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楽天グループの今後はいかに?①

現在日本の経済界の中で最も注目を集めている企業とはどこでしょうか?
それは、私個人の見解では楽天グループ(以下 楽天G)だと考えています。
楽天Gといえば、Eコマースや金融など生活に密着したありとあらゆるサービスをインターネットを通して提供している日本の企業ですね。

その楽天Gが2020年からNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと並んで第4のキャリアとして通信事業に本格参入。その結果、2023年12月期の決算で、5年連続の最終赤字となっています。その赤字額もすさまじいもので、数千億単位。楽天Gは、挑戦することを忘れた日本企業の中で、唯一挑戦を行う日本経済界の救世主なのか、それとも無謀な賭けに挑んでいるただの蛮勇の戦士なのか。世論もこれに関しては、真っ二つに意見が割れているように思います。

そこで、今回のnoteでは、この楽天Gの今後について私なりの見解を述べたいと思います。

そもそも、楽天Gは色々な事業を幅広く展開しすぎていて、どこと戦っているのかが見えにくくなっているような気がします。
Eコマースを展開しているから、Amazonやメルカリと競っているのか、それとも金融事業を展開しているから、メガバンク3社や他の証券会社と競っているのか。はたまた、モバイル事業を行っているから、先述のNTTドコモやKDDI、ソフトバンクと競っているのか。色々なライバルがいて、訳が分からなくなっているように思えます。
ここで、1つの尺度を提示したいと思います。それは、時価総額です。
(※以下の時価総額は記事執筆時点の3月15日のYahoo!JAPANファイナンスから引っ張っています。)
楽天Gの時価総額は、約1.6兆円です。
GAFAMの一角であるAmazonの時価総額は約1.8兆ドル。楽天GとAmazonでは比べるべくもありません。
メルカリの時価総額は、約3000億円ほど。こちらは、楽天Gのほうが圧倒的に上回っています。
メガバンク3社や、既存のモバイル3社の時価総額は、それぞれ10兆円ほどです。みずほフィナンシャルグループ(以下 みずほFG)がその6社の中で最も低く、約7兆円ほどでした。最低でも7兆円のため、メガバンク3社・既存モバイル3社がそれぞれ楽天Gを大きく上回っています。
Amazonもメルカリもメガバンク3社も既存モバイル3社も、時価総額では楽天Gの適当なライバルではないと言えます。

では、どこが楽天の適当なライバルなのか??唯一適当と言える企業を見つけました。それは、SBIホールディングス(以下 SBIHD)です。SBIHDの時価総額は、約1兆円。楽天のほうが上回っていますが、これまでの比較対象より非常に近いと言えます。SBIHDは、楽天と同様、証券、銀行、保険といった金融事業とインターネットを組み合わせたいわゆるフィンテック事業を中心に行う企業です。2024年から始まった新NISAの口座数の1位2位を、このSBIHDと楽天Gの2社が競い合っていることからも、実感としてライバル関係にふさわしいのではないでしょうか。

さらに言えば、SBIHDと楽天Gそれぞれの創業者である北尾吉孝氏と、三木谷浩史氏の経歴も非常に似通っています。北尾吉孝氏は、慶応義塾大学卒業後、野村證券に入社し、野村證券在籍中にソフトバンクの孫正義氏と出会い、ソフトバンクに移り、ソフトバンク在籍時に現在のSBIHDの前身となるソフトバンクインベストメントの社長となり、SBIHDの独立へとつながりました。一方、三木谷浩史氏は、一橋大学卒業後、日本興業銀行(現在のみずほ銀行)に入社し、数年間勤務したのち、現在の楽天Gを創業しました。要するに、この両氏は、国内の一流大学を卒業したのち、新卒で金融の世界に飛び込み、ちょうどその当時インターネットの爆発的な普及とその有用性を実体験し、金融×インターネットに自分の可能性を賭けたという経歴の共通点を持っているのです。その2人が賭けた可能性が、現在日本で1,2を争うフィンテック事業の雄である2社になったのです。SBIHDは、フィンテック事業の他に、バイオや半導体へ、楽天Gは、Eコマースやモバイルへ事業を他に展開している、そう見ることができるのではないでしょうか。(ちなみに調べてみると、両氏ともに兵庫県出身という怖いくらいの一致が見られます。)

