2024年7月の記事一覧
【小説】きっかけ 第1話
ニホンザリガニ
夜道を歩いたり、止まったりしているうちに、朝が訪れた。
石の隙間、草むらの中、どこにも娘の姿は見当たらない。後ずさりをして、沢のたもとに着くころには、朝日が草や石に輝きを与え、川の水面がキラキラと光り始めた。
タロウは深いため息をつき、巣穴に戻ることを決めた。
◇
巣穴に戻ると、タロウは疲れ切った体を横たえ、目を細めて遠くを見つめた。ウツラウツラと身じろぎ始め、目を
ニホンザリガニ
夜道を歩いたり、止まったりしているうちに、朝が訪れた。
石の隙間、草むらの中、どこにも娘の姿は見当たらない。後ずさりをして、沢のたもとに着くころには、朝日が草や石に輝きを与え、川の水面がキラキラと光り始めた。
タロウは深いため息をつき、巣穴に戻ることを決めた。
◇
巣穴に戻ると、タロウは疲れ切った体を横たえ、目を細めて遠くを見つめた。ウツラウツラと身じろぎ始め、目を