反軍拡・戦争政策もまた争点
10月17日に京都円山野外音楽堂で、第15回反戦・反貧困・反差別共同行動in京都「変えよう!日本と世界」が行われた。これまでこの催しは、安倍スガ政治に反対!反新自由主義という内容が濃いものであったが、安倍スガ政治が「一段落」した総選挙情勢でもあることから、自民党の軍拡・戦争政治に対抗しようという内容が盛り込まれていた。メイン講師の鵜飼哲さん(一橋大学名誉教授)は、オリンピックが民衆の「平和に生きる権利」を蹂躙した上に強行されたことは「戦争の論理」であると弾劾された後、自民党が防衛費の対GDP比1%枠を取り払い、2%まで増額しようとしていることや、相手領域内でのミサイル防衛に踏み切ろうとしていることを批判し「対中国包囲網」で欧米と日本、オーストラリアも含めた「南西太平洋条約機構」のようなものが出来ているのではないかということを批判された。また社民党幹事長の服部良一さんは、特別アピールで「生存のための政権交代」という社民党の選挙スローガンを掲げながら、「日米同盟を基軸にする政治ではなく、日米同盟を脱却する政治を」と訴えたのは、これまでの「野党共闘」のしがらみから踏み出そうという決意が込められていると感じられた。
さて今回の衆議院選挙は「成長か分配か」「格差是正」「新自由主義からの脱却」が争点とされてきた。だが自民党の大軍拡・戦争政治に突き進むのか、それに反対するのか?ということも問われていたのである。先の集会でも触れられたように自民党は「政権公約2021」の公約「06.「毅然とした日本外交の展開」と「国防力の強化」で、日本を守る」において、中国敵視、包囲網形成や防衛力の大々的な整備をうたっている。そして選挙時の自民党HPには公約の他に「総合政策集2021」というpdfファイルがあって、その105ページには
634 令和4年度からの防衛力の大幅な強化
「わが国として、NATO諸国の目標水準(国防予算の対GDP比2%以上も念頭に)、防衛関係費の増額を目指し、安全保障環境の激変に対応し得るだけのわが国自身の防衛力を令和4年度から大幅に強化します。」
638 相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有等、抑止力向上の取組み推進
「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みを進めます。」
とある。次ページには
639 島嶼部への攻撃や尖閣諸島周辺の事態など、不足事態に対阻し得る体制の整備
「新型護衛艦(FFM)・哨戒艦やF-35 戦闘機等の整備を引き続き進めます。加えて、12式地対艦誘導弾能力向上型の研究開発等を通じ、相手方の脅威圏から対処可能なスタンド・オフ・ミサイルの整備を進めます。」
とある。
防衛費は対GDP比1%でおよそ5兆円、安倍がやろうとしていた対1.2%で6兆円規模になるが、GDP比対2%では10兆円もの大金となり、本当に大軍拡が始まるのである。その軍拡の最大拠点が、自衛隊が配備される琉球弧の島々であり、中国相手にミサイルの打ち合い戦争を行う準備をしているのだ。
この大軍拡は沖縄戦を再び行おうとする計画であり、ミサイル戦争でその犠牲は76年前の沖縄戦をはるかに上回ることは必至だ。そのため反基地・反自衛隊闘争がこれまで以上に激しくなるわけだが、それを弾圧すべく「重要土地等調査法」が制定されている。自民党「政権公約2021」には「『重要土地等調査法』に基づく取組みを着実に進めます。」とあるし、「総合政策集2021」にも「633 安全保障上重要な土地等の管理」という項目がある。島々で、基地周辺で重要土地等調査法による弾圧が始まるのだ!
また「安保法制」があることにより、鵜飼さんが「南太平洋条約機構」のようなものと批判した対中国の軍事同盟が強化されれば、豪州、アセアン、インドその他英仏の軍隊と共に、南中国海やその他の領域で、他国の領土にミサイルを撃ち込む、爆撃を行うといった戦争を行う事にもなりかねない。この大軍拡・戦争政策は断固阻止しなければならない!
