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神椿幕張戦線 IN 幕張メッセを過ごして

 来たる11月2日。年齢のためにピンとこなくなってきているけれど、自分の誕生日なんです。2024年のこの日と翌日、神椿スタジオは幕張戦線と題して二日間のライブを行いました。同年1月に行われた、神椿代々木決戦の再演という形です。再演の(再)が付いてはおりますが、内容的にはかなり変更があるのは今までの(再)やREBUILDINGを観てきた中では自明のこと。むしろ全然別物を観るつもりで行きましょう。そういうわけで、当日が来ました。

 ……自分は疲れていました。なんでも年のせいにするのは良くないのですが、このごろはもう23時前に寝ないと耐えられないのです。この日も結局、23時前に寝て昼まで起きなかった覚えがあります。睡眠のコアタイムどころか、明け方から昼間まで確保しないといけないとは。とにかく、ふにゃふにゃのやる気で旅に出かけました。行き先は幕張メッセ。JRの幕張本郷駅からバスが出ているので、これに乗っていけば着くだろうという算段です(後で誤算があったことが発覚します)。

 果たして、ホテルにチェックインしてから予定通りに会場に着きました。今までのライブと同様、ポストカードを配っている観測者がX(旧Twitter)で確認できます。ですが、今回は着いた時間が遅い。開演17時のところ、16時過ぎに到着では遅すぎる。既に入場の列形成が始まっており、誰かに会うような雰囲気ではなくなっていました。

 そして、この日は土砂降りの雨が降っています。会場物販は、不正防止のために折りたたんだショッパーとそのままのグッズを手渡しされるのですが、この荒天で渡されるとどうにもならない。ビニールで包装されていない宝島社の花譜ちゃんムック、びしょびしょに濡れてしまいました。もう神も仏もねえ。後でアンケートに書いてやる。

 そんな小さなトラブルがありつつも列に加わり、会場へ。いやー幕張メッセイベントホール、大きいです。代々木もデカかったけど、こちらも負けてはいない。上方からの強いライトが、雪のゲレンデみたいに注いでおります。

ペンラはヰ世界情緒ver!

 現象Ⅱ(再)が始まる。誕生日にライブ。やっと実感が沸いてきた。いい一日にしよう……。舞台の向こうから「おー!」と掛け声が聞こえてきました。最初は何かと思いましたが、ライブのアーティスト、スタッフ全員で円陣を組んだのです。この声を敢えて聞かせるという演出に、早くも感動して拍手を贈りました。

 最初はお馴染みの「共鳴」。可愛く明るくちょっぴり影を見せる、全部入りの一曲です。かけ声で「Hey!」がやれて盛り上がりました。そこから「輪廻」「秘密」と、どんどんスピードを上げてゆく。ここから「再会」です。しっとりとした情緒さんセンターの歌で毎回泣けます。「飛翔」も漏れなく泣けます。二人きりの地獄へ行こう。そして「定命」。V.W.P! 皆で叫びました。センター春猿火さんの歌が上手い。異常に上手い。みんな上手いんですけど、とにかくそうです。

 VSパートに入ります。新曲「暴力的イグノランス」はデビュー間もない少女革命計画の御莉姫さんがオリジン(神椿的には生身で出演すること)で現れ、幸祜さん充電中のためピンチヒッターとして起用された音楽的同位体・狐子と共に歌います。

 御莉姫さん、ライブに出演するのまだ二度目なのに完璧なので驚きました。動きまくるし力強く歌う。なんだろう……太古の昔にモーニング娘。がAKBとかを見て、「デビューしたての頃、あんなに慣れてなかったですよね。今の子は出てきたときからもうプロの顔してる」って言ってたアレです。後続のグループはノウハウがしっかりしてるってことなのか、出てきたときからプロです。いや、初期の花譜も好きですよ。独特の雰囲気を纏っていて……でも少女革命計画を見るといきなり完成されてるなーと思ってしまいます。ということは、これからもっと上手くなられるのでしょうか。今後に期待です。

 続いて明透さんと理芽さんによる「アイノ最適解」。どっちも陽キャでギャル……というのは置いておいても、音楽で独自の世界観を作り出しているお二人だと思うのです。こういうのを歌ったらさぞかし強いだろうな、というムーディーなのを出してきて私は満足しました。

 さらにヰ世界情緒×VALISの「ぼくらの逃避行」。アヰドルとアイドル的ダンスグループの共演です。とにかく明るくて可愛い。ダンスのキレがすごい。無敵です。マーガレットソル(情緒さんの衣装名)、いつ見ても可愛い。ダンスの運動量が凄まじいです。

