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MIMIJIRU vol.1

男の夢。

野球の監督。

映画でよく観る、ストリップバーみたいなとこでの取引。

音楽ライブの主催。

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13:00  渋谷スターラウンジ入り。

諸々の準備をしていると、ナードマグネット楽屋入り。

須田さんがニコニコしながら、お馴染みのセットリストの紙を見せてくれた。

そこに「アフタースクール」の文字。

僕がナードマグネットで1番好きだとおすすめしていたその曲。

心の奥の奥の方の隅の隅のところがちょっとだけキュッってなる曲。

抱いて欲しいと思った。

僕の体は火照っていた。


14:00  さすらいラビー・ラブレターズ楽屋入り。

楽屋に入るなり、さすらいラビーの巨躯担当・中田が少し頬を紅潮させながら話しかけてくる。

「櫻田さん。勉強不足で僕ナードマグネットさんを知らなかったので渋谷に来るまで聴いてきたんですけど、アッパーな曲もあればしっとりとした曲もあって、全部めちゃくちゃカッコいいですね!」


かわいすぎてハムスターかと思ってない。

その傍らで「営業の感じかな...まあでも...ネタを...」と思案を巡らす相方の宇野。

さすらいラビーは例えそこがウルトラクーデターの戦場でも、トップバッターで出ていけば反政府軍の武器を捨てさせる、そこをお笑いライブに変えてくれる力を持っていると思ってオファーした。


ラブレターズは溜口さんがずっとそわそわしていた。

日本シリーズ第6戦で、今日贔屓にしているスワローズが勝てば日本一に決まるからだ。

「なんて日にやってくれたのよ。ああ、高梨、高梨だよな。で金久保が...」

仕事場に関係ない私情を持ち込む。

これがプロだ。

舞台ではナードマグネットのリハーサルが始まっていた。



14:40  オープニングMC打ち合わせ

音楽ライブとお笑いライブの要素を半々くらいにしたいなと思っていたのでオープニングMCを設けた。

僕とラブレターズとナードマグネット須田さん。

須田さんが大のラジオ好きだというのは元々知っていたけど、溜口さんの事を当たり前のように「カリスマ溜口さん(ラブレターズのオールナイトニッポン0での溜口さんの事。7年前)」と呼ぶ程だった。

ちょっと引いた。


15:00  オープニングMC

15:10  さすらいラビー

2人とも不安そうに出て行ったけどトップバッター然としたパフォーマンスを見せてくれた。

「ブレナイ(さすらいラビーがよく出演している若手芸人主体のライブ)みたいなもんだから気楽に」と言っておいて良かった。

きっと「あぁ、ブレナイみたいだな」と思ってくれた事だろう。


15:15  ナードマグネット

ナードマグネットはこの日、この出番の後になんと川崎でもライブが控えていた。

にも関わらず出演。

にも関わらず初っ端「ぼくたちの失敗」からフルスロットル。震えた。

フロア行って聴こうと思って楽屋から出ようとする僕の前を早歩く巨体。ナードマグネット勉強してきた中田。

キョロキョロしている。ライブとか行った事無いと言っていたからきっとどこで観るべきかと迷っているのだろう。

体でかいから、と思ったであろう彼は1番後ろに陣取り舞台を見つめる。

7秒後には体を揺らしていた。

その時彼は何を思う。それは彼のnoteで。


ラスト、アフタースクール。

たまんなかった。

たぶん口開いてた。たぶんちょっと唄ってた。たぶんちょっと宙に浮いてた。



15:50  ジャンキー58%

サブスクで「ジャンキーバンド」聴いて一発で好きになった。

でも大阪のバンドだし全然面識なんか無いのでオファーはDMで凸。ふたつ返事でOKしてくれた。

とにかくパワフル。

とにかく演奏してる3人が1番楽しそう。

それこそが観てる側からしたら本当に魅力なのです。


「タイトルがMIMIJIRU。気持ち悪い!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

「やめなよ!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

「みんなも耳から汁出して楽しウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

こんなにご機嫌なMCは見た事が無い。


終わった後に「これあげます〜いります〜?あげま〜す」てセットリストくれました。

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16:25  日本エレキテル連合

「バンドセットとかマイクとかもあるのでちょっとやりづらいかもですすみません」て言ったら「うちらどこでもアウェーですから大丈夫ですよガハハハ」て制服に着替えながら言ってました。

みなさんご存知の通り、エレキテルコントパワーで無理矢理ホームにしてました。

力で日本エレキテル連合単独公演にしてました。

グッナイチャンネル置いておきますね。


16:30  PARIS on the City!

