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助けてもらう勇気

今回は、「助けてもらう勇気」について書いてみました。というのも今までいろいろな野点を中心にした1人で準備できるお茶会を行い、自分なりの茶道に対する考えを持っていたのですが、先日行ったお茶室でのお茶会を通して、いろいろな方のお力をお借りして作り上げる悦びや人間関係の大切さ、茶道の持つ「型」の大切さを学びました。そんな茶道を通した新しい気付きについてご紹介できたらと思います。

万葉茶会 良庵

今まで、蛍光茶会、夕顔茶会、黄葉茶会、中秋の名月茶会、台風一過茶会、ドウダンツツジ茶会、山桃茶会など季節を愉しむ茶会を開催してきました。そのコンセプトは、野点で、準備、本番、後片付けをできるだけ1人で完結できるスタイルをとってきました。というのも私の社中がいるわけでもなく、勝手にこの美しい景色を見ながら、皆さんとお茶を飲みたいと個人的に開催していたのだから仕方がないのです。ただ、そうは言っても、有難いことに、当日、水屋といって裏方で、お菓子を出したり、お茶碗を引いてくださったり、洗い物をしてくださったり後片付けもお手伝いをしてくださる方々がいてとても助かりました。

ドウダンツツジ茶会 工場の片隅で

そしてお茶会のスタイルにも疑問を持っていました。席入りするまでだいぶ待たされ、正客、次客、3客だけ、主茶碗など良いお茶碗でもてなしを受ける。4客以降はその他大勢の扱いで、数茶碗(同じ形状のお茶碗)でお茶を出されることが多い。なんか味気ないものを感じていたました。

私がお茶を始めた当初、一度だけ伺った京都の北野天満宮の月窯では、すべていろいろな種類のお茶碗で出され、私は、6番目くらいのお席でしたが、乾漆のお茶碗で、もてなして頂いたことがあります。たぶん、山梨から来たので席主が特別にご準備くださったのだろうと推測できます。というのは飲み終わった後に、お茶碗を取りに来られた方に、「こちらのお茶碗は?」と尋ねると「乾漆でございます」とニコッと笑みを浮かべられたのを思い出します。粋な計らいですね(^^)

そんな環境ですので、できるだけ少人数のスタッフで、みんなでもっと楽しめる茶会のスタイルを模索して、お茶会の「場」だけ作れば、後はみんなで楽しめるスタイルを創りました。

蛍光茶会

どういうものかというと、写真のように幅80cm×縦60cmのテーブルを置き、対面式でお茶を点て合うスタイルです。そして偶然の妙を取り入れ、始まる前に全員に「くじ」引いてもらい、1番が2番に、2番が3番にとお茶を点て合い、最後の方が1番にお茶を点ててお終い。というスタイルが出来上がりました。さらに、1番のお茶碗、2番のお茶碗とくじとリンクしているので、どなたにどのお茶碗に当たるかも運なのです。そしてお点前のテーブルをみんなで囲むので、他の人のお点前の様子やお茶碗もいろいろ見られて楽しめるようになります。待ち時間もないし、お茶も点てられ、当然、お茶も飲める。どなたに点てるのか?どんな人に点ててもらうのかも楽しみの1つとなるのです。

仲秋の名月茶会

こんなお茶会を5.6年続けていたが、いろいろな方にお茶会開催の楽しみをもっと知ってもらいたいと思うようになりました。もちろん、準備、本番、後片付けはとても大変ですが、その先にある茶道の奥深さ、自分が主となった時の責任感、それを果たした後の充実感を体感してもらいたいと思うようになったのです。

黄葉茶会での供茶

そんなお茶会を3年で5回ほどプロデュ―スをして楽しんでいると、先日、お師匠様からお茶室でのお茶会をやってみないかとお声がけを頂きました。

ちゃんとした屋根のあるお茶室での初めてのお茶会での席主。私の姿勢として機会があればやる!とはいえ、今までのように型を崩してよいわけではなく、ちゃんと型にあてはめなければならないのです。席主の役目は、もちろんお道具の準備、当日のコンセプトを掛軸に託す。そして、何より、受付、案内、水屋、お点前といろいろな役割があるのでお茶会をお手伝い頂かなければならないのです。
お師匠様と相談しながら、私を含め総勢9名の方にお願いすることになりました。
内訳は、受付2名。案内1名。水屋5名(うち3名がお点前をローテーション。水屋リーダーを1名)。席主1名。の布陣が出来上がりました。

