マガジンのカバー画像

365日のわたしたち。

100
365日。 自分にとってなんでもない1日も、 誰かにとっては、特別な1日だったりする。 反対に、 自分にとって特別な1日は、 誰かにとってどうでもいい1日だったりする。 い…
運営しているクリエイター

#仕事

【365日のわたしたち。】 2022年5月25日( 水)

涙の数だけ、強くなれるよ 隣の40代くらいの男性が口ずさんだそのメロディーは、今一番私がほしいと思っていたフレーズを頭に届けてくれた。 今から新幹線に乗って、地元の田舎から大阪へ戻る。 数日前に父から電話があり、母が倒れたことを知った。 急いで地元に帰ったけれど、もうすでに遅かった。 母とは、記憶に残すべき最後の会話というものを交わすことができなかった。 1日思い切り泣いた後は、葬式だお墓だと泣く間もないほど忙しく、バタバタしていた。 時々、目に滲んだ涙がこぼれ

【365日のわたしたち。】 2022年5月20日(金)

さっきから、何もしていない。 パソコンを開いて、温かい飲み物を横に置き、準備は万端なはずなのに。 頭に何も浮かんでこないのだ。 物書きをしていると、時々このようなことが起こる。 いつもは、パソコンの前に座った瞬間、頭の中で登場人物が勝手に動き出す。 俺はその人物の行動をなぞって文章に落とし込んでいく。 俺の仕事は、そういう仕事。 しかし、今日は全く何も起こらない。 頭の中の登場人物が動かないのではない。 頭の中に登場人物さえも浮かばないのだ。 何も生み出さ

【365日のわたしたち。】 2022年4月11日(月)

真夏のような暑さだった。 いや、真夏はもっと暑いのか。 もう一年前の感覚のことなど、覚えてはいない。 でも、日差しは春のわりには厳しい。朝のニュースの気象予報士さんも同じように言っていたので間違いないだろう。 こんななかを外回りを行かないといけないなんて、営業とはなんと悲しい仕事なのか、と心の中で嘆く。 一方で、何かと外に出る理由を作れる営業は、自分で逃げる場所とタイミングを作れる救いのある仕事だな、とも思っている。 果たして、汗だくで後ろに付いて来ている新入社員

【365日のわたしたち。】 2022年4月7日(木)

明日、金曜日は、推しのアイドルの新曲MVがYouTubeで公開される。 今日はまだ木曜日だけど、今からもうワクワクして、心が軽く感じる。 推しと出会ったのは3年ほど前。 友人に「オススメだよ」といって紹介されたそのアイドルグループに、私は彼女以上にハマってしまった。 韓流ってなんだよ...とか少し前の私は鼻で笑っていたけれど、今、誰かに同じように笑われたとしたら、 「人の好きなものを馬鹿にすんじゃねぇ!」 と食ってかかってしまうだろう。 歌や音楽性が気に入ったの

【365日のわたしたち。】 2022年3月30日(水)

主人はいつも通り、ダイニングテーブルの定位置に座り、ズズッとコーヒーを啜った。 彼が定年退職を迎えてから、もうそろそろ一年を迎える。 彼が定年退職を迎える直前は、主人がずっと家にいるということで生まれる変化にビクビクした。 居心地が悪くなったらどうしよう。 もしかしたら、会話がほとんどないかも。 仕事を辞めると、男の人はボケるのが早いと聞くけど...。 長い間お疲れ様という気持ちももちろんある一方で、色々な不安が頭をよぎったのも事実だった。 しかし、そんな心配も

【365日のわたしたち。】 2022年3月29日(火)

「あーーーーーー、疲れたぁ!眠い、眠いけど気持ち悪い!」 そう言って同居人が玄関に倒れ込んできた。 「おかえりー。水飲む?」 「飲むぅ。」 そう返事はしながらも、今にも寝そうだ。 4年前に上京してきた俺は、ここ東京でホストとして働き始め、この部屋に数人の新米ホストと共同生活をしている。 ホストというと、なんだか闇深いイメージを持たれることも多いし、順位争いやいじめ、女に貢がせる、といった黒い印象を持つ人も多いと思う。 順位争いはまぁ仕事なのでもちろんある。 でも