 ここから春猿火さんと獅子志司さんの「天照ダウン feat.春猿火」。やばい、春猿火さんの歌声がすごい。ライブ会場に響く声質っていうのか本当に良いです。獅子志司さんも軽やかに歌う! 日本神話テーマというのも刺さります。素晴らしいです。

 VSパートの最後は「花十カクメイ前日譚」。少女革命計画のお三方、氷夏至さん・美古都さん・夕凪機さんによるグループ、罪十罰に花譜ちゃんが加わって……背の高さも雰囲気もなんか同じグループみたいですね。曲名の「花十カクメイ前日譚」もそういうストーリーが始まるような感じがします。
 こちらも可愛い!

 VSパートの終わりから、いつものV.W.P DISCOTIQUEへ。激しい光と音の嵐です。箱の文化はよく分からないのですが、こういうのをまさに“浴びる”と言うんでしょうなあ……。ELEVENPLAYのキレッキレのダンスも相まって場を盛り上げます。ただし、ここは長丁場のライブの中で、休んでもいいパートなのだと思います。とはいえノッてしまう。結局ずっとペンラを振っていました。

 暗転の後、V.W.Pと音楽的同位体グループV.I.Pによる5名+5体の「機械の声」。この曲、初めて聞いた代々木決戦でもそうだったんですけど、泣けます。歌う機械と人間の物語、初音ミク(supercell)の名曲「Odds&Ends」を聴いたときのような、胸に来るものがあります。音楽的同位体は独自の物語性を身につけつつありますが、今後も開発が進むとどうなるんでしょう、身体を得たりすることもあるんでしょうか。
 ……それはずっと先のことですね。

 再演であるだけに、1月の神椿代々木決戦の流れへと回帰してゆきます。魔女各々の、SINKAライブの最後の曲を順番に、メドレーしてゆく……「描き続けた君へ」「百年」「ゲンフウケイ」……そう、ゲンフウケイを幸祜さんの代わりに狐子ちゃんが歌ってくれるなんて。幸祜さんの心情を代弁するかのような歌詞を、代役の狐子が歌う……それがどういうことか上手く言えないのですが、強いテクストを持つ流れです。ライブ後もフォロワーさんの一人が言ってました。ここが一番心に来た……と。その時は反応鈍くて申し訳ないです。今は分かります。「身空歌」そして「邂逅」……いずれも名曲ですね。

 ここからMCが入り、この場に居ない幸祜さんのお話になりました。もっともっと盛り上げて、幸祜さんに歌を届けるぞ!
 ということで、以降は終わりまでV.W.Pの爆盛りパートに入ります。

 「花束」「同盟」「天命」「欲望(これが聴きたかった!)」「遊戯」「切札」! 叫びましたし、腕を振り続けました。ここがあったから、終わった後でひたすら楽しいライブだったと思えたのでしょう。
 最後の曲はV.W.Pのテーマ曲、「魔女(真)」。撮影OKだったので腕を固めて撮りました。
 いやー、燃え尽きました……まだ明日があるなんて、信じられないことです。いい誕生日プレゼントになりました。ありがとうございます。

 そういうわけで帰途についたわけですが、行きの幕張本郷から出るバスが、18時頃に終わってしまってホテルに直帰できません。仕方が無いので電車を接いで帰ることにしました……一時間くらい長くなってしまいます。夕飯はラストオーダーぎりぎりで入ったファミレスで、ご飯物を食べました。いい夜でした。

 翌日は睡眠不足のため昼を過ぎても寝ていました。やっぱり基本的に疲れて始まっているので、夕方まで起きられません……。何故こんなに疲れているかって、先月の10月に予定を詰めすぎたせいです。10月12日は神椿オンリー即売会のOvserver Effectがありました。25人が参加した合同誌の編集は大変でしたが、皆さん締め切り守ってくれてたこともあり、楽しい時間でした。翌週は旅行へ行き、その次の週は20年以上前の作品であるアーマードコア・マスターオブアリーナ(初代PSのゲームです)の対戦会があり、貴重な対人戦を体験することができ、その翌日には神田古本まつりと、まったく休みが休みではありませんでした。全部自分のせいですが、持病が忍び寄るほど疲れています。結局、この後も夕方に会場へ行ったので、入場待機列にすぐ並んでしまい、誰かと会うことはあまりありませんでした。人と会って話すのは苦手ですが、会えれば嬉しいです。ライブで持ち帰った感情を抱えて、黙って帰るのも良いのですが。

