30人の壁:履歴を残す


前回は、30人の壁を迎えるにあたり、バックオフィスは全体としてどういう状況になっていればよいのか、について考え、下記2つのキーワードが出てきました。
「事務的に進められるようになっている」
「特異な点」

整理を進めるにあたり、まず最初に、「履歴を残す」習慣を持つことをおすすめします。


なぜ記録するのか

スタートアップで、経理、労務、その他バックオフィスの業務について整理を進める場合、その道は一本道ではありません。
必ず紆余曲折があります。

変化する状況に応じてバックオフィス業務も臨機応変な対応が求められ、180度方針転換を余儀なくされたかと思えば、最初のやり方に舞い戻る、ということもごく普通に起こります。

ですので、紆余曲折の履歴を残すことがとても大切になります。
単なる作業の記録にとどまらず、なぜその選択をし、なぜこのその方法は退けたのか、についても記録しておくと、最終的な選択をする際に思わぬ落とし穴にはまる確率を減らせますし、より自社に最適な選択が可能になります。

どう記録するのか

方法は幾多もあり、それぞれの好みもあるかと思いますが、ここでは私が採ってきた方法を紹介したいと思います。
もともとは個人的に使ってたものを、スタートアップにおけるバックオフィス構築用にブラッシュアップしています。

個人的に使っていた時の資料と目的

  • 進捗管理表

    • 私が自分の担当の業務について抜けもれなく作業するため

    • 私が急にお休みしないといけなくなったときに業務をお願いする人に進捗が分かるようにするため

    • 簡単な経緯を記録し、後日誤りが発覚した場合や将来同じ業務が発生した場合に参照するため

  • マニュアル

    • 忙しいときや体調がよくないときに作業した場合も業務クオリティを下げずに済むようにするため

    • ときどきしか行わない業務について何度も調べる手間を省くため

スタートアップバックオフィス構築で使う場合の資料・目的・構成要素

▼業務進捗管理表
関係者が業務進捗を把握するため、ミスが発生した場合の原因特定、未来に同作業が起きた時のミス防止のために作成・管理する

構成要素は下記
● 作業時期:業務の締め切り日など
● 作業項目:経理・労務などの項目(状況に応じて、給与計算・振込、くらいの粒度にしてもよい)
● 作業内容等:マニュアルや留意点の記載もしくはマニュアルへのリンク
● 作業月:給与締めの関係などで管理しやすい月
● 進捗記載欄:返事待ちのメモ、経緯(ややこしいばあいは経緯まとめ資料へのリンク)など
● チェックボックス:完了したら☑
※作業チェックリストも作るとなお可

業務進捗管理表の例
作業チェックリストの例

▼マニュアル
担当者の業務レベルのブレを防ぐ、担当者不在時に代わってする人が参照できる、将来ツール選定やフロー構築時の参考にするために作成・管理する

構成要素は下記
● システム:会計、勤怠、給与計算など各システムは何を使っているのか
● 資料格納フォルダ:業務関係の親フォルダ等のリンク情報
● 期日:給与締め、所得税・住民税・社会保険の預り日や納付日、経理締め日、請求書支払日など、進捗表に記載のないもので基礎となる情報
● 作業マニュアル

作業マニュアルの例

▼個別資料
イレギュラーや変更経緯が複雑なものについて将来参照するために作成・管理

下記のような場合に作成し、業務進捗管理表やマニュアルの関係項目欄にリンクで貼っておく
● イレギュラーの作業
● 変更の経緯が複雑になったもの
● 方法決定時に意見が割れたもの
● 作業中に思いついたこと(今すぐ検討は不要だけど将来的に論点になるかもしれないもの)
など

まずは毎日見る、追加修正する習慣を

初めは面倒に感じるかもしれません。
日々の業務に追われている中、いちいち書いてられるか!という気持ちになる可能性もあります。
ですが、少なくともスタートアップ初期段階のバックオフィス業務を行うのであれば、絶対不可欠といっても過言ではなく重要です。

中小企業の一部ではよく見られる下記のようなバックオフィス業務では、残念ながらスタートアップのバックオフィス担当者としては役不足になってしまいます。

  • 初回に1時間かかった作業を未来永劫、1時間かけてやる

  • 同じ抜け漏れを何回でも繰り返せる

  • 今やっているやり方がすべてで、特に改善の余地も感じないし、疑問も持たない

  • すべての作業記録、やり方は担当者の頭の中にある

せっかく労力をかけて業務をするのですから、ただ作業が流れていくままにするのではなく、ぜひ、簡単なメモなどできることからでよいので習慣にしてみてください。
その効果は大きいと思います。

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