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楽天グループの今後はいかに?②

先月の記事にて楽天グループ(以下楽天G)の現在置かれている状況、そして少しだけ今後の成り行きについて書いてきました。
現在は楽天G×みずほFG陣営とSBIHD×三井住友FG陣営の日本国内のフィンテック業界の覇者を決める争い。そして今後の楽天Gの目指す先はその争いに勝利し、モバイル3社の寡占状態を打破すること。時価総額を現在の1~2兆円の規模からモバイル3社の10兆円規模まで拡大すること。これが三木谷浩史氏率いる楽天Gがモバイル事業参入において目指しているゴールだと考えられます。

そこで気になるのが、既存モバイル3社の動向です。中でもKDDIは最近2024年2月にコンビニ大手ローソンをTOBすると決定し、3月にTOBを開始しました。インターネット上では、KDDIが今度は楽天GをTOBするのではないかとも言われています。

KDDIによるローソンTOBが意味するものは何でしょうか。KDDI側はローソンの店舗運営をKDDIがこれまで培ってきた通信技術を用いて、最適化することを狙ったものとしています。ですが、私は個人的には今回のTOBはリアル分野でのau経済圏の拡大を狙ったものとみています。KDDIという会社は本業の通信インフラ分野では、NTTドコモに次いで国内2位の回線獲得数を誇っていますが、あまりデジタル領域やフィンテックに強くない、これが私の見解です。
例えば、ソフトバンクはQRコード決済利用率1位のpaypay及びLINE、Yahoo!JAPANなどありとあらゆるデジタルサービスを展開し、楽天Gも本業の楽天市場や楽天トラベル、楽天ファッションといったデジタルサービスを展開しています。NTTドコモでさえ、dアニメストアや、dブックを運営し、デジタル分野での存在感を発揮できています。それに比べて、KDDIが運営するauPAYやauPAYマーケット、auPAYカードはいまいち存在感がないように思われます。
元々デジタルを祖業とするソフトバンクや楽天との違いを出すため、敢えてKDDIはリアル領域を拡充していく、KDDIによるローソンのTOBはそのような思惑が見て取れます。考えられるのは、KDDIがローソンや三菱商事、リクルートなどと共同で運営するPontaポイントを最大限利用しながら、ローソンの集客力を高めていくことです。楽天Gが、楽天モバイル契約者に対し、楽天市場での買い物に、大量の楽天ポイントの優遇還元を行うように、KDDIはauPAYやauPAYカードでのローソンにおける買い物に、Pontaポイントの高還元を行うのです。例えば、現在三井住友カードがコンビニでの買い物で行っている5~7%の還元を超える10%規模の還元を、auPAYやauPAYカードでのローソンにおける買い物に行うということです。そうすれば、auPAYカードの利用者数も増え、ローソンでの買い物者数も増えるという大きなシナジーを生むことができると、KDDIの経営陣は考えているのではないでしょうか。
これはローソンに限った話ではなく、KDDIはその潤沢な剰余資金を使って、Pontaポイントを利用できるゲオホールディングスや出光興産などの企業にも同じような目論見でTOBを仕掛けるというのは十分にあり得ると考えられます。そうして、リアル分野でのau経済圏の拡大を狙っているのではないでしょうか。
このことから、私は当面KDDIはPontaポイントにまだ希望を持ち、リアル分野でのau経済圏の拡大戦略に邁進するため、楽天Gを即座にTOBするというのはあり得ないと考えます。

ですが、この戦略で思うようにKDDIの収益が伸びなかった場合、最後のカードとしてKDDIによる楽天GのTOBはあり得るでしょう。KDDIとしても国内の通信事業のみを継続しても、少子高齢化により収益は伸び悩むという危機感があるため、他分野への積極参入を行っているわけです。その参入が現在はリアル分野に向いていますが、これがうまくいかない場合は第4のキャリアとして楽天Gが国内全回線の25%を獲得し、KDDIの真の競合企業となる前に、楽天GをTOBする。これがKDDIの戦略でしょう。KDDIにとっては自社の弱みのデジタル領域を、楽天Gにとっては、逆に弱みの通信領域を補完しあうWin‐WinのTOBです。

楽天G×みずほFG陣営とSBIHD×三井住友FG陣営の争いの次は、KDDIと楽天Gの争い。正直どうなるのかは全く予想がつきませんが、非常に目が離せない展開です。
ただ、KDDIが楽天GをTOBすることは全く突拍子もない話ではありません。日本の約3倍の人口を誇り、約26倍の面積を持つアメリカ合衆国ですら通信キャリアは3社しかありません。元々はアメリカも4つの通信キャリアを持っていましたが、2020年に4位のスプリントと3位のTモバイルUSが合併し、アメリカの通信キャリアは3社になりました。日本よりも大量の人口と広大な敷地面積を持つアメリカでさえ、通信キャリアは3社なのに、日本に通信キャリアは4社も必要なのでしょうか?ここは大いに考えるべき問題です。

そこで、ここからは私自身の楽天Gのモバイル事業参入に対する感想を述べ、このnoteを終わりたいと思います。
楽天Gは、「日本の通信料金は既存モバイル3社に寡占され、高止まりしている。これはおかしい。」という名目でモバイル事業に参入しました。ですが、日本のモバイル事業にはMVNOという制度が昔からあります。MVNOは通信キャリアから回線を借り、サービスを提供する事業者のことです。既存モバイル3社と直接契約するよりも通信料金は非常に安く、私も楽天Gがモバイル事業に参入する前から、MVNOを使用していました。その立場から言わせてもらうならば、日本の通信料金が高いのは既存モバイル3社のせいだけではなく、MVNOという制度を知ろうともせず、毎月かかる固定費である通信料金の高さに何の疑問も抱かなかった日本国民にも責任があるのではないかと考えます。MVNOという制度が選択肢として存在しないのであれば、話は別ですが、選択肢として存在する以上、通信料金が高いのであれば、MVNOと契約すればいいだけの話です。そのため、楽天Gが日本の通信料金を下げてくれた正義のヒーローのような見方には違和感を覚えます。
また、モバイル事業は兆円単位の投資が必要となり、楽天Gが日本国内の全回線の25%のシェアを取るには、5~10年単位の時間が必要となるでしょう。その時間、世の中はAIやEV、宇宙開発、メタバースといった次世代の技術革新が次々と進んでいくでしょう。この全ての技術革新を捨て、モバイル事業に一点集中することは果たして得策なのか。それは時間が教えてくれると思いますが、もしモバイル事業に投資した資金と時間を他の事業に回していたらというシミュレーションは行うべきでしょう。そのシミュレーションの結果、モバイル事業で楽天Gが国内全回線の25%のシェアを取れていたとしても、他の事業に投資した方が楽天Gの得られるリターンが大きければ、モバイル事業への投資は成功とはいえないのではないかと思います。

というわけで、私は楽天Gのモバイル事業の参入を否定的にとらえていることを示し、全2部作の楽天noteを終わりたいと思います笑。



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