 二日目、怪花(再)は「青春の温度」から始まりました。狂ってんだと連呼する愛の歌です。始まった感じがします。 二曲目はいきなり「未観測」観測者達が叫び、会場を暖める。労働蜂起してそうな歌詞が好きです。 そして「糸」。ここで最初期の曲が入ってくるとは。否応なく盛り上がりました。熱気を冷まさずに「夜が降り止む前に」「海に化ける~人を気取る」。

 六曲目から一気に雰囲気を変え、「邂逅」です。みんな独りぼっちだ! という悲痛な声と、そこからのやさしい呼びかけが響きます。
 ここから、ゲストの時間です。花譜ちゃん×岸田繁さんの「愛のまま」。「抱きしめて feat.崎山蒼志」。留まった空気感がすばらしいです。
 ツミキさんの「チューイン・ディスコ」「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のメドレーはもうぶち上がりました。最高でした。
 「一斉風靡 feat.星街すいせい」もヤバかったですね。BIGなゲストでした。

 恒例のKAF DISCOTHEQUEは、自分はやっぱりずっと立って腕振ってました。それから音楽的同位体の可不ちゃんと歌う「不埒な喝采」「フォニィ」。どちらもすっかり浸透した曲なので、耳に馴染んでいます。

 この辺りで、1月の怪花と同じ構成でバーチャルヒューマン・花譜が天から降ってきました。Moe Shopさんと2曲! 機械を操作しながら会場を煽るの、自分はどうやってやっているのか未だによく分かりません。感覚で、直感からほど遠い感じのするDJ機器を操れるのって才能だと思います。鍵盤じゃ無くてつまみを弄ってるわけで……分からない。すごい。

 代々木決戦の記憶を辿るならば、花譜ちゃんの出番も終盤に差し掛かってきました。GSAこと「アポカリプスより」「スイマー」「ゲシュタルト」が来るわけですよね? と思わせて、「ゲシュタルト」から始まりました。しかも、ダンサーとしてオリジンのVALISが登場です。「アポカリプスより」もアップテンポなアレンジになっており、全く違う聴こえの曲となっています。 VALISの皆さんが手を振ってフェードアウトしてゆき……新曲ラッシュです。「何者」「カルペ・ディエム」「代替嬉々」。どれも良かったのですが、印象に強く残ったのは最後の「代替嬉々」でした。暗黒な気分を明るく歌うというか……明るく病んでますね。こういう曲は大好きです。

 そしてそして、花譜ちゃんの限りなくオリジンに近い姿、廻花さんの登場。1月の代々木決戦の時は言葉を失いました。あの背が低くて可愛い花譜ちゃんをされている、二十歳の女性のシルエットが、正円……おそらく「廻る」を意味するもの……を背にして現れたのですから。
 でも、半年以上前の衝撃は時間に緩衝されて、今はもう受け止める段階に来ています。披露された「ターミナル」「スタンドバイミー」「テディベア」「転校生」を心地よく聴くことができました。新曲の「東京、ぼくらは大丈夫かな」は東京を題材にした曲で、普遍的テーマといえる東京を歌ってくれたことに、個人的に感慨がありました。
 MCで言われていた、「人が背景になる街」東京。自分はあまりに当然の風景過ぎて、見つめてこなかったのですが、その違和感をちゃんと心に留めて、形にする。人が通り過ぎてしまうものを拾い上げる。そういうことができるのが、アーティストだと思います。
 端まで計算され演出され尽くしたバーチャルの姿と違って、廻花であるときはご自身でディレクションできる範囲が広がっている、広がってゆくといいなと思います。作詞作曲編曲から演出すべてに渡るまで、自身の世界観を追求してほしいです。
 最後の曲、「かいか」は優しげで、本当に素晴らしいです。度々Spotifyで聴いています。もっと廻花の音楽が聴きたいと思いました。

ナンは美味しい……。

 帰り際、幕張メッセのインドカレー屋でナンをちぎるとき、いやあ……よかったな……という満足感が昇ってきました。感情を動かすことが老化を遅らせることに繋がるのだとどこかで書いてありました。神椿のライブへ行く度、若い観測者の様子や刺激的なライブ体験を味わって、自分も若返ったような気がします。
 そんなわけで、来年も生かされて、生きてゆこうと思いました。先日受けた健康診断の結果が気がかりですが……。

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