映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』を読む
『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』
監督 - 五十嵐卓哉
脚本 - 榎戸洋司
脚本協力 - 朝霧カフカ
アニメーション制作 - ボンズ
フランスの民族学者ファン・ヘネップによれば、通過儀礼には、「分離」「移行」「統合」という三つの段階があるという(『通過儀礼』)。本作(映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』)は、主人公の中島敦を中心に見た場合、まさにこの「分離」「移行」「統合」という通過儀礼における三つの段階に基づいて展開していくことになると言えるだろう(いわゆる三幕構成である)。
まず敦は、澁澤の写真を見た瞬間から、「過去」のイメージを想起するようになり、さらに澁澤の「異能力」によって出現した霧が、強制的に敦と敦の分身ともいうべき「異能力」(=虎)とを「分離」させることになる。ここでの霧とは、迷宮のメタファーとして読み取ることもできるだろう。すなわち、敦はまるで時空の歪んだ迷宮の中を、「現在」と「過去」を循環するように彷徨いながら(=「移行」)、自らの分身ともいうべき虎との自己同一化(=「統合」)を目指すことになると言えるのだ。なお、ここでの自己同一化とは、それまでの自己とは変化した自己に成ることを意味する。それまでの自己は死に、新たな自己が生まれることを意味するものである。
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