006 ダートムア

ダートムアは東京23区の1.5倍の広さ

 我が家はダートムア国立公園の中にある。国立公園の中にあるからと言って、特に住民税が高いとか、移動が制限されているということはない。ただ、家の窓枠の色を変えたり、建て増しをするためにはプランニング・パーミッション(建築許可)が必要だ。我が家の建物は約300年前にマナーハウスの納屋として建てらたもので、30年ぐらい前に住宅として売りに出された。前にも書いたが、大きな納屋を5軒に分けて売りに出し、買った人がそれぞれにインテリアを自分で決めて住めるようにした。内部はそれぞれに違うが、外から見たら、300年前の納屋のままになっている。
 
 ダートムアは英国全国にある15の国立公園の一つであり、1951年に指定されている。面積は約950㎢で、東京23区1.5倍の広さである。新石器時代から青銅器時代にかけてはここにたくさんの人が住んでおり、今でも当時の住居の跡やスタンディング・ストーンやストーンサークル等の遺跡がたくさん残されている。そんな遺跡を訪ねて回るのもダートムアの楽しみの一つになっている。
 

ヘイ・トー (Hay Tor)

 ダートムアはどこを歩いても良いことになっている。もちろん、個人の家の敷地や耕作地はだめだが、後は馬や羊とともに好きな場所に移動できる。今まではキャンピングも自由で、どこにテントを張っても良かったが、ごみを残す人や小枝を切って焚火をする人が増えたため、キャンプは指定の場所だけにしようという動きがある。夏は雨も少なく夜中まで明るくて快適だが、冬は天候が崩れやすく、気温も下がるので要注意だ。私は一度運転中に突然深い霧に覆われ、それこそ1寸先が見えない状態になり、超ノロノロ運転でムアを脱出した経験がある。冬には遭難する人も出る。
 

観光客で賑わうヘイ・トー
ハウンド・トー(Hound Tor)


 ここの特徴はトー(Tor)と呼ばれる頂上に大きな岩が突出した小さな丘がたくさんあることである。ダートムア全体が火山の噴火時に飛び散った花崗岩で主に出来ているが、永年にわたる雨や風で土が溜まり低い部分は土に覆われ草が生えたが、ちょっと小高い丘の上だけは、岩が今でも突き出しており、そこだけ岩場になっている。トーはこの丘の頂上のことであり、ダートムアだけでトーが100以上ある。各トーにはそれぞれヘイ・トー、ハウンド・トー、ブラック・トー、キングス・トーといった名前が付けられている。ダートムアでは10 Tor Raceといったようなトーを10か所駆けめぐるレースも行われている。
 

野生のダートムア・ポニーは人気者
ダートムアは広大な放牧場でもある

 ここには野生の馬がたくさんいる。ポニーと呼ばれる小型の馬で、ムアの中を自由に動き回っている。人間に慣れており夏のシーズンには駐車場に餌を求めて集まって来る。羊や牛も多い。これは農家が飼っているものだが、広大なムアに放し飼いにしてあり、どうやって管理しているのかいつも不思議に思う。ムアの所々にキャトル・グリッド(Cattle Grid) という牛や羊を通さないように道路に溝を掘って鉄棒を渡したものがあるので、これで逃げるのを抑えているものと思う。いずれにしてもムアは単に広大な荒野と言うだけでなく、大牧場でもあり、一大観光地として全国からホリデーメーカ-を集める場所でもあるわけだ。
 
 ここには蛇もいる。グラス・スネーク(Grass Snake)という無害の蛇とアダ―(Adder)という毒蛇である。どちらも50㎝から80㎝らいの大きさで、草むらや湿地帯に生息している。一度湿地帯を歩いている時に危うくアダ―を踏みそうになったことがある。蛇が逃げたので問題はなかったが、私は模様から言ってアダ―だったと思っているが、ワイフはグラス・スネークに違いないと意見が合わなかった。いずれにしても足元をよく見て歩くに越したことはない。(以下続く)

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