自衛隊装備品 第1回


89式5.56mm小銃

Twitterでアンケートとった結果89式が多かったので89式の紹介と解説をしていきます。

89式小銃が正式化されるまでについて

89式5.56mm小銃は日本の当時の防衛庁と豊和工業が"将来戦を想定した小口径小銃"として開発をスタートさせました。
当時AR-18を豊和工業がライセンス生産しており、それをベースに小銃を開発しようとしましたが、AR-18には根本的な問題があったため独自の設計をし、1978年にはHR-10が試作として完成、日本人の体格と体力に適合した操作性、3点バーストの採用、プラスチック製のストックやグリップ採用に伴う部品点数の減少など64式の反省点や新しい試みを採用し、さらに試験を続け、折りたたみ式のストックの試作も作り、1981年には防衛庁技術研究本部(現在は防衛装備庁に合併された)向けの技術研究試作銃として1982年から1983年の間に部分的な改良しつつ試験が行われました。
その後、改良点を踏まえて1984年にはHR-12の設計がスタートし1985年6月に完成、HR-12は技本研究試作銃標準型と軽量型の折衷型とも言える試作銃で、プラスチック製一体型トリガーガードや折曲銃床式を備えている。
そして1986年にはHR-12の発展版であるHR-15が完成、これは予備試作銃とも呼ばれており、限定生産後、防衛庁に納入されています。
HR-15はこれまで試作されてきた試作銃は左側にセレクターレバーがあったが、匍匐や戦闘行動で脇に抱えたりした際、セレクターが不用意に変わってしまうのを防ぐためである。
そしてHR-16がHR-15をベースに改良型として開発し、1987年に防衛庁に限定生産を開始、固定式と折りたたみ式の2種類が用意されました。
この固定式と折りたたみ式は銃床の部品に差異があるが、それ以外は共通したパーツとなっている。
HR-16は開発試作銃とも呼称され、各地の自衛隊に試験として送られ、寒冷地、砂塵、油脂残存などに対する耐久性テスト、操作性、命中精度、耐久性のテストなどを行い、良好な試験結果を踏まえ
HR-16は1989年に89式5.56mm小銃と正式名称が付けられ、新型の制式小銃として制定されました。

(補足)
この89式小銃の開発とともに弾薬も国産の89式5.56mm普通弾を開発、これは西側の5.56x45mm(SS109)に近い特性を持っているとされているため開発当初はM855に近い特性ではないかと推察されていますが、データがないため、あくまで憶測程度です。(現在は89式5.56mm普通弾(C)が主流)

89式5.56mm小銃について


89式5.56mm小銃(以後、89式小銃と呼称する)は64式7.62mm小銃の後継として調達が開始されました。
1:整備性
89式小銃は64式小銃に比べ樹脂部品の採用やプレス加工により部品手数が大幅に減少しており、整備性の向上や軽量化が図られています。
2:バイポッド
更には64式では二脚が取り外せませんでしたが、89式からは脱着が可能となっております。
二脚は塹壕(掩体壕)から安定した射撃と命中精度向上のために装着されていますが、折り畳んだ際、小銃を持ちやすくなるように突起を少なくし、支柱部分はゆるく曲がった形状になっています。
3:ハンドガード
ハンドガードには排熱用の穴が左右に六ケ所あけられており、内部には銃身とハンドカバーの間が設けられているので、銃身が過熱したときに熱が直接伝わらないようにしています。
また近年ではハンドガードを改造していたり、ハンドガードはそのままで何か取り付けたり(どこの会社まではわからない)してカスタムをしている隊員がTwitterなどのSNSにあがってきています。
4:照準器
リアサイトには射撃距離にあわせて切り替えられる転輪が左にあるのと左右のずれを調節する転輪が右側にあり、リアサイトは64式が起立式で作戦行動中や射撃時に倒れるという指摘を受け、89式では固定式になっている。
更には夜間概略照準具という夜間時に使用される照準器も開発されている。
89式にダットサイトを取り付けることも可能であり、官品のダットサイトはマウントリングを使用して固定する必要があります。
しかしながら、中にはゴリッゴリにカスタマイズしている隊員(FTCとか)もいるので、官品と私物が混ざっている状態です。
5:付属品
銃身前部には89式多用途銃剣を取り付けることができ、様々な用途に使用することができます(一説には折れやすいとかなんとか…..)
また、セレクター切り替えが右側にしかないのは不自由なため2009年のイラク派遣以降左側にもセレクター切り替えが標準装備されるようになりました。
また、2006年には06式小銃てき弾が採用されました。
6:銃床(ストック)
89式は固定式ストックと折り曲げ式ストックの二種類が存在し固定式は普通科連隊などで使用し、折り曲げ式は空挺団や戦車乗員が使用しています。
固定式のストックの特徴は左右非対称のストックとなっており、視線を銃の中心に近づけて照準することができます。
またストックの底部はゴム製になっているため消音効果や滑り止めになっています。

89式の性能と仕様

命中精度
89式の命中精度は300mにおいて
単射:高低標準偏差19cm以下
連射:6発連射で高さ、幅、それぞれ2mの範囲に収束
というのが89式の標準とされている命中精度です。
比較としてM16は300mで集弾範囲が32cm、89式が13cm、AK-47が44cmといった感じで89式の命中精度の高さがうかがえると思います。
89式の内部機構
89式はM16やAK-74と同じガス圧利用 ロングストロークピストン、ロータリーボルト式採用していますが89式は少し改良がくわえられております。
(詳しく知りたい方はWikipediaにずらぁーっと載ってますのでそちらを参照ください)
89式のピストン部分は64式と違い、工具が必要ないので整備性が向上しています。
89式のセレクター
89式はア、レ、3、タの順番になっており、左から
安全装置→連射(フルオート)→3点射(3連バースト)→単射(セミオート)の順番になっており、安全から単射までは270°回さなければいけません。(ちなみにM4は90°、AK-47はレバーの一番下がセミオート)
セレクターは上記に書いてあるとおり、右側にしかありませんが2003年のイラク復興支援以降に左にセレクター切り替えレバーが取り付けられるようになっています。
使用弾薬
89式は西側が標準使用している5.56×45弾と同じ弾薬を使用しており、当初開発されていた89式5.56mm普通弾はM855に近い特性を持っていましたが、改良を重ね、現在は弾丸及び雷管を無鉛化した89式5.56mm普通弾(C)を調達しています。
ちなみに米軍ではM995と呼ばれる徹甲弾を採用していますが、自衛隊では採用していないです。
(補足ですが令和六年度の弾火薬調達欄に5.56mm高威力弾J3という記載がありましたが、特戦群の可能性が高いため省きます)
調達価格
調達価格は20万から40万前後とされており、これは海外への輸出ができない(武器禁輸政策)海保、警察、自衛隊にしか需要がない、単年度予算による調達のため一回で大量生産が見込めないことでコスト低減ができませんでした。
配備状況
現在では89式の調達は終了し、20式の調達が始まっています。
89式の前に採用された64式は23万丁以上生産されておち、それらをすべて置き換えることはできず、陸上自衛隊の常設部隊、予備自衛官、海上自衛隊(立ち入り検査隊など)海上保安庁(SSTや特別警備隊)警察(SATなど)が配備しています。

今回、89式5.56mm小銃について書かせていただきました!!
もし、何かミスがあれば教えていただけると幸いです

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