★ご参考までに、文末に役割分担表を記載しておきます。

仕事も、遊びも、集団で行うときに一番大事にしていることがあります。それは、みんなで楽しむということです。ラーメン屋で大将が怒鳴っているとか、部活で監督が叱っているとか、日本では、なぜかそういう状況をよく目にします。
やっぱり自分たちが楽しくなければ、良いおもてなしは心からできないように思うのです。

ですので、今回のお茶会のテーマは、以下のものにして皆さんと共有をいたしました。
「随所に主となれ。役割を果たして自分たちが楽しむ」

自主的にお花に霧を掛けているところ

ただ、目標を決めても、トラブルがあると楽しめないので、きちっとした役割分担を決め、当日のシミュレーションをいたしました。お茶室を見ると席入りできる人数は11名までとなりました。お客様は100名を超える見通しとなっていたので、10時から15時の5時間、1席30分の計算になります。しかし、そう都合よくお客様は来られないので、混むときがあると予想し、番号札をお客様にお配りして、混乱をさけ平等になるようにいたしました。

かくして、大きなトラブルもなく、100名を超えるお客様にお越し頂き、無事お茶会を終えることができました。お手伝い頂いだいた方の中から、反省会を兼ね、食事会をしたいというお声が上がりましたので、嬉しいご要望です。

万葉茶会風景

今回のお茶会で学んだことは、お手伝い頂いた方々に本当に助けて頂いたということを実感しました。お点前さん達には、時間がないと予想されるので、小気味よいお点前をお願いしておきながら、席主として話をしていて、次客のお茶碗や終い茶碗の茶碗出しを忘れることが多々ありました。お点前を急かしておいて、結局、私が足を引っ張っていたのです。
また準備の段階では、季節のお花を朝5時からご準備くださった先輩もおり、「今朝、河原撫子が今年初めて咲いたのよ」「中村さんために咲いたのよ」と嬉しそうにご準備くださいました。2日前にも一度、練習してみたらとお花を持って来てもくださいました。

いくら頑張っても1人ではいいとこ2、3人分。9人分の仕事には到底及びません。
お茶会は、やはりチームワークだと学びました。今までは、何とか1人でという意識が強かったのですが、今回の経験から、頼ったり、助けてもらったりすることも良いものだと思うようになりました。

私は、大学で戦略経営という学問を学びました。簡単に説明すると「理念、戦略、システム、組織」を外部環境に合わせて行うというものです。まさにお茶会もそのものズバリです。

「助けてもらう勇気」と題しましたが、その根底にあるのは、喜んで助けてあげようと思ってもらえる普段の人間関係作りが大切なのだと思いました。幸い素晴らしいお師匠様をはじめ、社中の方々に恵まれているので有難い限りです。

【役割分担表】

【受付】Nさん、Sさん
 茶券を回収、番号札を渡す。
 茶券を持っていない人から500円回収、番号札を渡す。
 記帳を願いする。 市町村 氏名
 番号札は11番まで(急ぎでどうしてもという方がいらっしゃれば、1、2名まで案内のNさんに連絡)
 時間がなくてお茶とお菓子を所望の方を、案内のNさんに連絡する。

【案内】Nさん
 番号札を回収し受付に戻す。
 次のグループを外の席にご案内する。
 時間がなくてお茶とお菓子だけを所望の方を、外の席にご案内し、水屋にオーダーする。
 寄せ木細工のお盆にお菓子をもらってお客に渡す。次に水屋からお茶をお客様に運ぶ。
(急ぎでどうしてもという方を受付から頼まれた場合、1、2名まで入り口から席主に、あと1、2名入れますかと声をかける) 

【水屋】Kさん
 水屋のリーダー
  お菓子の手配、お茶点て、お茶碗洗い、次のお点前の準備などを、「Hさん、Mさん、Tさん」へ指揮。

【お点前】Hさん、Mさん、Tさん
(お点前を順番で行うが、お点前がない時は、お菓子、お茶点てなど水屋を手伝う)

【お運び】Aさん
その他、隙間の仕事をみつけお手伝い。

【席主】私  何でも屋。何か問題があれば聞いてください。

【その他】
人数が予想では100名を超えると思われる。
お点前は、小気味よいお点前を心がけてもらいたい。

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