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自分の望みを率直に話さない三人組

1997年10月30日(木)
わたしは「三人の異様な関係」の中に組みこまれた一人だった。

わたしは、起きた。
左に、オレンジ系の服と深緑と茶の服が一着ずつあった。
深緑をわたしは選んだ。

「鬱血した黒」の母と娘が起きた。
すでにわたしが深緑を選んだので、娘はオレンジだ。

「鬱血した黒」の母が「この色(深緑)は、背の高い人のほうが似合うのに」と不快を滲ませた。

背の高さが普通のわたしは服に施されている絹糸の刺繍を見ながら聞いていた。絹糸に触れてみたかった。紋様は絵文字のようだった。
「鬱血した黒」の母の物言いは率直さを欠き、おもしろくなかった。
わたしは深緑を選んだんだ。

娘は、「鬱血した黒」の母のこうした物言いがどんなに人を不快にするかわかっていて、でも、「鬱血した黒」の母と離れることができないでいた。
娘は、「鬱血した黒」の母の様子に注意を払いつつ、わたしにも気を遣って板挟み。

困ったような笑みのままの娘も深緑を選びたいのだと、観察していてわかった。
わたしにはオレンジのほうが似合うのかもしれないけど──複雑な気持ちになった。
「わたしは深緑がいいんですけど、オレンジのほうが似合うのかもしれません・・・」
娘が、自分で何を選ぶのかと思って、そう言った。

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