少し後ろのちょっとだけ高いところから
2023年12月19日(火)
十代のころ好きだった、そのあと嫌いになった人が夢に出てきた。
その人はパン屋さんになって出てきた。大きな店を張っていた。お客がいっぱいいた。
多才だが、こんな才能もあったのかと思った。
大きなパイが目を引いた。いい焦げ色だった。わたしはりんごパイが好きだ。
とりの丸焼きも並んでいた。
あのパイはなんのパイかな、おいしそうだな、と思ったが、わさわさいる人たちに紛れて遠巻きに見ていた。
やがて閉店の時間、彼の人が、面白くもなんともない、むしろ不快だ、生きてることにうんざりだ、という顔で黙々と店じまいをはじめた。大きなパイの円は8分の6くらい残っていたろうか。賑わっていたけど、あまり売れていなかった?
「○○○さん! あのパイはりんごですか?」
よくもあんな顔の人に声をかけたものだ。りんごパイなら食べたい、買うなら最後の機会だという食い意地が原動力。
「りんご?」
こちらを見もしないけど、片付けの手を止めないけど、返事はあった。
「菜っ葉だ」
「菜っ葉? ほうれん草ですか?」
返事はなかった。
なんだ、りんごじゃないのか。ほうれん草のキッシュかな、なんて思っていると、作業を終えた人がずんずんどこかへ。思わず追った。店のすぐ左手、玄関を開け放ったしもた屋に入って二階へ。ほどなく現れた背中にリュック。わたしに一瞥もなく去っていった。ずっとあの顔。一秒でも早くこんなクソな人生終われ、って言ってるような顔。
その背中を、なんだかぼんやり残念な思い──おいしいりんごパイが食べられなかった、期待が外れた──そんな思いでわたしは見送っていたのだったが、はて? なんで嫌いな人のパイが食べたいんだろう?と思った。
その不思議がっているわたしを、少し離れた少し上の方から見ていたのもわたし。
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