エンジンはかけたまま
1997年5月4日(日)
夜。エンジンはかけたまま停止した銀色のバイクに乗っていた。オートバイにわたし乗れるのか、知らなかった、という驚きを遠くで感じた。
暴走族ではない集団走行グループ。その最後尾にわたしはいた。
エンジン音が辺りを満たしていた。気が逸ってわたしは空ぶかししてしまい、うるさすぎて恐縮した。
走った、と思ったら止まっていた。先頭は橋を渡りきった東側、左岸で止まっていて、わたしの位置からよく見えた。
長い間動かなかった。エンジンはかけたまま。いつ走り出すかわからないから。灯りは前方を照すバイクのライトだけ。橋のほうは白い光がきれいだった。
バイクの連なりをぴょんぴょんかいくぐって走ってくる男の子、今風の子だ。彼は「・・・が三十路を迎えましたあ!」と触れて走っていた。先頭の人が誕生日を迎えたらしい。
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