わらふぢなるお

Twitterで、ペンネームが話題になっている。

ある文学賞の選考において、「ペンネームを真面目につけたとは思えない」という理由で減点された、という出来事が発端だ。


下手な名前が嫌いだ。

「下手な名前」とは何か。

単なる難読名のことではない。

「居酒屋 女郎花(おみなえし)」があったとしても、「どうやったら、『おみなえし』だなんて妙ちきりんな読みになるんだ!」と怒鳴ったりはしない。

それは、私が「女郎花=おみなえし」という知識を持たないのが悪い。

己の無知と向き合うだけだ。

私が許せない「下手な名前」とは「読む側の気持ちを考えたか?」という名前だ。
長文だったり、表記が入り乱れてたり、ゴテゴテの当て字だったり。

思考のリソースを奪われることに心底腹が立つ。

「読めないなら放っておけばいいじゃん」と思われるかもしれない。
しかし、文字として認識しているのに脳内で読み上げられない、というもどかしさは、私にとって強烈なストレスなのだ。
嘲笑われているようで、その文字から阻害されているような気になる。

私が読めない名前に対して抱いているこの怒りの淵源は、命名者の意思だ

店名・商品名・芸名は誰かに呼んでもらうため、読んでもらうためのものだ。その時、読む人間のことを想定することが大前提になる。

「自分のものなのに他人の方が使うもの」なんてなぞなぞがあるが、言い得て妙だ。

特に、芸名や店名のように、覚えてもらってなんぼのものを複雑なものにする精神は理解し難い。


「わらふぢなるお」という芸人がいる。

面白い。
コントも漫才も面白い。

面白いのだが、名前が下手くそすぎる。

許していない。

芸名が最悪すぎる。

名前だけ知っていた頃は、その名前への嫌悪感でネタを見ようともしなかった。

「わらふぢなるお」

ふぢわら(藤原)さんと、口笛なるおさんのコンビだから「わらふぢなるお」

それなりにオーセンティックな命名法だが、許せない。

コンビ名を間違えられることが多く、誤表記の例として「わらふぢなる」「わらふなる」「わらぶちなるお」「わぶちなるお」などがある。

Wikipediaにもコンビ名を間違えられる旨が書かれている。

だが、私に言わせれば、わらふぢなるおの問題は誤表記ではない。

読み方の方にこそ問題がある。

ややこしくしているのは「ぢ」の存在だ。

「ぢ」があることによって、歴史的仮名遣いなのだろうかという疑念をこちらに植え付けている。

「わらふぢなるお」の読み方としては以下の選択肢があると考える。

・わらふじなるお(正解)
・笑(わら)う ジナルオ
・笑(わろ)う ジナルオ

「ぢ」が疑念を生じさせ、実際に犯行を遂げているのは「ふ」だ。

・わらふぢなるおがお笑い芸人であること
・サブリミナル的に「らふ laugh(笑う)」が含まれていること
・「笑う犬」という番組の存在
・「ヂナルオ」で区切っても「DiCaprio」のようなイタリア系の名前があり得ること

これらの事情が重なり、もはや「わらふぢなるお」を「わらふじ+なるお」に分解する方が不自然に感じられることが原因だろう。


オチがないので付け足します。


「えーあいあい」


これ、人によっては「撮ったのかよ」に読めるらしいです。

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