自衛隊の離島防衛と奪還について

今回は本邦の離島防衛と占領された離島を奪還までを個人的な観点から解説していきます。

第三国による侵攻からの防衛

本邦の場合、様々な離島が存在しているため、ほとんど場合は”空挺による強襲””強襲上陸(海兵隊など)”が想定されており、本邦の装備品を見るとよくわかると思います。
では、本邦で一番ホットな場所である、南西方面に着目してみましょう。
画像はWikipediaから引用してきたものになります。

南西諸島と言えば、何を思い浮かべますか?
多くの方は宮古島や尖閣諸島、石垣島、与那国島等を思い浮かべると思います。
画像を見ていただけるとわかると思いますが、360°海に面しており、ウクライナ戦争のようないきなり戦車が先鋒として侵攻してくるという、シチュエーションはあまり想定できないと考えます。
では、そういったことを加味して、離島防衛のシチュエーションを考えてみます。
今回の想定では、弾道ミサイルは発射、迎撃後と考えます。
弾道ミサイルに関しては、PAC-3もしくは防衛出動待機命令等で出動したイージス艦などで迎撃すると考えられると思います。(出来なかった場合に備えて必ず避難するようにしましょう。)
有事が発生した場合、陸上自衛隊はその地域の担当師団、旅団が各地域に展開し、侵攻してくる他国の部隊に備えます。

では、南西諸島方面にはどんな部隊がいるのか?

担当自衛隊は西部方面隊 第15旅団(一部:西部方面隊隷下や第8師団隷下)となっており、この旅団は即応近代化旅団(離島型)と呼ばれており、地理的な要因から、特科の顔ともいえる榴弾砲や機甲戦力(主に戦車など)は配備されておらず、一番火力があるのは87RCVであり、ほかには迫撃砲がありますが、この旅団の特徴といえるのは誘導弾系統が多数配備されています。
まずは、対空火器では、03式中距離地対空誘導弾(03中SAM)11式短距離地対空誘導弾(11短SAM)PAC-3MSEが配備されており、03中SAMは改善型などが配備されているため、防空力に関しては申し分ないほどがちがちに固めております。
続いては対艦装備や上陸してきた侵攻部隊に対処する装備品です
対艦装備は12SSMであり、本州より先駆けて配備されているため、現状の南西諸島の対水上戦闘の要ともいえる存在です。
普通科連隊の対機甲戦闘のために中距離多目的誘導弾が配備されており、歩兵レベルまで掘り下げると01ATMや110mm個人携帯対戦車弾が配備されています。
では、一部抜粋して展開部隊を紹介したいと思います
沖縄本島:第51普通科連隊、第15高射特科連隊、第15ヘリコプター隊
宮古島:宮古警備隊、第302地対艦ミサイル中隊
石垣島:八重山警備隊、第303地対艦ミサイル中隊、第348高射中隊
与那国島:与那国沿岸監視隊
奄美大島:(第8師団隷下)奄美警備隊、第344高射中隊
   第301地対艦ミサイル中隊 (陸上総隊隷下)        
       第301電子戦中隊
といった形で各島嶼部に各部隊が配備されており、今現在でも来る有事に備えています。

