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黒い母が出て行った

1997年3月31日(月)
母(怒りの悪鬼のような黒い姿)が行ってしばらく経ったので、下へおりることにした。
暗い。重い。沈んだ。空気の流れがない部屋。ごっちゃごちゃ。滅茶苦茶。汚ない。恐怖の残骸。
嫌だ。
照明の黄色い光。救いの色。太陽の代わり。
おわんがひとつ。ごった煮が、いま盛りつけられたというように白い湯気をさかんに立てている。
母さんがわたしの朝ごはんをつくってくれたんだろうか?
母さんがが行って、ずいぶん経ったのにこの湯気!

台所。
部屋と同じ。ごっちゃごちゃ。めっちゃくちゃ。
暗い。
食べものと関係ある分、こっちのほうが不快が強い。
ごった煮の鍋(囲炉裏の自在鍵に掛ける半円の手がついた、銀色の丸底鍋)から白い湯気。
外が赤で内が黒のフライパンにはおいしそうな白いごはん。ごはんは冷えているけど、白く輝いて実ににおいしそうだ。
しかし、こんなごちゃごちゃの汚ないところで食べる気が起こらない。
なんの覆いもなくごはんがむき出しなのは嫌なことだ。
フライパンの蓋によさそうな鍋があったから逆さにして蓋にした、ところが、どういうことだろう、鍋は逆さになっていなかった。裏側にごはんがついて、ごはんがずれるのが手に伝わった。フライパンの中でごはんが半分水に浸されているではないか。
嫌になった。異様で不快。
鍋の裏にごはんの白い跡。

出生時と関係ある?

⚀分別して洗濯
物干し場に来た。雲が暗いけど、もうすぐ明るくなる予感が隠しきれない空。
洗濯機に、きのう母のタオルと一緒に洗ってしまった自分のタオルをどしどし入れた。
ほかに忘れたのないか?
あった。
わたしのタオルこんなにたくさんあったの?
母のブラがふたつも混ざっていた。ピンクと黄色。きれいな色。
でも、わたしのタオルとは一緒に洗いません。

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