溢れ出してた。

パリスの汁が溢れ出してた。

音がずっとエロい。ニヤニヤしちゃう。

2曲目で歯の詰め物とれたのだけ本当に意味が分からなかったけど。

林檎79号線のイントロほんとエッチよなあ。



17:05  SonoSheet

宇都宮を拠点に活動する魂バンド。

2日前くらいに「何か聴きたい曲ありますか?」という連絡をくれた。

1曲に絞れなかったので何曲か選んで「決めれないのでこの中からお願いします!」て送ったら全部やってくれた。あほ。


新宿のタワレコの隅で初めて聴いたあの時の「青」さがずっとそのまま。

聴いてる人の胸に無理矢理全曲ねじ込んでくる全身全霊パフォーマンス。

夏が始まりました。

ちなみに新メンバーのギター・たなか君は僕と同じ秋田県出身で、同じ高校の後輩でした。は?


17:45  サンシャイン

圧巻。

いわゆる営業スタイルであたためた後に披露したのは、のぶきよさんのギャグを存分に堪能できるコント。

そのギャグが全弾命中。

あのままやり続けてたら確実に笑い死人が出てた。

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この後、坂田さんは酒を浴びながらライブを楽しむただのジャンキーおじさんと化す。


17:50  OKOJO

僕のディグソウルを呼び起こしてくれた大阪のバンド。

出す曲出す曲が新しくてジャンルレスに僕らを楽しませてくれる。

MCでボーカルのまつしたさんが、今日は決して本調子ではない、上手に声を出せる状況にないことを告白していた。納得いかなかったら返金する、と。

その覚悟に震えた。

芸人だって例えばネタを飛ばしてくっちゃくちゃになる事もある。適当にごまかして帰ってくる事もある。

じゃあ果たしてそこまでの覚悟を持って毎回舞台に出てる芸人が何人いるんだろう。少なくとも私は持っていない。

その瞬間に出来る最大のパフォーマンスをたしかにOKOJOはしてくれた。

あの場にいた全員がそのパフォーマンスを、その覚悟を受け取ったことと思う。



で、楽屋に戻ったら37歳おぢさんのラブレターズが野球部の格好をしていた。

脳が追いつかなかった。


18:20  ラブレターズ

ほぼ同時刻に日本シリーズ第6戦がプレイボール。

直前まで一球速報にかじり付きだった溜口さんは舞台に飛び出す直前には、野球少年の目からアーティストの目になっていた。

お客さんは最初こそ戸惑っていたものの、終わる頃にはアーティストを見る目になっていた。

圧巻の野球拳。

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僕が数々観てきた野球拳の中でもベストゲームと言って良い程の、野球拳。

ライブハウスでラブレターズが野球拳を9回唄うライブを企画したいと思う。


18:30  YMB

沁みた。

体の隅々まで。

それは17時の街に流れるあの音楽のように。

当たり前のように僕らの日常に寄り添ってくれる優しい音。

新曲「斜陽」の景色はとにかく美しかった。

自然と揺れる体がこんなにも心地よかった事はありません。


19:05  コーナー「櫻田口イントロクイズ」

YMBを観ている時に「なんでここで終わりにしなかったんだろう。この最高潮のこの瞬間に終わりにすればなんて素敵なイベントになったんだろう。櫻田口イントロクイズ?」と6回思った。

しかしこれはお笑いライブ、と自分に言い聞かせた。

アーティストさんにも出ていただき強行した櫻田口イントロクイズ。

櫻田が口でイントロクイズを出すだけの時間。


盛り上がりもそこそこにコーナーが進行する中、衝撃の事実が発覚。

チーム塚本、ジャンキー58%・ドラム ちいさん。まさかの19歳。

その刹那、舞台上の芸人おじさん全員の頭の中に共通のテーマが生まれる。

「この子を楽しませて帰してあげたい!!!」

あの時、たしかに芸人のギアが上がる音が聞こえた。

よしもとでコーナーライブを年間1800回はこなしているサンシャインがなりふり構わず刀で乱れ斬れば、それに負けじとラブレターズが斬り返す。


そしてこれを正解したチームが優勝という最終問題。

正解したのは19歳だった。

お笑いライブのコーナーでは毎回必ず1人、瞬間最大風速を叩き出す芸人が生まれる。

まさか今日もストライカーが生まれるなんて。

あの場にいた芸人は全員「羨ましい」と思っただろう。



僕の「この人たちが見たい」のひと言で、東から西から出演をしていただいた事をずっと噛み締めております。

バンドの演奏を見た芸人は口々に「まじでカッコよかったわ」と言い、芸人のネタを見たバンドの方々は「本当に面白かったです!」と興奮気味に話してくれました。

求めていたのはこれです。

特にラブレターズ 塚本さんはすれ違うたびに「バンドって良いな。バンドってほんと良いよな」と言っていました。

きっと塚本少年は明日には、お母さんに教科書を買うからと嘘をつきお小遣いを貰い、町の楽器店に走り、ギターを買うことでしょう。


必ずvol.2を開催したいと思います。

最終目標はリアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーを呼ぶことです。

vol.何万まで続ければ叶うのか、まず叶うはずが無いのか分かりませんが、続けていきたいと思います。



これを読んでくれた人は、ここに出てきたバンドを全部聴きます。ここに出てきた芸人のネタを全部見ます。それをしない人はキモいです。

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