では、そのSBIHDがどのような事業戦略を取っているのか。私自身SBI証券でつみたてNISAをしており、住信SBIネット銀行に口座を持っているSBIユーザーの1人なのですが、その感覚としてSBIHDはがっちりと三井住友フィナンシャルグループ(以下 三井住友FG)と手を組んでいます。SBI証券のホームページを見ても、クレカ積立投資を行う際は、三井住友カードでの投資を勧めています。また、住信SBIネット銀行というSBIHDの中核銀行は、SBIHDと、三井住友信託銀行がそれぞれ約3割ずつ株式を保有し運営しています。

このように楽天GのライバルともいえるSBIHDは、メガバンク3社の一角である三井住友FG側とがっちりと手を組んでいるのです。であれば、楽天G側も単体で戦うのではなく、他社と組んでオープンな状態で戦う方がライバルを倒せる確率が高いでしょう。特にモバイル事業という兆円単位ともいえる投資を行うには、いくら楽天Gが財務基盤が整った優良企業といえど資金的に厳しいのは仕方のない話です。例えば、モバイル事業の競合であるKDDIの前身であるDDI第二電電の創業は、京セラの稲盛和夫氏が主導的に行ったものの、ソニーやウシオ電機、セコム、三菱商事といった名だたる企業群の出資があったがゆえにできたものでした。また、孫正義氏率いるソフトバンクグループがモバイル事業に参入したのも、既にモバイルインフラを持つボーダフォンの買収によって出来たものでした。要するに、楽天Gがモバイル事業をやり切るためには、他社のサポートなくして難しいのです。

では、楽天のパートナーはどこになるのか。それは、SBIHDが三井住友陣営と組むのであれば、楽天はみずほFGになるでしょう。2024年3月15日現在でも、楽天G傘下の楽天証券の5割弱の株式をみずほ証券が保有しています。今後のモバイル事業への投資額次第では、楽天証券にとどまらず、楽天銀行や楽天モバイル、楽天カードなど他の事業への出資額が増えていくことになるでしょう。みずほFG側としても、度重なるシステム障害によって失墜した信頼を取り戻し、三井住友FGを抜きメガバンク2位の座を確保するために、楽天Gを成長のエンジンとして利用したいはずです。楽天Gにとっては、資金繰りを助けてくれるパートナーとして、みずほFGにとっては、成長のエンジンとして手を組む。楽天GとみずほFGの関係はお互いにとってWin-Winの関係といえます。楽天モバイルが携帯キャリア国内シェア25%を達成するまで、みずほFGは楽天Gの資金繰りを支え続けるでしょう。

ここでフィンテック業界の2つの陣営 楽天G×みずほFG SBIHD×三井住友FGの熾烈な戦いが繰り広げられるのです。三木谷氏としては、まずはこの戦いに完全勝利し、モバイル事業を軌道に乗せ、楽天Gの時価総額を現在の1~2兆円の水準からモバイル3社の10兆円レベルの時価総額に持っていくことが目標だと思われます。

ですが、モバイル競合のNTTドコモや、KDDI、ソフトバンクはこの状況を手をこまねいてみているのでしょうか。KDDIは最近2024年2月にコンビニ大手ローソンをTOBすると決定したことで話題となり、インターネット上では、今度は楽天GのTOBに踏み切るのではないかとも噂されています。 次のnoteでは、このKDDIの動きを踏まえながら、楽天Gの今後をさらに深堀りしていきたいと思います。




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