほうが新品が多い。
これは妹が贔屓されているわけではなく、わたしの服が妹におさがりされるほど保つわけでもなかったことと、おしゃれに無頓着なわたしと違って妹は人並み(いや世間的に見ると妹も無頓着寄りな気がするが)におしゃれに興味を持っていたことが要因である。
なんなら近年は妹にサイズが合わなかった服がわたしに回ってくることすらある。
それでいいのだ。

わたしは大学に行っていない。
弟妹のために進学を諦めた……なんてことはなく、高校3年生のわたしがなんとなく目指していた公立大学(単に家から近いだけで目標にしていた)に行くのは現状の成績が厳しい、という現実を前に「特に目的もなく金を払って大学に進むぐらいなら、働いて金を稼いだほうがマシかな!!」と突如就職へ進路変更しただけであった。
進学コースにいたのに、高校3年生の一学期末(面談終了後)にこの暴挙。進路指導の先生たちを中心に周囲を振り回しまくってなんとか就職したものの、いろいろあって4ヶ月で退職した話はまたいずれ。

世の苦労している『お姉ちゃん』たちに刺されそうなエピソードしか出てこない。
ついでにわたしは「社会的に半ば強制される『化粧』と『ヒール』」にも無縁な人生を送っているので「世の女性はこんなに呪われているのか……こわっ」と他人事の顔で震えているので、やっぱしばかれそうだ。

わたしが子供の頃、『かいじゅうのうた』を聞いたり『ふたりはなかよし』を見ていた。
触れてきた物語の都合か『お姉ちゃん』より『お兄ちゃん』に感情移入して育った。
ちょっとだけ歳の離れた妹より、物心ついた頃にはすでにいた弟と接している時間が長かったのもあってか、意識がやや兄寄りだった。
兄というか、ただただ理不尽で我が強い上の子だっただけだが。

結果としてはわたしは『お姉ちゃん』ではなく『姉』といういきものになった、と思っている。
人生を振り返ると、どちらかというと弟妹に対して迷惑をかける率のほうが高いが、それでも家族として見放されない程度には仲良くやっている。やれていると思う。やれてたらいいな……
いやこんなんでも弟妹は大事だし、迷惑をかけるばっかりでなく、かかられることもあるし(おあいこと言える比率かは議論の余地があるが)一応『姉』として弟妹を守らねばみたいな気持ちは昔からあるのだ。あるだけだけど。

あれこれ思考を巡らせた着地点としてはいささか見当違いな気もするが。
わたしはずいぶんと家族に恵まれているのだな……に辿り着く。
これからも見放されない程度にはせめて『姉』として生きていきたいと思う。

前からわかってたけど、文章締めるのめたくそだな……

奇特なお方向け