【12/12更新】がん遺伝子パネル検査①|がんゲノム医療●●病院**

『がんゲノム医療提供体制におけるがんゲノム医療中核拠点病院等 一覧表』のリンク先などを更新しました。


はじめに

固形がん(血液のがん以外)の患者さん固有の遺伝子異常を網羅的に調べて、次に投与する最適な治療薬を見つける「がん遺伝子パネル検査」

・固形がんの中でも①標準治療がない患者さん、局所進行もしくは転移があって標準治療が終了または終了見込みの患者さんが保険適用の対象です。
・肺がんや乳がん、胃がんなど一部のがん種で、治療開始前に実施されている「コンパニオン検査(診断)」とは区別します。

「がん遺伝子パネル検査とは〜」という説明や、保険適用となるための他の条件などは、ネット上にたくさんありますので、ここでは触れません(記事の最後に参照先をご紹介します)。

今回はあまり語られないという意味で、マニアックな視点からの記事となります。


◆現在の通院先

がん遺伝子パネル検査は「がんゲノム医療●●病院」で受けられます。

“その他の病院”に通院されている方が検査を受けるためには、主治医と相談して紹介状をお願いすることになります。

ところで、がんを治療している病院には、がん診療連携拠点病院など「がん診療◯◯病院」という分類もあります。むしろ、こちらの方がよく耳にすると思います。主にがん専門病院や大学病院、大きい総合病院が指定を受けています。これらの病院には「がん相談支援センター」が必ず置かれており、患者さんやご家族からさまざまなお悩みやご相談を受けています。がん遺伝子パネル検査についての一般的な相談も(診断や治療以外でしたらなんでも良いようです)。

「がん診療◯◯病院」ではなくても、普通に「がん相談支援センター」があったりしますし、「相談窓口」など呼び名が違ったりもします。

そのような「がん診療◯◯病院」に通院されていていたとしても、「がんゲノム医療●●病院」ではないことがあります。

がんゲノム医療●●病院は、がん診療◯◯病院!

逆は真ならずという命題

そこで、現在の通院先が「がんゲノム医療●●病院」なのか確認することになります(記事の最後の参照先からどうぞ)。

◆がんゲノム医療●●病院

次に「がんゲノム医療●●病院」は、大きく2つに分類できます。

「がんゲノム医療(中核)拠点病院」と「がんゲノム医療連携病院」です。

①がんゲノム医療中核拠点病院
②がんゲノム医療拠点病院
③がんゲノム医療連携病院
→①と②を「がんゲノム医療(中核)拠点病院」と表記して、③「〜連携病院」と比較します。

(中核)拠点vs連携

両者の違いは“専門家会議(エキスパートパネル)の有無”です。後者の「〜連携病院」の場合、前者で実施されるエキスパートパネルの結果を受け取ってから、治療となります。

そのような流れから、「〜連携病院」では治療を開始するまでの期間が(「〜(中核)拠点病院」と比べて)2週間程度遅くなる傾向にあります。

「治療を開始するまで」と書きましたが、正確には「(患者さんが)検査結果を受け取るまで」
“検査結果ですぐに投与できる最適な治療薬が見つかった”という条件下で「治療を開始するまで」となります。

細かいですが大切なので!

「〜(中核)拠点病院」については、今年指定見直しが行われました。その際の新聞記事をご紹介します。

滋賀医科大病院(大津市)は11日、厚生労働省から「がんゲノム医療拠点病院」に指定されたと公表した。
…(中略)…
同病院はこれまで、エキスパートパネルを京都大病院に依頼していたため、検査の申し込みから結果の説明まで1・5~2カ月かかっていたが、これからは1~1・5カ月に短縮できるという。
…(略)…

朝日新聞DIGITAL(2023/7/12)より

…(略)…
同院はこれまで「連携病院」の位置づけで、2019~22年度、278人にパネル検査を実施。結果をもとに治験参加などを検討する「エキスパートパネル」(専門家会議)の実施を「中核拠点病院」の京都大病院に依頼しており、滋賀医大病院の患者は申し込みから結果の説明までに最大2か月かかっていた。

自院で検査を完結できるよう同院は18年度、体制整備に着手。県の補助金で認定遺伝カウンセラーを常勤雇用するなどし、エキスパートパネルを自院で行える体制が整い、今年4月、拠点病院となった。これにより結果説明までの期間も最大1か月短縮できるという。
…(略)…

