彼の背中

私のヒーローは、あるときはゲームキャラクター。またあるときは小説の登場人物。
ゲームでも漫画でも、作品が違えば外見も内面も、少しずつ異なる。小説も、書き手によって描く部分は違っているから、印象も変わる。
それでも共通していちばんかっこいいと思うのは、彼の背中。後ろ姿。

彼の背中を見ると安心する。
その、真っ直ぐな背筋。
表情よりも、声よりも。
後ろ姿が、彼の存在とその強さを示している。

もちろん彼は、どんな表情も魅力的。普段の穏やかな顔も、好きな人を見かけてパッと明るくなる顔も。はにかむような表情も。時折みせる不満げな顔も。みんな。
目が合ったらそれだけで嬉しいし、話しかけてもらえたら何よりも幸せな気分になる。
360度どこから見ても素敵な彼だけれど、背中がいちばん魅力的だ。

作中の彼の見せ場はいつも、勝つためではなく、負けないための戦い。仲間の窮地を救うために、単身、敵地に乗り込んでいったり。大切な人を守るために大軍を相手に戦ったり。
「ここは私に任せて、あなたは先へ」という台詞の似合う人。でも彼は、簡単には死なない。そして味方も死なせない。
どんな逆境でも、戦い抜く。
誰かを守るために。
己の理想のために。
負けないために。

彼の背中には、彼の意志が見える。
自らの理想や夢を追い求めるという意志が。
信じるもののために剣を振るうのだという思いが。

彼が人を守るのは、愛や情からではなく、彼がすべきと信じているからに過ぎない。
根底にあるのは彼の志であって、感情のように不確かなものではなく、大層な正義や大義名分などでもない。だからこそ、彼が信じられる。

彼には志が、信じるものがある。
今の私にはまだ、彼の志すものがはっきりとは分からない。でも、彼に信じるものがあることは確かであり、彼の志は変わらないと感じられる。
なぜなら、彼自身が変わらないから。発言も、行動も。常に何かひとつの基準に則っているように見える。媚びることもなく、意地を張ることもなく。ただ己の思い、志に、忠実に、誠実に生きている。
それが、彼のあの真っ直ぐな姿勢に現れているのだと思う。だから私は、彼の背中を見て安心するのだろう。これは間違いなく彼だ、と。私の信じる彼であり、変わることのない、信じられる人だ、と。

いつも私の先、少し遠いところを真っ直ぐな姿勢で、穏やかに歩んでいく彼の後ろ姿。
日向であれ、日陰であれ、どんな道でも歩みを止めない。時々、自分の進んだ道を振り返って、ひとつ頷いて、また歩き出す。
その背に、迷いは見えない。目の前の道を、しっかりと踏みしめて先へ進んでいく。
現実の私はそんなに綺麗には生きられないけれど、颯爽と歩みを進める彼の姿が、いつも私に勇気をくれるだ。



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