想定される島嶼防衛について

ではここからが本題である想定される島嶼防衛についてです。
先ほど記述した部隊を考慮して、自衛戦闘を考えてみます。
(なお、今回の想定は陸海空三自衛隊だけとします)
まず、第三国に動きがあると米政府から通達が来ると想定されます、理由としては現在の人工衛星による監視は米政府がメインにおこなっているため、第三国の陸上部隊や海上部隊がそういった侵攻準備をしている場合は大規模もしくは激しく動きや状況が目まぐるしく変わるので、有事を感知するのは現在では容易になっています。
(慎重にやるにしても上陸部隊の移動などを観測されるため、隠密準備するのはかなり厳しい)
その情報を受け取った日本政府は防衛出動待機命令や関連する自衛隊法を発動し、国民の保護や退避を行い、実働部隊は各地域に展開し、来る侵攻部隊に備えて準備します。
民間船や海上自衛隊の輸送艦等を用いて島民を避難させつつ、海域の安全を確保するために海上自衛隊の護衛艦隊群が南西諸島方面に展開、対空対潜対水上に目を光らせつつ、民間船に被害が及ばないように哨戒しつつ、迎撃態勢を整えます。
一方、航空自衛隊は九州方面はF-15JやF-35(新田原基地に配備予定)F-2といった戦闘機を発進させます。
しかしながら、沖縄方面の戦闘機隊はかなり熾烈な戦いになると予想されます。
F-15Jの近代化改修済機と未改修機が存在するため、稼働できる機数が多くても性能がアップグレードできていなければ、戦力としては残念ながら数えるには少々厳しいと思います。
制空戦闘では第三国の戦爆連合(戦闘機、爆撃機の編隊)と戦闘になると想定されます。
理由としては、弾道ミサイルで破壊しきれなかった物、艦船、基地、インフラ、レーダー、SAM、SSM、歩兵部隊そういったものを破壊するには巡航ミサイルなどを使って破壊する方が効率的なので爆撃機を展開すると考えられますが、戦闘機部隊だけの可能性も考えられます。
航空自衛隊、第三国の戦闘機部隊の制空戦はBVR(視程外戦闘)から始まり、格闘戦に発展します。
BVR戦闘、これは現代の空中戦において不可避の戦闘です、F-15Jの未改修機の大半はここで脱落(辛辣ですが被撃墜)するでしょう、レーダーや電子装備が古い機体では現状の第五世代や4.5世代機の性能には到底太刀打ちできないでしょう、可能性があるとすれば、格闘戦ですがそれも勝てるかどうかのレベルの話です。
さて、話を戻すと、この制空戦闘に米空軍が介入するかどうかは不明ですが、仮に制空戦闘に勝利した場合、敵の海上部隊は侵攻を一時的に中断すると考えられます、制空権がなければ、太平洋戦争時代の旧日本海軍と同じ末路になりかねませんので。
では、最悪の想定、制空権を握られたとしましょう。
爆撃機部隊はさらに侵攻します、それを海上自衛隊のイージス艦が探知、迎撃態勢に入ります、敵部隊からすればイージス艦や海上自衛隊の存在は厄介極まりない存在です、海上作戦を展開するにしても近接航空支援をするにしても上陸作戦をするにしても、艦隊は”邪魔な存在”でしかないのです。
敵爆撃機部隊は艦隊に照準を合わせ、対艦攻撃をおこないます、それに合わせて敵の水上艦艇からもミサイルが飛来することとなります。
対空戦闘、イージス艦やあきづき型の得意分野ではありますが、限度が存在します。VLSのセルに装填されているミサイル以上の敵弾を、レーダーが対処できる敵弾を捌くことはできません、波状攻撃を受ければたちまち撃沈されていきます。
では単純に、イージス艦や護衛艦などを増やせばいいのか?
皆さんは、いずも型護衛艦を覚えていますか?そう、艦隊防空の要となる存在です。
イージス艦よりも前に展開し、ステルス性を駆使して戦闘をする、F-35Bを搭載し、場合によってはイージス艦と共同して迎撃戦闘をする可能性もあります。
では、海上自衛隊が壊滅したとしましょう、次に想定されるのは攻撃機による攻撃です。
敵攻撃機が接近してきた場合は中SAMの出番です、射程60kmを生かし、敵航空機隊を迎撃しますが、一部は迎撃しきれずにすり抜けてくるでしょう、これは仕方のないことです、敵航空機も撃たれる覚悟で接近してくるわけですから、回避機動やチャフフレアといった対抗手段を講じて接近してきます、それの迎撃に使われるのが11短SAMです。
それをすり抜けたら第15旅団には配備されておりませんが、第8師団が機動展開していれば93近SAMが待ち構えていますが、93近SAMはMANPADSとほぼ射程が変わらないので、それ以上接近された場合は施設等に被害が出ます。
敵の揚陸艦などが接近した場合、12SSMの出番です。
12SSMの捜索評定レーダーが目標を探知し、100km以上離れた場所から攻撃を開始します。
しかし、攻撃を受ければ、その場所に向けてミサイルによる攻撃や爆撃などで発射機を破壊しようとするので、発射後は速やかに陣地転換し、反撃による被害を回避します。
では、そういった攻撃を切り抜けた敵艦隊が近海に接近、揚陸艦から敵の水陸両用車が発進、展開、沿岸部に展開した陸自の偵察班がそれを発見すると、上陸を阻止するために中距離多目的誘導弾が敵の水陸両用車に対して発射、撃破し、接近を阻止しますが、もし上陸された場合は、歩兵部隊が展開しますので87RCVの出番です。
腐っても25mm機関砲搭載の車両ですので(しかもAPDS-T搭載のため、大体の装甲車なら撃破可能)歩兵からすれば脅威そのものですし、今回は想定に入れてない(入れるともっと長くなる)機動展開した16MCVなんてもっと厄介な存在になりますが、敵も黙ってはいません、艦砲射撃や近接航空支援をしてきますので、上記の対空戦闘、対艦戦闘、地上戦闘が繰り広げられます。
しかし、太平洋戦争で補給ができなかった日本軍を思い出してください。
制海権、制空権が握られている場合は、同じ末路をたどることになります。
だからこそ、現在、新たな戦力として様々な防衛装備品が調達、研究がされ、来る有事に備えて、万全の状態にしていっているのです。
今回、歩兵こと普通科部隊について記述がないのは、戦略や戦術は現地の状況によって変わってきますので、一概にこうであるとは言い切れないためです。(上記の戦闘も複数のシチュエーションが存在するけどね)

さて、今回は長々と書きましたが、ぜひ読んでいただけると幸いです。

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