讀賣新聞オンライン(2023/07/12)より

現在の通院先が「がんゲノム医療●●病院」ではない場合で、がん遺伝子パネル検査を受けるときには、「〜(中核)拠点病院」vs「〜連携病院」の違いも理解しておくと良いのかなと思います。

第5回 がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(資料) 令和5年12月1日より
資料1 エキスパートパネルの効率的かつ効果的な運用について[PDF形式:1.7MB](6頁)


◆まとめ

がん遺伝子パネル検査を受けられる病院は決まっているという前提知識を共有していただきつつ、後半は結果が出るまでの時間(turn-around time)という観点からの内容でした。

あまり聞き慣れない言葉だと思います。たとえば、CT検査やPET検査などは、以前より検査時間が短く、主治医や担当医からの結果発表も早くなりました。

「turn-around time」を短縮できると、治療のタイミングを逃すことなく早期に治療介入できるという医療側の視点。患者さんやご家族からは「治療を開始するまでの時間」という視点になります。


<参照先一覧>

医薬品医療機器等法等がアレなので、リンクを貼っていないものは、直接検索をお願いします。

がん遺伝子パネル検査の一般的な説明は❹病院一覧は❶❷がそれぞれ分かりやすいサイトです!

<おしえて がんゲノム医療>
中外製薬のサイト。がん遺伝子パネル検査の一般的な説明はもちろん、病院一覧(【地域別】がんゲノム医療を受けられる施設)も大変分かりやすいです。常に情報も更新されています。中外製薬は、主に利用されているがん遺伝子パネル検査「FoundationOne® CDx / Liquid CDx」を運営しています。


❷<がん情報サービス>

お馴染みのサイト。「病院一覧(全国)」から、お住まいの地域に“条件を変更する”ことで「がんゲノム医療●●病院」かどうかだけでなく、「がん診療◯◯病院」かどうかも調べることができます。…とは言うものの、通院中の方は「がんゲノム医療●●病院」かどうかで十分ですので、中外製薬のサイトが良いのかなと思います。


❸<厚生労働省>

こちらでは「〜連携病院」が、どの「(中核)拠点病院」に紐付いているか小児がんのケースも分かります。もっとも、紐付けが分かったところで、患者さんやご家族にはあまり関係ないですし、一覧表がとにかく細かくて慣れていないと見方がよく分からないかもしれません。お役所仕事だなあと実感はできますので、ご一読ください!
がんゲノム医療提供体制におけるがんゲノム医療中核拠点病院等 一覧表(2023.12.1現在)”

https://www.mhlw.go.jp/content/001168172.pdf

上記「紐付けが分かったところで、患者さんやご家族にはあまり関係ないですし、」について。

「連携」病院で検査を受ける方
は、事前に「中核拠点or拠点」病院のサイトもチェックされると、より理解が深まったり、スムーズに検査を受けることができたりするかもしれません。その点では「紐付けが分かることには、意味はあります!」

9/25訂正及び加筆
「中核拠点」の東北大学病院に紐付いている「連携」病院は、岩手医科大学附属病院、宮城県立がんセンター、秋田大学医学部附属病院、福島県立医科大学附属病院、さいたま赤十字病院となっています。つまり、都道府県やエリアなどを飛び越えて連携していることも普通にありますね。
→令和5年12月1日時点では、東北医科薬科大学病院、石巻赤十字病院の2院も「連携」病院に追加となりました。


❹<C-CAT>

がんゲノム情報管理センター(C-CAT)のサイト。がん遺伝子パネル検査の一般的な説明はもちろん、病院一覧も掲載されています。ところが、病院一覧のリンク先が上記❷❸になってしまいます。やはり病院一覧を調べるだけなら…となります。なお、こちらのサイトは国立がん研究センター運営のため、がんゲノム医療版「がん情報サービス」のような存在です。説明自体はやはり一番分かりやすいなあと感じます!

❺<がん遺伝子パネル検査のおはなし>
医療機器メーカーシスメックスのサイト。がん遺伝子パネル検査の一般的な説明はもちろん、病院一覧も掲載されています。ところが、病院一覧のリンク先が…(中略)…。なお、シスメックスは、若い患者さんや遺伝性を疑われる方で採用されているがん遺伝子パネル検査「OncoGuide™ NCCオンコパネル」の会社です。

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