消化器内視鏡検査に使用された軟性内視鏡の再処理後の微生物サーベイランス:全イタリア調査

はじめに
十二指腸内視鏡に関連したアウトブレイクが世界的に報告されています。内視鏡の再処理の不備によって発生する医療関連感染は、内視鏡の微生物サーベイランスによって抑制可能と報告されています。
今回ご紹介する論文は、十二指腸内視鏡の再処理手順の有効性を評価することを目的とした全イタリア的な横断研究です。
 
方法
2019年12月から2020年4月にかけて、イタリアの15の内視鏡センターにおける再処理後の微生物サーベイランスから得られたデータを収集しています。内視鏡からの検体採取は、再処理終了時または保管用キャビネットでの保管中に実施されました。国際的なガイドラインとイタリアのポジションペーパーに沿って、微生物は高関連微生物(HCO)と低関連微生物(LCO)に区別しました。
 
結果
51本の十二指腸内視鏡から144検体を採取し、そのうち36.81%が汚染されていました。22.92%がHCO陽性で、LCOは13.89%に認められ、微生物量は11-100CFU/デバイスが2.08%、>100CFU/デバイスが0.69%でした。汚染率は再処理後で27.5%、EN 16442:2015に準拠したキャビネットでの保管後(C-I)で40%、非準拠の保管後(NC-I)では100%汚染されていました。それぞれのHCO率は、15.00%、27.27%、66.67%でした。LCO汚染と保管時間の相関も示されました(SpearmanのRho = 0.3701; P = 0.0026)。オリンパス社製十二指腸鏡TJFQ180Vの汚染率は29.82%と最低でしたが、NC-Iキャビネットで保管したものでは100%の汚染率でした。

図1 各種十二指腸内視鏡と高関連微生物と低関連微生物の検出率。TJF Q180V、TJF 160、TJF 145はオリンパス社製の内視鏡の機種名。緑色は、手順書通りの再処理方法もしくはISOキャビネットを遵守し微生物が未検出、黄色は<10 CFUの低関連微生物の検出、薄橙色は11-100CFUの低関連微生物の検出、濃橙色は>100CFUの低関連微生物の検出、赤色は高関連微生物の検出である。


図2 高関連微生物の検出率


図3 低関連微生物の検出率

考察
微生物サーベイランスと再処理手順の厳守により、内視鏡の汚染を早期に発見し、十二指腸内視鏡関連感染のリスクを低減できる可能性が示唆されました。

感想
内視鏡の再処理および保管は適正に実施されなければ、内視鏡が微生物に汚染され、医療関連感染やアウトブレイクの原因となります。適正に実施されたかの評価は微生物の検出やATPなどが活用されています。本研究では前者を利用して評価していますが、予想できる範囲内での結果だったといえましょう。
これまでもこのような結果の論文が多々発表されています。本研究のポイントとしては、既報よりもよりバラエティに富んだ微生物種が検出されていることです。これは、従来よりも感度の高い(多種多様な微生物が発育できる)血液寒天培地の使用や、高感度な同定方法が採用されたと推測されます(同定方法については未記載)。病原性の高低はあるものの、これほど多様な微生物が内視鏡に付着している現状に注目する必要性があります。
ガイドラインやポジションペーパーなどの推奨を遵守し、安全で安心な内視鏡検査が実現できることを願ってやみません。

Microbiological surveillance post-reprocessing of flexible endoscopes used in digestive endoscopy a national study.
J Hosp Infect. 2023 Jan:131:139-147. doi: 10.1016/j.jhin.2022.09.024.


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