イカサマ賭博の自民党総裁選と、アメリカ大統領選の矛盾
日本は法治国家です。日々の生活を営む上で規範となるルール、即ち法律に守られた社会です。その法律は、立法府である国会において、衆議院議員と参議院議員が提案・審議します。法案を可決するのに必要充分な議席数を持つのが、与党である自由民主党です。
国会議員によって首班指名される内閣総理大臣も、衆参ともに過半数の議席(2024年8月現在)を持つ自民党に主導権があります。必然的に自民党の総裁、つまり一政党のトップが総理大臣になる構図なのです。
もちろん議員は、選挙によって有権者が選び、国政を付託されています。長いあいだ、ほぼ一党独裁で自民党が政権運営してきたのも、国民の総意ではないとしても、民主的手続きによる自分たちの選択の結果だと、納得しなければいけないのです。
でもなんだかなぁ……なのです。自民党の裏金問題に端を発し、抜け穴だらけの改正政治資金規制法の成立、「身をひくことでけじめをつける」と総裁選不出馬を表明した岸田首相、後がまを狙う無定見にしか見えない候補者の乱立。同時期に行われる立憲民主党代表選にも、オールドパワーたちが名乗りをあげ、次期衆院選に向けて喧しい状況です。メディアから伝わる国民不在の〝政治ショー〟に呆れ返る人も多いと思います。
総理大臣の選出は、私たちひとり一人が投票する直接選挙ではなく、アメリカ大統領選と同じように間接選挙です。バイデン現大統領が2期目の出馬を断念し、副大統領のカマラ・ハリスが民主党代表候補に指名されました。共和党のトランプとの対決に、こちらも報道が過熱しています。有権者の代表である選挙人の数で決まる大統領選。評論家の大宅壮一は、自民党総裁選を〝デンスケ賭博〟(不正賭博)と断じました。アメリカ大統領選の矛盾にも触れており、今回3度目になる大宅の記事を紹介します。
これはいまから56年前の昭和43年(1968年)、『サンデー毎日』に連載されたコラムのひとつです。大宅壮一は同時代の政治家たちを痛烈に批評しました。名宰相と謳われた吉田茂でさえ容赦しませんでした。鳩山一郎、池田勇人、佐藤栄作……戦後日本の舵取りをした首相が、その座を得るため暗闘を繰り広げた自民党総裁選を、〝イカサマ博打〟〝いんちき賭博〟〝まやかしの民主主義〟と一刀両断したのです。