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赤いコート

1997年10月26日(日)
店で、少し肌寒いことに気づいた。そういえばさっき、暑くてコートを脱いだのだった。
コートがない。どこ? どこに置いちゃったの?

赤いコートを幾つか見たけど、わたしのものはなかった。置いたところを思い出すこともできなかった。
どこかへ置き忘れるなんて、有り得ないことだった。

コートは見つからなかった。
よかった、ほっとした。
わたしは寒さに凍えてはいし、そもそもあの赤いコートは、わたしのコートではないのだもの。

でも、困ったふり、悲しいふりをしないとお母さんに悪いような気もした。そのように見せることがそのまま、お母さんの味方よ!という証明。


もうわたしは、お母さんを被なくていいんだ。

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