しかしこの事態に対して、立憲野党の対抗政策はどうなっているのか?立憲民主党は「政権政策2021 Policy6平和を守るための現実的外交」で「日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策」「対等で建設的な日米関係」と書いてある中に、日本の大軍拡政策については何ものべられていない(辺野古新基地建設中止は書いている)。「政策集2021 外交・安全保障」においてわずかに「『敵基地攻撃能力の保有』『スタンド・オフ・ミサイル』については、実際に島嶼部での防衛能力強化に資するのか、専守防衛から逸脱する恐れはないのか等について、これまでの憲法解釈に照らしつつ、慎重な検討を行います。」とあるが、その前に「中国の急速な軍備拡大の状況、頻繁な領空・領海侵犯、北朝鮮のミサイルの脅威、ロシアによる北方領土への新型ミサイル配備などに対応するため、専守防衛に徹しつつ、効率的かつ効果的に日本の防衛力を維持・整備します。」ということが書いてある。これでは自民党軍拡に対抗できるわけがない
れいわ新選組の「2021年マニュフェスト れいわニューディール」には、安全保障政策について何も書いておらず、HP上の「真の独立国家のための安全保障政策(れいわ外交政策)」には、「『対米追従外交』からの脱却と安保法制の見直し」「日米地位協定の改定と辺野古新基地の中止」と、旧自由党(小沢一郎路線)的な政策は掲げられているが、現在進められている自衛隊の軍拡については何も書かれていない。それどころか、「『人権政策』を通じた公正な国際社会の実現」には「4.自衛隊の海外派遣 海外で震災・災害が発生した場合、相手国の要望を踏まえながら、自衛隊を人道支援救助部隊として、被災国に派遣。」と、別の意味で危険なことも書いてある。抜本的な改組がないまま、災害救援のためとはいえ自衛隊を出すことは、軍隊をそのまま派兵することにつながるものだ。
日本共産党は「総選挙政策 なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく」「4.憲法9条を生かした外交への転換で、平和な日本とアジアをつくる」で「2022年度軍事費の概算要求は5兆4797億円と、8年連続の過去最高額になっています。『いずも』型護衛艦にステルス戦闘機F35Bを搭載するための『空母化』や長距離巡航ミサイルの導入などは、『専守防衛』の建前さえかなぐり捨てるものです。しかもこの大軍拡は、アメリカいいなりにF35をはじめ米国製高額兵器を『爆買い』するものとなっています。」と、アメリカのいいなりだからだめなのだという捉え方である。ただし「2021総選挙 分野別政策一覧」の「73、安保・基地・自衛隊」にはかなりの分量の記述があって、そこには「自衛隊強化を許さず、大軍拡から軍縮へと転換する」「『敵基地攻撃』能力の保有、軍事費GDP比2%は亡国の道」「南西諸島における自衛隊機能強化を許さない」の小見出しなどが見受けられる。米国のいいなり、米国と一体化という問題の立て方はともかく、このへんはさすが共産党と言える内容だ。
社会民主党の「2021年総選挙公約」には、「05 平和外交で日本とアジアの平和を実現」の中に「沖縄・南西諸島を再び戦場にするな!」とあるが、非常に簡単な事しか書かれていない。「2021年重点政策 6.平和外交で日本とアジアの平和を目指す」には、27)普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を 29)南西諸島や馬毛島の軍事基地化に反対 とあり、基地問題に特化した主張がなされている。ただし馬毛島について「鹿児島県・馬毛島には米空母艦載機のFCLP(陸上離着陸訓練)移設が強行されようとしています。」とあるだけで、自衛隊の事前集積所としての使用について書かれていないのは残念だ。
さて、皆さんの総選挙における投票行動は正しかったであろうか?結果はどうあれ、自民党の大軍拡・戦争政治に対抗すべく、沖縄、岩国、京丹後と、これまで以上に反戦・反基地闘争を推し進めていこう!現地のたたかいと結びつき、軍事大国化・戦争国家化を阻止しよう!
(本記事は10月31日投開票の衆議院選挙以前に書いたものである)
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