「ありがとう」

久しぶりの投稿なのに、少ししんみりした話しになるので申し訳ないのだけれど、以前総合病院で勤務していた事があった。主に終末期を迎えた方達がおられる病棟で勤務させて頂いていたのだが、その中でも忘れられない患者さんとの出会いがあった。ガン末期で本人様にも告知され、ご自分の病状をよく理解され、それでも取り乱す事なく精一杯明るく振る舞われていた。自分と少ししか変わらない年齢で、子供も同じ年頃だった。
心身共に大変な状態であっただろうに、その方は亡くなる最期の最期まで沢山の方に「ありがとう」を言われ、旅立たれた。本当は、声を出す事さえしんどかっただろうに。
亡くなられた翌日、わざわざその方の娘さんが病棟に挨拶に来られ、職員一人一人に「ありがとうございました。お世話になりました。」と挨拶されていた。「こちらこそ、ありがとうございました。お母さんに沢山の事を教わりました。立派なお母さんですね。」と返すと、涙を浮かべながら、精一杯の笑顔を見せてくれた。
その方は亡くなる最期まで、凛とした生き方をされて旅立たれたのだと思う。そんなお母さんを見て育った娘さんだからこそ、あんなに暖かい人柄なんだろう。
長い人生もあれば、人より短いと思われる人生もある。自分に与えられた人生をどう生きるか。そして、最期の最期まで出会った全ての方に「ありがとう」を言えるような人生を歩んでいきたいと改めて思った。

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