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365日のわたしたち。

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365日。 自分にとってなんでもない1日も、 誰かにとっては、特別な1日だったりする。 反対に、 自分にとって特別な1日は、 誰かにとってどうでもいい1日だったりする。 い…
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#春

【365日のわたしたち。】 2022年4月1日(金)

「まだ花飾りつけてない人、こっちも空いてますよ〜!」 そう言って声を張ると、数人の新入生がゾロゾロと私の担当の列に並び始めた。 「ご入学おめでとうございます」 「ありがとうございまぁす」 お祝いの言葉をかけながら、彼らの胸ポケットに安全ピンで花飾りを留めていく。 彼らの校章や名札はピカピカで、今から新しい学校生活が始まるんだな、ということを全身で主張している。 着慣れていない制服はシワもテカリもなく、それがより一層、彼らにフレッシュさな印象を与えているのだろう。

【365日のわたしたち。】 2022年3月21日(月)

「ファックション!」 隣の席の人のくしゃみが、教室中に鳴り響いた。 「...すみません」 隣の人は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で謝り、持参の箱ティッシュから数枚ティッシュを引っ張り出し、マスクを少しずらして鼻をかみ始めた。 その姿を横目で見ながら、大変そうだな、と同情する。 私は花粉症ではないから、彼の苦しみはまったく想像がつかないけれど、こんな風に授業中に悪目立ちするのだけはごめんだなぁ。 そう頭の片隅で考えながら、板書をノートに書き移していると、消しゴムに

【365日のわたしたち。】 2022年3月20日(日)

三連休の中日の日曜日は、控えめに言っても最高だ。  平日に溜めに溜めた洗濯物を洗濯する。 ピー、ピー、という洗濯機の呼び声を聞きつけ、洗濯物を引っ張り出したら、ベランダに向かう。 カラカラと音を立てて網戸を開けると、そこには春先の眩しい日曜日の世界が広がっていた。 まだ風は少し冷たいけれど、日差しが地面を照りつけているのが確認できる。 手に抱えた洗濯物が風に吹かれているのを感じて、今日はとても気持ちよく乾きそうな予感がする。 一枚一枚洗濯物を物干し竿にかけていく途