殴るだけが暴力じゃない/死んだ

1997年12月23日(火)
黒紋付の若い夫はいつも妻を脅かしていた。
なぜかというと、自分の弱さに怯える腰抜けだからだ。自分が見たくないものを妻になすりつけて生きるズルを身につけた。妻を蔑んだり、恥をかかせたり、裏切って、妻が平静でいられないようにして、存在を否定し自尊感情を削っていった。

わたしのところに避難していた妻を男は見つけ出し、突然、人のうちに押し入ってきた。
男はにやっと笑って、「一緒にごはん食べよう」と、ことばだけは人間らしいことを言った。
彼女は、もう騙されなかった。



男の母は死にかけていた。

森。葬送の車。
車から男が飛び出して笑った。
奇怪なほどの狂態で喜んでいた。





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