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365日のわたしたち。

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365日。 自分にとってなんでもない1日も、 誰かにとっては、特別な1日だったりする。 反対に、 自分にとって特別な1日は、 誰かにとってどうでもいい1日だったりする。 い…
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#旅立ち

【365日のわたしたち。】 2022年4月10日(日)

「どこに行ったらいいかな?世界は遠くて、広すぎて」 そう送ってきた彼女のLINEの文章からは、彼女の中に渦巻く途方もない虚しさが滲み出ていた。 彼女は一年の離婚調停を終えて、先日離婚が成立したばかりだった。 何度も会って話を聞いてあげたり、アドバイス(離婚していない身分でおこがましい)をしたわけでもないが、 彼女とは定期的にLINEで連絡を取り合って、お互いの状況を共有し合っていた。 離婚理由は、旦那さんの不倫とモラハラだったようだ。 不倫が始まってから、急激に態

【365日のわたしたち。】 2022年3月31日(木)

今年の3月31日は雨が降っている。 去年はとても晴れやかな1日だったな、とふと思い出す。 私は、隣の席でデスクの中を整理する先輩のガタガタという音を左耳で聴きながら、必死で仕事をしているふりをしていた。 海外転勤の決まった先輩は、来週出国するとのことで、最終出社日の今日、自分のデスクを片付けに来たらしい。 「デスクの片付けが終わり次第、また家に戻って荷造りをするので、これが出国前最後の挨拶になると思います。でもまぁ、またテレビ会議とかでお会いすると思うので、引き続きよ

【365日のわたしたち。】 2022年3月29日(火)

「あーーーーーー、疲れたぁ!眠い、眠いけど気持ち悪い!」 そう言って同居人が玄関に倒れ込んできた。 「おかえりー。水飲む?」 「飲むぅ。」 そう返事はしながらも、今にも寝そうだ。 4年前に上京してきた俺は、ここ東京でホストとして働き始め、この部屋に数人の新米ホストと共同生活をしている。 ホストというと、なんだか闇深いイメージを持たれることも多いし、順位争いやいじめ、女に貢がせる、といった黒い印象を持つ人も多いと思う。 順位争いはまぁ仕事なのでもちろんある。 でも

【365日のわたしたち。】 2022年3月28日(月)

「明後日には出発だねぇ」 彼の手をブンブンと振り回しながら私は話しかけた。 「そうだね、受験終わってから、あっという間だったな」 そう返す彼の手は、私にされるがままに振り回されていた。 このまま彼の手を持って帰りたい。 なんて、恐ろしい願望が頭を掠める。 昨日から春らしい陽気となり、近所の公園の桜も一気に花を咲かせていた。 今日はそれを彼と二人で見にきたのだ。 これを最後に数ヶ月は会えないかもしれない。 「またこの桜を二人で見れるかなぁ」 「そうねぇ。まぁ、