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【映画 かがみの孤城 感想】大人から子どもたちへ伝えたいこと

この映画を観て1番思ったのは、「かつて10代だった大人からの、10代へのメッセージ」ということだ。

映画の原作は辻村深月さんの小説「かがみの孤城」。
本屋大賞を2018年に受賞していて、私もそのタイミングで読んでいる。
確か当時、辻村さんは「映像化するならアニメにしてほしい」と仰っていた気がするので、私もアニメになるのを待ち遠しく思っていた。

主人公は、とあることがきっかけで学校に行けなくなってしまった中学生のこころ。
光りだした鏡を通じて城に行くとオオカミのお面をした小さな少女(オオカミ様)と中学生6人がいた。
城のどこかにある鍵を見つければなんでも願いが叶うとオオカミ様に言われ…………。

ただのファンタジー映画ではなく、ミステリー要素もあるから大人でも楽しめると思う。
そして、その真相を知った先に救いがある。

中高生に観てもらいたいと思いつつも、登場人物の背景がリアルで、少々グサグサ刺さりやすいような気もした。
でも、ラスト(だったような……)のセリフを聞いて、「ああ、これは中高生に見てもらわなくては」と思った。
きっとこれが言いたくて、この思いを伝えたくて辻村さんはこの物語を書いたし、映画制作陣は映画を作ったのだと思った。



以下、ネタバレまでいかないかもしれないけど、映画の内容に触れます。



私のことを話させてもらうと、私は不登校を経験していて、当時は大人になることが怖かった。
中学生なりに悩んで戦っていたけど、親からは「大人の方が大変なんだから頑張れ」と言われた。
「大人より楽な子ども時代でつまづく私」だから、毎日毎日大人になりたくないと思っていた。大人になってもやっていけないと思った。

きっと、誰しも10代の頃に何かしら壁にぶち当たると思う。何をどう悩むかは本当に人それぞれだけど、「大人になりたくない」「自分はもう終わりだ」と感じる10代は多いと思う。
大学の心理学の授業で「疾風怒濤の思春期」と言う表現があった。これは間違いないと思う。

そして、この気持ちにこそ寄り添うのが「かがみの孤城」であると思う。

ラストの方で喜多嶋先生が言う「大丈夫、大人になって」というセリフ。
このセリフを喜多嶋先生が言うことに大きな意味を感じる。

この「大丈夫、大人になって」という言葉の意味は、「あなたなら乗り越えられる」ではなく、「あなたも乗り超えられる」だと思う。
今は苦しいと思うけれど、私も乗り越えられたよ。あなたも乗り越える力を持っているんだよと伝えたいのだ。

その乗り越えるためのお手伝いを喜多嶋先生はまさにしているわけである。

つらくてつらくて、視野が狭くなっている中高生に寄り添い、選択肢を提示する仕事。
私もこれまでの人生、よい大人に出会い、色々な選択肢をもらって、選べるように手伝ってもらったと思っている。

子どもはしっかり力を持っていて、それを発揮できるよう少し手伝うのが大人の役割であり、教育なのかもしれないと最近思うようになった。

その大人が子どもたち、10代の中高生に寄り添う1つの方法がこの物語なのかもしれない。

元不登校の私はこの春大学を卒業し、働く予定だ。
あのときの私には想像できなかった未来である。普通に働くなんてこと、できないと思っていた。
私もきっと乗り越えられた。

喜多嶋先生や、この物語から教わったことを胸に仕事をしていきたいと思う。

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